プロローグ それは1本の電話から始まった
私たちLGBTにとってのゴールデンウィークはどういう存在だろうか。
もちろん、セックスのかきいれどきである。
マンネリ化したいつもの定食屋、
泥水しか出てこない古井戸……
そんな状態になったハッテン場に、新鮮な食材や飲用可能な水が地方から移動してくるという絶好の時期なのだ!
今年のゴールデンウィーク前半はうっかり部屋の改装(ブルーシートの補強など)を手掛けてしまったためまったくハッテン活動ができず、最後の土日に私はすべてをかけていた。
数日前からマカを摂取するなどして股間に気合いを入れていたのだ。
明日からの仕上げに今日もマカを二粒……そこに一本の電話がきた。
itaru氏である。
「あんた、東京レインボープライドって知ってる?」
「なんとなく知ってます。壇上で暴言やビンタやハイヒールが飛び交い、組織が分裂して、ホモやレズやオカマや女装が街を練り歩いて、真夏の東京を恐怖のドン底に陥れるという秋田のなまはげを模したプロレス興行ですよね?」
「情報が古いわよ。今のレインボープライドは気負いすぎたリブ釜や頑張りすぎた女装のせいで一般人が今一つドン引いちゃうようなこともなくて、とてもいいイベントになってるんだから。そもそも今は真夏じゃなくてゴールデンウィークの開催だし。今度の土日よ。行く?」
「イヤですよめんどくさい。ぼくはハッテン場行きますんで、取材がんばってください」
「あんたも取材するのよ! すっぽかしたらぶっ殺して腎臓チャイニーズマフィアに売り飛ばすからね!」
「ギャー! マカが無駄になっちゃう!」
2016年5月7日(土)快晴。
「取材はパレードだけでいいじゃない! 土曜日はハッテン場行かせて!」
という絶叫も
「逆に日曜日は人が多すぎて取材どころじゃないから、今日こなきゃダメよ!」
と却下されてしまった。
レインボープライドの人というと、やっぱりあれだろうか。
気負いすぎたリブ釜。
頑張りすぎた女装。
我が物顔のGOGO。
そしてそれらを冷めた表情で見つめ自らを上に置こうとするイカホモ軍団たち。
そんな背筋がゾッとする人種が会場を埋め尽くしていると思うと、思わず回れ右して駅に戻り逆方向に向かい、いつもの台東区のハッテン場に逃げたくなってしまう……。
嫌々ながら足を踏み入れた代々木公園だが、ホモやレズやオカマや女装のお祭りと身構えてたわりには、いたって普通な雰囲気。
真夏にやっていたパレードには何度か足を運んだことがあるが、明らかに今までで一番規模が大きく、人が多いぶんキテレツ感が薄められている。
壮観なのが場内を埋め尽くしたブースや飲食関係の出店。10年以上前のパレード会場ではうら寂しさも感じたものだが、一巡しただけでは把握できないほどの量。
いきなり、宿敵との邂逅
うろうろしていると、OUT IN JAPANとグッド・エイジング・エールズのブースをいきなり発見。
ちなみに私はこのletibeeの原稿で、グッドとその代表・松中権の名前を出すとことごとく添削されている。
私の宿敵……。
放火でもしてやろうとこっそり虫眼鏡を取り出してカラフルカフェのパンフレットに太陽光を集めていると、いきなり現れたのが松中権!
やばい!
現行犯逮捕されちゃう!
逃げる私!
追いかける松中権!
激しい殴り合い!
そして抱擁と熱いキッス!
とまあいろいろあった後にガッシリ握手をして、私は思いっきり魂を売ったのだった。
あ、ちなみに私がどんなこと書いても
「ぜんぜん名前出していいですよ」
と本人に了承とったのでletibeeはよろしくな!
ババア女装の商魂に踊らされる
なんだか今回の目的は果たした感じがするのでとっとと帰ろうと思ったら私の名を呼ぶ声が。
振り向くと、ババア女装、いや、ブルボンヌ嬢だった。
彼女が経営している2丁目のCAMPY!バーも出店していたのだった。
ババア女装の
「や~相変わらずかわいい~」
という営業トークに
「女装に金なんか出すもんか」
と固く思ってたが、
ブースの中の店子はガチムチのイケメンばかりそろえていて、ついドリンクを頼んでしまう。
商魂たくましいババア女装だ。
ちなみに翌日ババア女装は母親とその恋人を会場に連れていた。
これがアライというやつなのだろうか。
家庭崩壊をもくろんで私が母親の恋人に色目を使ったことを付け加えておこう。
FESTAのステージで思い出す、あの熱かった日
パレード前日の今日はフェスタといってステージでのイベントがメイン。
学芸会に毛が生えたようなものからちゃんとしたプロのものまでそのレベルは様々。
だが、これに関しては10年以上前に見たときのほうが鬼気迫っていた気がする。
パンクやヒップホップでも初期のほうがヒリヒリしてエッジがきいているように。
混沌の中からの魂の叫び。
GALEの歌しかり、
ピンク・ベアリーヌのポエムしかり、
G.O.レボルーションのラップしかり……
きらびやかなステージ上からふと目を閉じると、
在りし日の彼らの姿がまぶたの裏に思い浮かぶようだった(嘘)。
ベストショットでFESTAを振り返る
かなり濃厚な写真日記でしたが、これはまだほんの序の口。
第2回以降もお楽しみに。
文と撮影:サムソン高橋
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