妻が夫にキレるわけ ~“2800人の声”が語る現代夫婦考~
キレる妻が急増! なぜ夫婦はすれ違う?
首都圏の大手企業で働く、田中浩さんです。
田中さんには週に一度、憂うつな日がやってきます。
定時に退社できる、ノー残業デー。
でも、このまま家に帰れば、怖い妻と顔を合わさなければなりません。
会社員 田中浩さん(仮名)
「また、ひともんちゃくあると嫌だなというのは、家に帰るとありますので、帰りたくないなって。」
書店や電気店などを4時間ほどぶらつき、妻が寝静まるのを待つのが、いつしか習慣になりました。
ここまで妻を恐れるわけとは…。
それは、妻から課せられる日常生活の細かなルールだといいます。
うっかりそれを破ると…。
会社員 田中浩さん(仮名)
「ヒステリーじゃないですけど、大きな声を出して怒るみたいな。
そういう怖さっていうか。」
例えば、食後すぐに歯を磨かなかったりすると…。
妻
「あなた、なんで食べたのにすぐ歯、磨かないの!」
たちまち人格を否定するような言葉が。
さらに、コップを置く位置が僅かに違っても…。
妻
「ちょっとコップの場所はここじゃないでしょう!」
クッションの置き方が悪くても…。
妻
「そこじゃない!
クッションは、こっちでしょう!」
しまいには、リビングにいるだけで邪魔だと怒られるといいます。
会社員 田中浩さん(仮名)
「『信じられない』とか『人間としておかしい』とか『人間として間違ってる』みたいな。
冗談じゃなくて、本気で言われる感じがあるので、なんでそこまで言われなきゃいけないんだろう。」
アンケートでも多くの夫が、田中さんのように妻が家庭の実権を握っていて逆らえないことを怖い理由に挙げています。
愛知 40代
「自分のルールから外れると、ストレスがかかるみたいで文句が出てくる。
完璧主義とか理想主義とか、そんなんですかね。」
そして、妻が怖い理由で特に目立ったのが、「いつもイライラしていて怒られる」こと。
長野 30代
「もう一緒に近くにいるだけで、ちょっと怖いというか。」
山口 50代
「突然、怒ることがありますので、もう黙りこむしかない。」
広がる、妻が怖い夫たち。
しかも特徴的なことは、大半の人が「なぜ妻が怒っているのか分からない」と答えたことです。
長野 30代
「理由が分からないから、僕としては、一方的に怒られているだけって感じで、もう、わけわかんないって感じですね。」
いったい妻は何にいらだっているのか。
聞こえてくるのは、夫の想像をはるかに超えた、根深い問題です。
都内でフルタイムで働く、鈴木恵さんです。
共働きで、4歳の息子を育てています。
夫は帰宅が遅いため、平日はほとんどの家事を鈴木さんが担っています。
病院勤務 鈴木恵さん(仮名)
「すごく平等じゃないなってことは、やっぱりありますね。
結局、私が全部やるのね、みたいな。」
そんな鈴木家の夫との会話が、こちら。
病院勤務 鈴木恵さん(仮名)
「聞いてる?
何て言った、私いま。」
夫
「聞いてませんでした…。」
病院勤務 鈴木恵さん(仮名)
「人が話してるのにさ。」
妻の話を聞いていない上、何度同じことを言っても、すぐに忘れてしまう夫に、ついイラっとするといいます。
病院勤務 鈴木恵さん(仮名)
「日々『これくらいだったら我慢しよう』って、やっぱり思うじゃないですか。
だけどやっぱり、それがたまりたまると、『あの時も言ったのに』『あの時も言ったのに』
『もう、いつになったらやってくれるの!!』って。」
妻の怒りの原因は、特定の出来事だけに結びつけられているわけではありませんでした。
例えば、今回のアンケートから浮かび上がった1つは、働く妻が感じている、強烈な「不公平感」です。
今や共働きは、専業主婦の1.5倍。
もはや、こちらが多数派です。
ところが、夫の長時間労働は相変わらずで、家事・育児に費やす時間は1日たったの24分。
妻の1割にも満たない実態があるのです。
こうした不公平感が、夫への恨みのような感情につながっているという専門家がいます。
東京大学の本田教授は、女性の社会進出に関する意識調査を行いました。
その結果、仕事を辞めて家庭に入った妻たちも、大きな不公平感を感じていることが分かりました。
東京大学大学院 本田由紀教授
「私だって仕事で輝いていた時期だってあるのに、ある種、悔しい思いもしながら家庭に入っているのに、男性側はそういうことに、まったく気づかず、自分は世話してもらって当然だというようなふるまいをされると、女性としてはイライラするのは十分想像できます。」
妻の心にマグマのようにたまる不公平感。
実は女性には、不快な気持ちを長く記憶する特徴があるといいます。
30年近く悩める夫婦を診察してきた医師・姫野友美さんです。
妻の言うことを夫がすぐに忘れてしまう現象も、男女の脳の違いに理由があると姫野さんはいいます。
脳科学の実験で、不快な画像を見せたところ、男性では扁桃体(へんとうたい)という、短期記憶をつかさどる場所が反応しました。
一方、女性の脳で反応を示したのは、前頭前野。
ここは、長期記憶に関係する場所です。
このことから姫野さんは、女性のほうが不快な体験を長く覚えている傾向があるとみています。
心療内科医 姫野友美さん
「女性の感情記憶に時効はない。
ところが男性の方は“短期記憶”なので、一瞬覚えるけどすぐ忘れちゃうんですね。
これはあなたのご主人だけが苦手ではなくて、世の男性みんなそう、脳の構造上ね。」