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 集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は違憲で、「平和的生存権」が侵害され精神的な苦痛を受けたとして、主に関西に住む市民が8日、自衛隊出動の差し止めと1人1万円の国家賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。

 訴えたのは「『戦争法』違憲訴訟の会」(大阪市)の呼びかけに応じた戦争体験者やその家族、宗教者、医師ら713人。訴状では、安保法は「時の政府の判断で世界中で武力行使を可能にするもので憲法9条に違反する」と指摘。「安倍政権は、圧倒的多数の憲法学者も違憲と判断した法案を憲法改正の手続きを経ずに成立させ、立憲主義を破壊した」と批判した。さらに法施行で戦争ができる状態になり、「不安と苦痛にさらされる生活を余儀なくされた」と訴えている。

 憲法が前文でうたう平和的生存権は、航空自衛隊基地の用地買収をめぐり最高裁判決(1989年)が「抽象的概念」と指摘。裁判で救済を求められる具体的権利と認めない考え方が主流となっていた。しかし名古屋高裁は2008年、自衛隊のイラク派遣差し止め訴訟の判決で「具体的権利性があり、侵害された場合、賠償や差し止めを求められる」と述べ、一石を投じた。

 安保法の集団訴訟は今年5月までに東京、福島、高知で計700人超が提起しており、8日は長崎県の被爆者ら118人も起こした。今後も岡山や長野、札幌などで予定されているほか、広島でも原告を募る動きがある。

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 内閣官房国家安全保障局は「訴状が届いていないためコメントは差し控えたい。その上であえて申し上げれば、平和安全法制は憲法に合致したものであり、国民の命と平和な暮らしを守るために必要不可欠なもの」との談話を出した。(釆沢嘉高)

■「悲しみと怒りがよみがえり眠れない」