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映画評論家の・町山智浩が語る、米映画界における表現と規制

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ローリングストーン日本版 2016年6月号 小特集 表現を規制するのは誰か(映画編) 町山智浩[映画評論家]

ローリングストーン日本版 2016年6月号小特集
表現を規制するのは誰か(映画編)

町山智浩[映画評論家]

時代とともに移り変わる表現への規制。
映画大国アメリカでは、どのような変化があるのだろうか。
現在、バークレーに在住する映画評論家・町山智浩に、具体例を挙げながら解説してもらった。

―WHOの喫煙シーンをレイティングの対象にするべきだという勧告について、アメリカ映画界の反応を教えてください。

ハリウッドは何の反応もしていないですね。アメリカの職場やレストランは完全に禁煙で、喫煙する場所自体がないので、日常描写の中に喫煙シーンがないんです。だから今回の勧告はアメリカ映画には影響がないと思います。マリファナを吸っている人も多いですし、もっとすごい薬物があるのにどうして煙草が問題になるんだ? というわけです。

―確かに。今回、規制の枠組みとして挙がったレイティングについては、アメリカではどんな認知をされているんですか?

レイティングに関しては非常に恣意性が高くて、具体的な規定が存在しないため、よく論争になっています。クエンティン・タランティーノは"タランティーノ作品は規制が厳しいのに、スピルバーグ作品は頭がもげようが内臓が出ようが、規制がかかりにくい"と言っていますね。確かに、例えば『タイタニック』は船が沈み、何百人も亡くなる残虐性が高い映画なのに、PGー13(13歳未満の鑑賞には、保護者の強い同意が必要)でした。本来ならあれだけ人が死ぬ直接描写があるのだからR(17歳未満の観賞は保護者の同伴が必要)指定だと思うんですが、ビッグバジェットの作品はレイティングが甘いんですね。規定がはっきりしていないから、大会社に対しては甘く、インディペンデント系にはキツイという状況があります。そもそもインディペンデント系の会社はMPAA(アメリカのレイティング審査を行う自主機関)にはあまり出資していませんし。
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―アメリカにおけるレイティングは金しだいだと?

そういう批判も多いです。また、そもそもレイティング自体があまり意味のないものになっています。製作費が150億円以上の映画を作った場合、中国市場で当たらないと絶対にペイしないので、中国の厳しいレイティングを潜り抜けないといけない。その際はアメリカのレイティングは無意味ですから。

―表現の自由というよりも、完全にビジネス、マーケットベースでの規制問題ですね。

今後は中国と、この先大きくなるであろうインドマーケットが表現の規制に関して影響力を持つでしょう。ハリウッドでは現在コメディ映画はほとんど作られなくなっているんです。コメディは文化ごとに笑いのツボが違うので、中国ではビジネスにならないからです。バイオレンスや過激な性的描写が減ってきているのも、マーケットによるものです。実際、『ワールド・ウォーZ』(2013年)はプロデューサーも務めていたブラッド・ピットが、クライマックスを全て変えて、バイオレンスをゼロにしてかなりの利益をあげました。

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―マーケット原理とは別のところでの規制はありますか? 例えば、ISISの問題や、民族や宗教を巡っての規制など。


それはまだわからないですね。今、問題になっているのは、興業が地方毎に全然違うことで起きている上映問題です。例えばモルモン系が強いユタ州だと『ブロークバック・マウンテン』(2005年)のようなゲイの映画はほとんど公開されなかった。


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