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魔拳のデイドリーマー 作者:和尚

第9章 絶海の火山島

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第129話 日常からの脱出

今回から新章になります。

それと今更ですが……『魔拳のデイドリーマー』書籍版が重版されたようです。
感謝で泣きそうです。ありがとうございます! これからも頑張ります!
 

「……そうだ、どっか行こう」

「どっかってどこよ」

「どこでもいいよ、ここではないどこかであれば」

 いきなりわけのわからない会話から始まって申し訳ない。ミナトです。

 突然ですが、なんかもう色々と限界なんです……。

 

 僕が公衆の面前で、アイリーンさんから『Sランク』への昇格を告げられたのが、今から1ヶ月ほど前のことだ。
 あの日を境に、僕の生活は劇的に変わった。

 ……つっても、いい方向に、じゃないけど。

 少し考えればわかったはずだった。

 現在、僕を含めても世界に4人しかいないらしい『S』なんていうデタラメなランクを持った冒険者が、周りからどういう目で見られるか……周りがどういう行動を取るか。

 いわく、師匠の所に弟子入りした段階で、僕はもうSランクの実力を持ってたし……その時の強さで僕が戦った『ディアボロス亜種』も、ウィル兄さんの研究機関および師匠の解析の結果、Sランク相当の実力であったことは明白。

 そこに追い討ち、というかトドメを叩き込んでくれたのは、アイリーンさんから提案されて師匠が修行終盤で実行していた、僕らに向けての『最終試験』。

 秘境みたいなところにつれてかれて、なんか強い魔物と戦わされたと思ったら……どうやらあれらは、僕らのランクを見定めるためにアイリーンさんが紹介した魔物だったらしく……それらを見事に撃退した結果、僕らへの評価が確定した、と。

 ちなみに僕が戦ったのは、九つの頭を持つ龍『ヒドラ』。ランクはS。
 『女楼蜘蛛』時代に母さんたちが戦って封印した魔物。

 普通に強い上、頭をちぎっても潰しても数秒で再生するデタラメな回復力の持ち主だった。しかも牙には毒があって、僕でもちょっとひりひりして赤くなるレベルの毒性だったから(普通の人間は一滴浴びただけで全身腐って即死らしいけど知らん)。

 『覚醒』後の僕でも結構てこずった。でも最終的には、『否常識魔法』をいくつか併用して叩き込んだ結果、完全に討伐することに成功。

 なお、素材は証拠としてギルドに提出したものを除き、僕の新装備の材料になりました。

 とまあこんな感じで、戦闘力の判断材料を丁寧に揃えられてたわけなんだけど……まだこれだけじゃないんだ、僕が『Sランク』になれた理由。

 僕は……なんか自分で言うと自画自賛っぽくなってアレなんだけど、多方面に豊かな才能を持ってる。オリジナル魔法の製作とか、マジックアイテムの製作とか。

 前にもちょろっと言ったけど、冒険者のランクってのは戦闘力のみで決まるものではなく、その人物が有する他の技能のレベルも考慮した上で決められる。だから僕は、それが後押しになって『Sランク』がより確実なものになったそう。

 初期のエルクとか、知識の豊富さや探索関連の技能の高さで、本来は戦闘力的にそれよりもちょっと頼りなかったけど、『E』のランクを貰ってたわけだし。

 ……そのエルクは今や、師匠の所での修行に加えて、バラックスさんの指導で『ハイエルフ』の力を使いこなせるようになってきた結果……初期のシェリーと同等かそれ以上の実力を身につけ、Aランク(しかもAAに近い位置)にまで歩みを進めているんだけども。

 加えて、僕の作った『否常識魔法』を、アルバを除けば誰よりも多く会得してるし……ここに来てさらに伸び代が見られる。ホントすごいなうちの嫁は。

 そして他のメンバー……ザリーとシェリーも同様の進歩を遂げた。
 ザリーはAAランク、シェリーはAAAランクになった。

 ナナとミュウは冒険者じゃないから、そもそもランク持ってないけど……それぞれAAAランクやB~Aランク相当は間違いない実力を持ってる。

 加えて、ミュウに関してはまた僕が甘やかして色々やったから、召喚獣込みの戦闘力ならAA行くかも。

 それと、今気付いたと思うけど……最近僕は、うちのメンバーに対して『さん』『ちゃん』付けで呼ぶことをやめた。敬語ももう使ってない。

 理由はまあ、色々あるけど……前までよりより近くなったというか、仲良くなれたから、ってのが一番正しいかな。

 師匠の荒療治で『デイドリーマー』が少しマシになった影響かも。もっと彼女達のことを知りたいっていうか、近くに感じたい、って思うようになったから。
 まあ、一線越えたのは……まだエルクとシェリーだけだけど。

 ……っと、話が脱線した。元に戻そう。

 そんな感じで、僕らは軒並みランクアップし、それに比例……どころか加速度的に有名になったんだけど……その結果、周りがめちゃくちゃ騒がしくなったのだ。

 ちょっとだけだけど、『S』なんてランクを与えてくれやがったアイリーンさんを恨みそうになるくらいに。

 

 まず、色んな所からの勧誘が、うっとうしいどころじゃないレベルに増えた。

 人間兵器という呼び名すら生ぬるい『S』ランク。軍の一個連隊、下手したら一個師団とすら個人で渡り合えるかもしれないとか何とか言われるレベルの戦闘力、ってのが世間一般の捕え方であり……当然、そんな巨大戦力を召抱えようとする者は多い。

 有力な貴族に、大きな商会、他の大規模な冒険者チーム、そして……一度だけ、お忍びで某アクティブ王女様まで尋ねてきて……いや、ホント何してんのあの人。

 無論全部断ってんだけど、それでもしつこく勧誘は続く。迷惑だってのに。

 宿……『バミューダ亭』にも迷惑がかかり始めてるし、ターニャちゃんも客の相手でかなりお疲れの様子。宿変えたほうがいいだろうか?

 ってか、宿変えた所でなあ……そっちにも普通に押しかけてきそうだし、

 ある程度高級な宿ならそれも違うかもだけど、それでもそれ以上の権力者とかが相手じゃ通しちゃうかもしんないし……いっそのこと、もう本格的に『オルトヘイム号』を拠点にしちゃおうかと思い始めた今日この頃。

 
 ザリーが、面白い話を持ってきた。

 
 ☆☆☆

 
 さて、ちょっと地理の授業をしよう。

 僕らが今いる、そして今まで活動を続けてきた『ネスティア王国』は……この世界における6つの『大国』の1つである。

 国土面積はだいたい、僕の前世でいう所のアメリカくらい広い。形は違うけど。

 広大な大陸――『アルマンド大陸』っていうらしい――の中西部から西端部に位置しつつ、東西南北に広ーく広がっているこの国だけども、その周囲には、当然他の国があるわけで。

 南には、東西に広い国土を持つ6大国の1つ、『ジャスニア王国』、
 北には、ネスティアやジャスニアほど広くはないものの、一応『大国』の1つである『チラノース帝国』がある。

 その他にも、東の方に行くともっといっぱい大小の国があるんだけど……それは今は割愛しよう。

 そんで、今『大陸西端部にある』って言ったとおり、ネスティアから東じゃなくて西に行くと、当然海しかないわけだけど……その海は、各国の国土から一定以上は、前世で言う『公海』にあたり、どこの国の領土でもない。
 すなわち、船での後悔も自由だし、そこにある島とかを探検するのに遠慮もいらない。

 で、ザリーが持ってきたのは……その、ネスティアからかなり西に行ったところの洋上に浮かぶ、ある火山島についての噂だった。

「『サンセスタ島』?」

「そうそう。つい最近、噴火が収まったみたいでさ、探索可能になったらしいんだ」

 ――と、ザリーが話すその島、『サンセスタ島』。

 何でも、数百年前から断続的に小規模な噴火を繰り返してきた火山島で、常に火山灰が島中に降りそそぎ、時折軽石なんかも飛んできて安全とは言えない環境らしい。

 おまけに魔物も、決して弱くは無い上に環境に適応している種族がいるため、冒険者だろうと他国の研究チームだろうとほとんど立ち入れない。
 せいぜい、島の外縁部分をちょっと調べることが出来る程度なんだそうだ。

 150年前にあの元祖否常識集団『女楼蜘蛛』も挑戦したらしいんだけど……彼女達の場合、実力は足りていたものの、『火山灰が髪や肌について不快』『どこ行っても灰ばっかで何もない。地味』『美味しい動植物がいない』などの理由ですっぱりやめたそう。

 ……まあ、依頼によらない探索は、1から10まで冒険者の自由だから別にいいんだけど。

 ただ、ごく最近、昔に比べて噴火活動が穏やかになってきていたため、各国の観測チームが注視していた所……ついにここ数週間、噴火が全くなくなった。

 これを、いわゆる安定期的なものに入ったためだとそれぞれ結論付けたため、『女楼蜘蛛』すらも(かなり俗な理由でだが)さじを投げた未開地域ということもあり、今現在冒険者のみならず、先にあげた3国が国を挙げて調査プロジェクトを始動させているのだとか。

「ここに行こうっての?」

「うん。僕ら個人で行くか、国の調査プロジェクトに参加して行くか、いずれにせよ島1つともなれば、結構な長期の探索になると思うし……しばらくこの町を離れれば、少しはこの騒ぎもましになるんじゃないかと思って。その後またここに拠点を置くかは、追々考えればいいじゃない?」

 と、今日もまた新鮮な情報を持ち帰ってくれたザリーが机に置いた資料を眺める。

 そこには、おそらく数日後にはこのウォルカにも出回るのであろう、王国の調査団への参加者を募るチラシや、『サンセスタ島』に関わる文書なんかが並んでいた。

 ……いつもながら、どっから仕入れて来るんだか。

「確認されてる限りでは、サンセスタ島って、CからB程度の魔物が多くいるんですよね? あと、少ないけどAランク以上の魔物もいるとか」

 と、ナナ。
 ……最近彼女、僕らに付きっ切りで姉さんの商会の仕事してんのかちょっと心配になってるんだけど……いいんだろうか?

 というか、油断してるとこの人が冒険者じゃないってこと忘れそうになる。

「なーんだ、そんなに強い奴がいるわけでもないのね」

「いや、BとかCでも十分手ごわい部類の魔物だと思いますよ? まあ……最近私達、ちょっとおかしな速度で強くなってるから感覚麻痺しがちですが」

 シェリーと、ミュウ。

「でもそれで別にいいんじゃないの? 別に私達、戦闘狂の集団じゃないんだから。手ごわい魔物や敵がいるところを目指してるわけでもなし……そもそも今回は、暇つぶしが目的みたいなもんだもの」

「だね。観光気分……とはさすがにいかないかもだけど、ちょっと日常を離れて南の島にでも行くと思えば、軽い休暇みたいな感じで楽しめそうかな?」

「南じゃなく西ですけどねー」

 やんわりツッコんでくるミュウと、エルクの『強い奴いないけどいいよね』発言に、ちょっと不満そうな顔をしているシェリーはさておいて、

 確かに……今の僕達にとっては、時間潰すにはいいかもしんないな、この島。

 ただの観光地とかなら、そこでも野次馬連中は追ってくるだろうから……多少なり危険でも、僕らの実力ならほぼ安全でいられる場所、の方がいいだろう。

 BとかC程度なら、野宿でも結界張れば比較的安全に寝れるし、最悪オルトヘイム号の中で寝ればいい。持続稼動型のバリア機構搭載してるから、さらに安全だ。

 それに、未開の地ともなれば……深入りしないようにだけすれば、ちょっとした探検ツアーみたいな暇つぶしも出来そうだ。

 別に何か伝説があったりとか、そういうのはないけど、ちょっとした遺跡や洞窟みたいなのもあるみたいだし。

「それにもう1つ、この町を出た方がいいかもしれない理由があるんだよね」

「?」

「実はさ……この『バミューダ亭』、近々……閉めるらしいんだよ」

「「「え!!?」」」

 ザリーから突然告げられた驚きの情報に、僕ら全員の声がそろった。

 閉めるって……閉店、って意味!? この店が!? 何でそんないきなり!?

「ちょ、ザリー、そんな話どこから……ってか、ホントなの?」

 
「ところがどっこい、ホントなのよね!」

 
「「「!?」」」

 ばたぁん、と、
 無遠慮なほどに大きな音を立てて扉が開けられ、エプロン標準装備、宿の看板娘であるターニャちゃんが入ってきた。
 手にはお盆を持っていて、その上には、人数分のドリンクらしきものが入ったコップを乗っている。お、サービス? うれしいな。

 ……いやいや、そうじゃなくて。

 いきなり入ってきたターニャちゃんの気配に気付けなかったっていう『お約束』はいいとして、今正に彼女も肯定した、さっきの衝撃の事実について聞かないと。

 てきぱきと僕らの目の前に、それぞれの好物であるドリンクを配っているターニャちゃんに声をかけようとしたら、先手を打つかのように彼女の方から口を開いた。

「あ、最初に言っとくと、ここ最近ミナトさん達の追っかけで宿が騒がしくなっちゃったこととは……まあ、関係ないことは無いけど、そのせいで閉店する、ってわけじゃないから気にしないでね? あくまでコレ、家庭の事情だから」

「……というと?」

「んーと……言ったことあったかどうかは忘れちゃったんだけど、この宿、王都にある『バミューダ亭・本店』の『支店』なんだよね」

 聞くところによると……ターニャちゃんの家は、もともと王都で宿屋をやってたらしいんだけど……十数年前、その支店という形で、この『ウォルカ』に支店であるこの『バミューダ亭』を作って、営業を始めた。

 本店も支店も、問題なくやれてたんだけど……どうも、王都の本店を切り盛りしていた、ご主人の両親……つまりはターニャちゃんの祖父母の持病が悪化し、それで別に命がどうこうってのはないんだけど、引退を余儀なくされたそうな。

 それで、王都の本店を継いでもらうため、この宿の主人に戻ってきてほしいということで……多方面から惜しまれつつも、ここを閉め、王都に戻ることになったらしい。

 王都にいる、祖父母を手伝っていた従業員じゃ、手伝いはともかく宿の管理そのものを任せられる人はいないそうなので。

 当然、ターニャちゃんもそれについて王都に行くらしいんだけど……そこで1つ、問題が持ち上がっている、という話をターニャちゃんは語りだした。

「実はさ……私んち、没落貴族なんだよね」

「え、そうなの!?」

 没ら……ってことは、もともと貴族だったけど、何かの理由で貴族資格を剥奪されたとか、そんな感じの身の上だった、ってこと!? ターニャちゃんが!?

「うん。あ、でも私自身はあんまり関係ないんだ。だって、うち……『バース家』が没落したの、もう100年以上前で、おじいちゃん達すら生まれてなかった頃だし」

「そうだったの……初耳ね、私も聞かされてなかったわ」

「まあ、話してどうこうなるもんでもないからね。お姉さまも、そんな昔私んちがどーだったとか聞いても仕方なかったでしょ? 私だって知らないんだし」

 相変わらずエルクを『お姉さま』と呼ぶターニャちゃんは、『あはは』と少し気まずそうに手を振りつつ続けた。

 そういうわけだから、ターニャちゃんが王都に戻りたくないのは、僕が一瞬想像した、貴族だった頃の知り合いに会いたくないとか、会ったらいじめられるとか、そういうんじゃないようだ。

 じゃあなぜかっていうと、聞けばターニャちゃん、没落したとはいえ元貴族の子女らしく、王都にある『学院』なるものに通っていたらしい。

 王都にある『バミューダ亭』本店は、王都でもかなり大きく有名な宿らしく――こないだ行った時は見なかったし知らなかったな――そこを継ぐんだから、ある程度の学は必要だろう、ってことで。

 しかし、どうやら途中で挫折し……中退したとか。

 王都にいづらくなり、ちょうど支店を出していた父親を頼ってここに来た、と。

 そんなバックグラウンドのおかげで、ちょっとばかり王都に苦手意識があるらしいターニャちゃん。別に戻ったからって、当時の同級生に苛められるとかそういうことは無いと思うらしいけど、できるなら戻りたくない、とのことだった。

「まあ、さすがにおじいちゃん達のお見舞いくらいには行くつもりだけど、総合的に考えてあそこ私、挫折とかの思い出が圧倒的に多いからさあ……定住はちょっといやだな」

「けど、職場が閉まっちゃうのにここにいるわけにもいかないでしょ? それとも、どこかほかに職場でも探すの?」

「うーん、それなんだよね……ねえミナトさん、仕事くれない? 住み込みで」

「いや、いきなり何?」

 なんか突然、何の脈絡もなく、ターニャちゃんに変なことを聞かれた。仕事、って何だ。

「ほら、ミナトさん達最近話してたじゃない、宿変えたほうがいいかとか、いっそ家でも買っちゃおうかとか。前者ならともかく、後者だったら……私、家事全般仕込まれてるから、家政婦としてなら住み込みで使ってもらえないかな、と思って」

「一見筋道通ってるように聞こえるけど、冷静に考えるとやっぱり唐突過ぎる提案というか発想だな」

 住み込みを要求しつつそんな提案をしてきたターニャちゃん。また唐突だな……本気なのか冗談なのかわかんないけど、いくらなんでも……

 ……まてよ?

 
「案外……それもありかも?」

 
「「「え?」」」

 ターニャちゃん本人を含む、その場にいた全員が、驚いたように僕に視線を向けてくる。
 いやまあ、無理ないけど。

 けど僕はというと、割と真面目に今ターニャちゃんが言った話を考えていた。

 いや、家……というか、拠点どうするかってのはもともと考えてた話でもあるんだ。

 なら、宿にするんでなければ、買うにせよ借りるにせよ、そこの『管理』をどうするかって問題も出てくる。

 僕らは冒険者だ。依頼なんかで長期間家を留守にすることだってザラにあるし、その間誰も家に置かずに放置してたりなんかしたら、ちょっと悲惨なことになる可能性大だ。いや、間違いなくなる、と言っていい。

 依頼から疲れて帰ってきて、くつろぐ前に掃除しなきゃいけないとか、嫌過ぎる。

 だから多くの場合、奴隷か、それ専用に雇った家政婦か何かに命じて留守中の家を管理させておくらしいんだけど……ターニャちゃんなら、その能力は申し分ない。

 僕らが冒険者ライフを送る期間に対して、この宿で過ごす期間は決して長くは無いかもしれないけど……彼女の、明るさや熱心さはよく知ってる。
 時々ちょっとうざったいけど、気がきいて心優しい、信頼の置ける子だってことも。

 仮に家を買うとして……赤の他人より信頼できると言ってもいい気はする。

 普通なら、専門のプロフェッショナルな家政婦を雇うところだけど……僕って、生活圏内にあんまり他人を迎え入れたりするの好きじゃないタイプだし。

 あと、考えすぎかもしれないけど、僕が有名になったこのタイミングで家政婦なんか雇ったりしたら、何か下心や余所との内通を疑わなきゃいけない気もしなくもないし。

 てか実際、そういうのありそうで怖い。家政婦派遣組織に裏から手を回して、今勢いのある冒険者の家を内側から……とか。

 それなら、ターニャちゃんならまだ……って考えたんだけど、的外れかな?

「えっ、えっ? 嘘、まさかの脈あり?」

「んー……まあ、完全に的外れってわけではないかもしれないけど……」

 驚きつつもちょっと嬉しそうなターニャちゃんと、顎に手を当てて悩んでいるエルク。

「まあ、もし家買うなら、の話になるけどね。それもウォルカとか……王都以外に。ターニャちゃん、いつごろ王都に引っ越す予定だったの?」

 いつまでに決めればいいかな、って意味もこめて、聞いてみる。

「んと、ここの後片付けが色々終わってからだから……多分、3週間くらいかかると思う、ってお父さんが言ってた。ああでも、さっき行ったとおりどの道お見舞いにはいくから……もしミナトさんの所で働けるとすれば、1ヶ月後くらいから、かな」

 なるほど……それまでに決めればいいわけか。
 拠点をどうするか。そして、ターニャちゃんを雇うかどうか。

 そもそもの前提なんかも決まってないわけだから、今すぐどころか、しばらく結論出せないな……って伝えたら、ターニャちゃん『脈ありってだけで十分だよ!』とのこと。

 とりあえず、当初は冗談気味でターニャちゃんから話された雇用の件については熟考するとして……その間の1ヶ月を使って、例の『火山島』とやらに行ってみる、ってことでいいかな。期間的にもちょうどよさそうだし。

 ザリーの話だと、王国の調査団の冒険者募集は急募で、けっこうすぐに出発するみたいだし……調査そのものは中~短期間で終わらせる予定らしいから。

 今は大人しいとはいえ、火山島。調査中に火山活動が再開したりしたら、そりゃ大変だろうしね。

 ナナとザリーの見立てじゃ、かけても2週間、それ以上はまた別に日程を組むだろう、って話だったし。それくらいなら……移動時間合わせて考えても間に合うか。

 じゃ、そういう方向で決まりでいいかな? ここんとこ騒がしい上に窮屈で仕方ない暮らしのリフレッシュのために、
 僕らの次なる目的地は、火山島『サンセスタ島』ってことで。

 

 
 ……ところで、
 それはいいとして……さっきからちょっと気になってることが1つ。

 ターニャちゃんがさっき改めて言ってた、貴族時代からのファミリーネームの『バース家』っていうやつなんだけど……なんか……

 

「「……なんか、どこかで聞いたような…………え?」」

 

 ぽつり、と呟いた独り言。

 まさかそれがハモるとは思わなかった僕ら2人(・・・・)……僕とナナは、お互いにちょっと驚いて、お互いの顔をきょとんとしてみた。

 え……何で?

 
 
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