北京で米中戦略・経済対話が2日間の日程で6日から開かれ、外資系の多国籍企業が中国で歓迎されていないという思いを日増しに募らせていることがわかった。
米国のルー財務長官は7日、米中の企業幹部らの会合を前に「中国の経営環境に対する懸念がここ数年、強まっている。外資系企業が直面する規制は一段と複雑になり、中国で歓迎されているのかと彼らは疑問を持ち始めている」と述べた。
ルー氏はオバマ政権で最後となる米中戦略・経済対話を主導しており、工業分野の過剰生産が市場の「ゆがみ」を引き起こしたとされる問題で、6日に中国側の担当者と議論を戦わせた。
中国は米国への外国直接投資(FDI)を最も急速に増やしている国だが、米財務省によると、中国からのFDIの総額はわずか102億ドル(約1兆900億円)にとどまっている。
一方、中国への外国投資は減速している。多国籍企業は中国の経済状況の悪化や規制の一段の厳格化などに懸念を示している。
■欧州企業、事業拡大意欲が減退
中国で活動する欧州連合(EU)企業でつくるEU商工会議所が7日に発表した企業景況感調査でも、中国での事業展開の見通しが一段と悪化した。ブトケ会頭は、より開かれた競争市場の基礎が敷かれるはずだった中国中央委員会第3回全体会議(3中全会)の改革に言及しながら「この悲観的な見方は、中国政府が掲げた政策が実現していないせいだ」と話した。
中国政府はこの春、過剰生産はきわめて重要な問題だと認めたが、国有企業や民間の大企業の廃業には依然、消極的だ。
中国の供給面の改革について、ブトケ会頭は「良い知らせも耳にするが、残念ながら口だけにすぎない」と言う。
同会議所の企業景況感調査では、中国で事業拡大を計画している欧州企業は約47%で、2015年の56%、13年の86%から減った。しかし、もし3中全会で示した改革が実行されれば、EU企業は意欲的に投資するだろうとブトケ会頭はみる。
同氏はEUが中国からの投資案件を1つも拒否したことがないと強調した上で「もし今後11カ月のうちに投資協定が結ばれれば、企業には非常に前向きなメッセージとなる。投資協定は我々が望む最たる指針だ」と語った。
同会議所によると、中国政府が公に示した鉄鋼業界や石炭業界への懸念の他にも、過剰生産問題は中国の多くの工業分野に重くのしかかっており、自動車をはじめ、加盟企業の41%が中国でのコスト削減を計画している。
調査対象企業のなかで、自動車や化学、運輸、物流、情報技術、通信といった業界の企業は過剰生産能力が過去最高で、これらの企業の15年の売上高も前年比減少幅が過去最大だった。
米国が戦略・経済対話で過剰生産の問題を突きつけたことで、中国の楼継偉財政相が語気を強めて反論する場面もあった。楼氏は、中国が世界金融危機の影響を食い止めるために巨額の信用供給をした6年前は、過剰生産が過度に騒ぎ立てられることはなかったと述べた。
By Lucy Hornby and Tom Mitchell(2016年6月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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