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魔拳のデイドリーマー 作者:和尚

第8章 トライアングル・デスペラード

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第122話 想定外の邂逅

 

「……おかしいな……?」

 師匠のテストで、AAAランクのダンジョン『黄泉の柱』に挑戦して……今日で3日目。

 事前に聴いた話だと、この『黄泉の柱』は、全部で13階層あるらしい。

 下りた階段を数えた限りだと、今11階層だから……そろそろ最下層だ。

 ……とまあ、クリア目前なんだけど……今僕は、痛烈な違和感に襲われていた。
 いや、違和感自体は……昨日からうすうす感じてはいたんだけども。

 何に違和感があるのかっていうと……出てくる魔物の種類。
 何だか昨日、8階層あたりから……アンデッド系の魔物が異様に多くなったのだ。

 上の階層でも出てきた『サイコゴースト』とかに加え……師匠の『訓練場』でも見た『スケルトンドラゴン』なんかもいたし、

 同じくドラゴンのアンデッドだけど、体が骨だけじゃなく、腐肉なんかが残ってて毒性の息を吐いたりする『ドラゴンゾンビ』、

 『キョンシー』の強化版で、さらに熟練された体術を修め、アンデッドとは思えないスピードと技のキレで襲ってくる『ラオレンキョンシー』、

 巨大な鎌を手に持ち、強力な魔法をも使って攻撃してくる白骨の死神『リッチ』、

 そして最も手ごわかったのが、剣と盾、そして全身甲冑で武装し、魔力を含めた全てのステータスがアホ程強力なガイコツの騎士……『デスジェネラル』。

 錆の1つも見受けられない装備に身を包み、マントまで装備したその姿からは……明らかな『その他大勢とは一味違う感』というか何というか……気品すら感じられた。

 そしてそいつ、やはりというか見掛け倒しにあらず。ランクAAAは伊達じゃなかった。
 熟練の冒険者すら一蹴するであろう戦闘技術に加え、体には瘴気を纏い、魔法まで使いこなし、挙句の果てにスケルトンだから疲労も痛覚もないデタラメ仕様。

 おまけに他のアンデッド系モンスター率いて現れたし。あれには驚かされた。

 分類的には『スケルトン』じゃなく、『デス』とか『リッチ』の上位種族だっていう話だ。
 魔法が使えるのもそのせいだし、知能も高いらしいのは聞いてたけど……正直舐めてた。

 剣とかにも相当な魔力こめられてて、食らったら僕でも無傷じゃすまなそうな威圧感だったし……直属部隊よろしく連携して襲ってくるアンデッド共も相手しなきゃだし、その中の『リッチ』とか平気で味方巻き込んで魔法放ってくるしで、本当に大変だった。

 

 そんな感じで、下の階層に行くほどアンデッドだらけになってきたこのダンジョン。
 今、この11階層じゃあ、ほとんどアンデッドしか出てきてないレベルである。

 おかげで、食べられそうな魔物も見当たらない……まあ、持ってきた携帯食料とか、上の階層でしとめた魔物の肉とかがまだあるから、食料の心配はいいけど。

 ……師匠には、こんな場所だなんて何も聞かされてなかった。
 試練っぽく、わざと言わなかった? いやまあ、その可能性もなくもないけど……

 いずれにせよ『瘴気』が出てるわけでもないのに……明らかにおかしい。何か……原因があるはずだ。

 妙な胸騒ぎを覚えながら、僕はアルバと一緒に、こころもち早足になって最下層を目指して歩き出した。

 
 ☆☆☆

 
 今回、この『黄泉の柱』攻略にあたり、僕は……情報なんてものはほとんど貰ってなかったけど、1つだけ、あらかじめ聞かされていることが会った。

 それは、このダンジョンで僕が目標にすべき『素材』が何なのか。そしてそのために、どこで何をすればいいのか。……あれ、2つか?

 まあいいや、ともかく、『どこで』はもちろん最下層なんだけど……『何をすればいいか』。

 師匠によれば……この『黄泉の柱』の最下層には、ある魔物が住んでいる。

 その名は『ミュンカガラ』。
 魔法生物族に属する魔物で……最下層の主とも呼ぶべき存在。

 師匠の書庫にあった資料だと、獅子舞とシーサー――沖縄の屋根にいるアレね――を足して2で割ったような……どこぞの部族の獣系守り神みたいな見た目をしていた。

 体は……『魔法生物』だからなのか、全体的に、動物型ロボットのプラモデルみたいな見た目になっている。見方によって作り物っぽくも見えるし、力強くも見える。
 顔は獅子舞ちっくな、しかし獰猛さも感じ取れる造詣。

 そんな置物っぽい外見は滑稽にも見えるが、れっきとした、それもどちらかというとSランクに近いAAAランクの魔物であり、攻撃力・防御力・機動力ともにそれに見合った高さの、舐めてはかかれない相手らしい。

 非常に縄張り意識が強い上に、最下層全体が丸ごとそいつの縄張りになっているらしく、最下層にはそいつ以外の魔物はいない。侵入してきた端から殺されるからだ。
 ゆえに、そいつとは必然的に一騎打ちになる。

 そしてこいつの大きな特徴は、倒しても『コア』さえ無事なら、しばらくすると破片が集まって再生すること。完全に倒すには、それを破壊する必要がある。
 頑丈で、ちょっとやそっとの攻撃じゃ傷もつかないらしいけど。

 その『核』だけども……常に大気中の魔力を集めて収束させる作用があるそれは、その周囲に、余剰魔力が結晶化してできた、その名もずばり『魔力結晶』という超特殊物質を作り出すという副作用がある。

 今回のお目当ては……その『魔力結晶』なのだ。

 高純度の魔力が圧縮され固形化したそれは、儀式魔法の供物にできたり、魔法薬作成の触媒になったり、マジックアイテムの材料に使えるなど……様々な使用用途があり、その全てにおいて素晴らしい効能を発揮してくれる。超のつくほどに有用な素材なのだ。

 『ミュンカガラ』を倒し、その体内から出てくるであろう『核』の回りについているであろうそれを、砕くなり削るなりして回収し、持って帰る。それが、僕の今回の最大の目的であり……師匠の『テスト』に合格する条件だった。

 
 ……が、いざ最下層に到着してみると、

 その、『魔力結晶』を奪い取るために戦わなければいけないはずの『ミュンカガラ』は……すでに体をバラバラにされて倒されていた。

 
 おそらくは……その数歩先に倒れていて、こちらもすでに息絶えていると思われる『デスジェネラル』と戦って、相打ちになったのだろうと思われる。
 こっちも、骨の体はほぼバラバラに粉砕されていた。

 ……よく見ると、骨の破片の量が、1体分にしては少し多いから……数体の『デスジェネラル』に一度に襲い掛かられて、果敢に挑んだものの最終的には……ってとこか。

 見ると……キラキラと青色半透明に輝く、球状の物体が……『ミュンカガラ』だったと思しきものの破片の山の中に見えた。あれか、『核』と……その周りにへばりついてる『魔力結晶』ってのは。

 破片から推測するに、どうやら『ミュンカガラ』ってのは、大型工事車両並みに体が大きな魔法生物らしい。『核』もそれに見合った大きさで……直径が僕の身長くらいある。
 その表面の『魔力結晶』……なかなかどうして、結構な量になりそうだな。

 数体の『デスジェネラル』と戦って、相打ちとはいえ全滅させるだけの戦闘力。当初の予定通りに僕が戦ってたら……結構苦戦してたかもしれない。

 とりあえず、まあ楽だしいいか、っと割り切る。

 アルバに、『ミュンカガラ』の再生が始まらないか、広範囲を見渡しながら見張っててもらいつつ……『核』の周りの魔力結晶を急いで剥ぎ取って回収。

 どうにか、破片が集結し始める前に間に合った。
 重さにして10kg以上はありそうな『魔力結晶』……大量と言っていいだろう。

 漁夫の利っぽい形でゲットしちゃって、ちょっと肩透かし食らった気分だけど、まあいいか……と、しぶしぶ納得しようとした……その時、

 
「……? 何だ、あの穴……?」

 
 さて上に戻るか、と階段に引き返そうとした僕の目に……ふと、変なものが映った。

 それは……穴。というか……ヒビ。
 石の床に、地割れみたいな感じで走っている……しかし、その幅は人1人を飲み込めそうなくらいにぱっくりと大きく開いている、謎の空洞だった。

 しかし……経年劣化や地震なんかで出来たものじゃないように見える。
 割れて穴になってるのはその部分だけで、その周囲には細かいヒビなんかはほとんどないからだ。もとからそういうデザインなのかと思うほど、キレイに割れている。

 同じ理由で……誰かが大きな力を加えて石の床を力任せに割ったとか、『ミュンカガラ』の戦いの余波で開いた穴、って感じでもないな。何だコレ?

 ちょっと気になって近くに行って見てみると……地割れに見えたその穴の奥、すなわちこの階層の更に下に……どうやら、大きな空洞が広がっているらしいことがわかった。
 まるで、下にもう1つ階層があるみたいだ。

 しかも何だか……妙な空気が漂ってくる。

 瘴気のようによどんでるわけでもなければ、威圧感とか緊迫感に満ちているわけでもない。今まで感じたことのない、形容しがたい『妙な』空気。

 この下に……何かある。
 というか、何か居る…………と、思う。

 ひょっとしたら、このアンデッド比率が以上に多くなっているダンジョンの何か秘密のようなものが、この先にあるんじゃないか、とふと思った。

 ちょっと考えた末……『やばそうだったらすぐ戻ればいいか』ってことで、ちょっとだけ『下』に降りて探検してみることにした。

 
 ☆☆☆

 
 第14階層とでもいうべきこの階層。
 意外にも空気は澄んでいて……息苦しさは感じない。若干肌寒いけど。

 上の階層までは、壁とかに松明や篝火があったから――ダンジョンって、誰が用意したわけでもないのになぜかそういうのがあるんだよね……仕様?――そこそこ明るかったけど、ここはそういったものが無い……完全な暗闇だ。

 光源が一切無い闇の空間だから、目が慣れたりすることもない。
 松明とかをセルフでもってなければ、探索自体不可能なところだ……普通は。

 師匠との修行で、暗視魔法『サーモ・アイ』を完成させといてよかった。
 赤外線スコープの要領で、暗闇でも問題なく見えるし……例によってアルバもマスターしてるし。いつの間にか。

 しかも、火とか太陽とか、超高熱の熱源を見ても目がつぶれたりしないよう……一定以上の眩しさは自動でセーブする補助術式付きだ。すごいでしょ?

 まあ、光魔法で自分の体を光らせるとか、『魔緑素』の要領で蛍とかが持ってる発光する酵素を作るとか、他にも手はいくつもあるんだけど……新しい魔法はやっぱり使ってみたいってことで、コレで行く。

 しかしこの謎空間、やっぱりというか、本格的に変だ。

 アンデッドモンスターが跋扈してて……暗闇から襲いかかってきてうざい。
 しかも、Eランク程度の下等な『スケルトン』とか『ゴースト』なんかもいれば、上の階層でも出てきて多様なAとかAAの魔物も混在してて……統一性が無い。

 そして、今までの階層と同じように……瘴気がないのにこの魔物の多さ。
 瘴気が満ちている所で、アンデッドモンスターが沸いて出るならわかる。場所的・地形的にそういう特性を持ってる所とかあったりするし。

 他にも、怨念漂う古戦場とか、何万人もの骸が眠っている巨大墓地とか、アンデッドが量産されるような背景とか事情を持っていたりするところなら、稀にだけども、何らかの要因で魔窟と化すこともありえるし……まだわかる。

 けど、そういった要因が全く見当たらないこの空間で……ただアンデッドモンスターだけがどうしてこうも湧き出てきているのか。
 ……考えられる可能性としては……

 
 これらのアンデッドを生み出している『何か』が、ここにいる……ということぐらいか。

 
 上位のアンデッドモンスターの中には、自らの魔力や血肉を消費することで、眷属たる下等なアンデッドを生み出して使役するものもいる。
 一応、『幽霊船』とか……場所っていうよりはその類だし。

 それに該当する強力なアンデッドの魔物がここに住んでいるなら、そして自らの魔力でアンデッド達を作っているなら、全て説明がつく。

 ……ただ、そういう魔物って大概けっこうな瘴気纏ってるから、この階層の空気がキレイに澄んでる理由は相変わらず説明できないんだけど……例外とかもあるのかもしれない。

 そしてもう1つ……むしろこっちの方が重大だと言える問題がある。

 その魔物がアンデッド達を生み出しているんだとすれば……そいつは、上の階層で複数居た『デスジェネラル』……AAAランクのあれをも召喚・使役できるくらいの、つまるところアレ以上に強い魔物ってことになるわな……

 ……この先、行かない方がいいかも。

 さほど危なくもならなかったとはいえ、一応苦戦したといえばした相手だ。アレより上となると……さすがに考えただけで少々背筋が薄ら寒い。

 Sランクか……もしかしたらそれ以上、かも? ……今の僕が太刀打ちできるかを考えれば、無理して調べるのは建設的じゃないだろう。

 逃げ帰るみたいでかっこ悪いけど……というか実際に逃げ帰るんだけども、まあそれも、賢い選択……ってことにしておこう。僕の心の中で。
 命あっての物種。死んだら終わり、元も子もないんだし。

 目的の素材は手に入れたんだし、こんな空間の存在は明らかにイレギュラーだ。好奇心で虎の尻尾を踏む前に、さっさと…………

 
『おや? こんな所にお客さんとは……珍しいなんてもんじゃないな?』

 
 ……さっさと帰ろうと思い立ったその瞬間に、背後からそんな声が。

 ……タイミングよすぎと言うべきか……悪すぎと言うべきか……。

 不安MAX、テンション急下降の中を我慢して、恐る恐る振り向くと……そこには、普通に声の主が立っていた。

 
 そこに立っていたのは……半透明の人間だった。

 どちらかと言えば軽装、と呼べそうな、しかし清潔感のある服に身を包み……肩と胸当てがついている程度の軽そうな鎧を身にまとっている。あ、あと手甲と脚甲もつけてる。

 帽子なんかはかぶってなくて、髪はやや短め。……意外と若そうだ。
 背中にはマント。なんか……ファンタジーものの勇者とか王子様っぽい外見で、中々様になっている印象を受ける。……それら全てが半透明でなければ。

 それと、暗闇な上、体温感知で見てる映像だから、髪も服も鎧も、色とかはわかんないけども……鎧とマントは、どっちかっていうと黒っぽい色かも。多分。

 一応輪郭はわかる顔の、2つの目だけが『きゅぴーん』と光っている。怖いような、カッコいいような……どっちでもいか。

 しかしこの幽霊(仮)、いつの間にこんな近くにまで寄ってきてたんだろう?
 見た感じ足(半透明)はあるけど、足音も……気配も全然なかった。

 そして今こいつ、人語しゃべらなかった? え、もしかして相当高位の魔物?

 となるとやっぱり……こいつがあのアンデッド軍団の大ボス?

 そんな僕の疑問を知ってかしらずか……半透明なせいで表情がほとんどわからない幽霊(仮)はしかし、特に僕に対して敵意のようなものは抱いていないように見える。

 ……それどころか……

『ここに人が来るなんて何年ぶりだろ? ……っていうか初めてだな。君、冒険者? ここまで潜ってこれたってことは、相当強いんだよね?』

 ……なぜかテンションが若干上がってきているようだった。
 身を乗り出して、何だか声も浮かれてる感じになってきたような……?

 ……こいつもしかして……嬉しがってる? 何で?

 っていうかこいつ、今若干気になること言ってたな……? 

 よく言えばフレンドリー、悪く言えばなれなれしい感じで、謎の幽霊(仮)はこっちへ歩いてくる……ってあれ? 歩いてるのに、足音がしない。

 歩き方を見るに、別に『足音を立てないように歩いてる』って感じでもないんだけど……何でだろう? 幽霊だからだろうか? えっと……実態がないからあるいても足音が出ないとか、そういう感じ?

 いやでも、だとしたらこいつどうやって地面を踏みしめてるのかとかそういうレベルの話に……やめよう。なんか不毛だこの脳内議論。

 とりあえず、何よりも先に……こいつは一体何者なのかを知りたいんだけども。

 気がつけば、足音というものを持たないらしいこいつは、いつの間にか手を伸ばせば届くくらいの距離にまで迫ってきていた。

 しかし、敵意・害意は一応感じないけど……見た目や存在自体がアレなので、それだけで十分警戒する動機にはなると思う。

 近くに来たことでよく見えるようになったけど、半透明ながら一応鼻や口もあるみたいだ、コイツ。近くで見ると何とかわかる。
 ……目が思いっきり『きゅぴーん』でインパクト強いから、中々気付けなかっただけだ。

 ……とりあえず、

「……あんた誰? てか、何? 魔物?」

『うん? ……あー、やっぱそう見えちゃうかー。まあ、仕方ないよね、こんな見た目だし』

 ? 違うんだろうか?

 肩をすくめるような仕草と共に、そんなことを言う幽霊(仮)。
 表情も、心なしか『やれやれ』って感じになってる……ようにも見えるし。

『そうは見えないだろうけど……一応さ、僕、人間なんだよ。わけあってこんな姿になってるけどね。魔物じゃないから、安心して?』

 ははは、と軽い感じで笑う幽霊(仮)。

 一見するとフレンドリーなこの態度が、計算なのか素なのかは、考えてもわからんからとりあえずスルー。同時に、今言ったことを信じるかどうかも保留するとして、

 ただ……簡単に信用しない方がいいし、それ以前にどうやら、油断とかしていい相手じゃ無さそうだっていうのは……こいつの後ろを見てわかった。

 肩の上のアルバが、警戒するように小さく鳴いたことで気付いたんだけども、

 すたすたと普通に歩いてきたこの幽霊(仮)の向こう……すなわちこいつの後ろに、甲冑を身につけた、ここ2、3日でもはや見慣れたガイコツがいた。しかも、2体。

 こんな近くに来るまで、2体もの『デスジェネラル』の接近に気付けなかった……? しゃべる幽霊(仮)といい、この階層に下りてきてからおかしなことばっかりだ。

 すると、その幽霊(仮)は、僕の警戒するような視線の先に、背後の2体がいることに気付いたらしく、

『ああ、ごめんごめん、驚かせちゃった? 大丈夫だよ、この2体は。僕が命令しない限り、襲ったりしないから。僕はもちろん、君のこともね。ついでに言えば、僕と一緒にいれば、ここにいる他の連中も警戒しなくてOK』

「……それってつまり、あんたがここのボス、ってことでいいわけ?」

『そうだね。ああでも、さっきも言ったけど、僕自身は魔物じゃないからね?』

 ……そうは言っても、今のカミングアウトで、より一層さっきまで僕が考えてた『眷属精製能力を持つ上位アンデッド』説が有力になって、『幽霊=人間』と思いづらくなってきちゃったんだけど。

 そもそも、こいつは自分のことを『人間』だと言うけれど……仮にそうだとしたら、いったい何がどうなったらこんな幽霊みたいな姿になるんだ?
 まさかとは思うけど……本物の幽霊?

 ……それもありうる、のか? こんな、ガイコツやゾンビも普通に出てくる剣と魔法のファンタジーな異世界だし。

 その謎の人物は、僕の目の前で『デスジェネラル』×2に『何もしなくていいからね?』と、友達に話すみたいに言っている。
 ホントにボスみたいだ……2体も普通に言う事聞いてるし。

 すると、ふと思い出したような仕草と共に、幽霊(仮)は僕に向き直り……さっきまでと同じ笑顔で、こんなことを提案してきた。

『そうだ! ねえ、君……あー、まだ名前聞いてなかったね。けどまあいいや。あのさ、もしよかったら僕の家にこない?』

「家?」

『そう、家。ああ、まあ、実質この地下空洞全体が家というか、庭みたいなもんだけど……一応、座ってくつろげるスペースくらいはあるんだ。掃除もしてあるし。そこで、長らくご無沙汰な外の世界のこととか聞かせてくれないかなー、って。……ダメ?』

 なんか、前触れもなく唐突に家(?)にお呼ばれした。

 いや、いきなりんなこと言われても……返答に窮するんだけど。

 幽霊の本拠地になんてあんまり行きたいと思わないっていうか……正直怪しい。
 B級映画とかだったら、そのまま生きて帰って来れないパターンじゃない、これ?

『えー、ひどいなあ君。怪しいだなんて……こんな風に目と目を合わせて正面から本音で話してるのに、どうしてそんな風に思うのさ?』

「あんたの全身が半透明で、合わせてる目が赤く『きゅぴーん』光ってたらそりゃ怪しいし、それ以前に怖いんだって普通に」

『他人を外見で判断するのはよくないよ?』

「だからって外見を完全に無視して判断できるわけじゃないでしょ。特にあんたはその決まり文句の例外にしても差し支えなさそうなビジュアルなんだから」

 ……なんか、軽口の応酬。
 ますます幽霊としゃべってる感じしないな。同い年の、ノリのいい同級生としゃべってるみたいな感じだ。ちょっと前世の、中学時代の休み時間とか思い出した。

 ともかく、この幽霊(仮)……ってか、いい加減名前とか知りたいな。呼び方に困る。
 ……そんなもんがあるならだけど。

 そう聞くと幽霊(仮の)、『ああ』と呟いて手を『ポン』と鳴らす。そういえばそうだった、とでも言う風に。

『そっかー、自己紹介まだだったねそういえば。失敗失敗』

 そして、ばつが悪そうに頬をぽりぽりと掻きながら、その幽霊は僕の目を真っ直ぐ見て……特に何も考えずだろう、こう名乗った。

 …………が、

 

『初めまして。えーと…………君の名前も後で教えてね? 僕の名前は、ミシュゲイル・クルーガー。しがない『死霊術士ネクロマンサー』さ。あ、名前長ければ『ミシェル』でいいよ? よろしく』

 

「……えっ?」

 

 ごく普通に、あっさりと告げられたその名前は……僕を驚かせ、きょとんとさせるには十分な……聞き覚えのある、意外な名前だった。

 
『……? どうかした?』

 
 ……『ミシュゲイル・クルーガー』……? この幽霊(仮)の名前が?

 それって確か……半世紀ほど前から行方不明の、僕の9番目の兄さんの名前じゃ……!?

 

 
どうも皆様、ご無沙汰しております。和尚です。

『魔拳のデイドリーマー』の書籍化についてお知らせがあります。

予定としては、4月末の発売となりそうです。

それに伴って、4月中旬……多分20日ごろに書籍化該当部分をまとめ版に差し替える予定ですので、この場を借りてお知らせいたします。

なお、書籍版とWEB版では一部内容が異なる部分があります。

なので、読んだ感じが少し違う部分があるかもしれませんが、WEB版同様楽しんでもらえるように書きあがっていると思いますので、どうぞよろしくお願いします。


WEB版、書籍版共に、今後ともよろしくです。和尚でした。
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