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魔拳のデイドリーマー 作者:和尚

第8章 トライアングル・デスペラード

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第118話 歓喜する天才

今回の話は、一部、説教成分とでも言えばいいのか……クローナの独特(?)な価値観みたいなのが文章中で表現されている内容となっています。

かなり過激というか、極論っぽい部分もある中身ですし、読む人によっては多少不快感を覚えるかもしれませんが……その時はすいません。
ただ作者としては、クローナは天才肌というか、このくらいぶっとんだキャラで突っ走らせたいという思いもあったので、あえてこのまま行きます。

……それとその部分、会話文なのに超長いので若干読みづらいかも……そこもすいません。

では、前置きが長くなりましたが、第118話、どうぞ。
 

 クローナさんから過去話を聞かされた、その日。

 僕らは、案内された部屋に荷物を置いて、各自適当にくつろいだりして過ごした。

 その後ほどなくして、食事だってメイドさん達が呼びに来て……この豪邸に見合った大きさと豪華さの食堂で、クローナさんにご馳走になることに。

 ただメニューは意外にも、高級感漂う格式ばったようなものじゃなく……何かこう、豪華だけど馴染み深さもあるっていうか、テーブルマナーとかあんまり気にしなくてもよさそうっていうか……ぶっちゃけると、がっつけるラインナップ。
 サイコロステーキとか、サンドイッチとか、パスタとかだ。

 というのも、クローナさん基本的にそういうの嫌いで、『食えりゃいい』ってスタンスらしく、テーブルマナーとかめんどくさいだけなので、さっと食べれるものを中心に出すのがこの家の食事らしい。

 僕としては嬉しい限りだし、何よりすんごく美味しかったので文句などあるはずもない。

 おまけに、さらに嬉しいことに、アルバ用の食事まで用意してくれてた。魔力持ちの魔物の肉だっていう材料を使った、肉団子みたいなのを。アルバも嬉しそうに鳴いてた。

 そんな感じで、何事もなくその日の夜はふけていったんだけども、

 もうそろそろ寝ようかな、って段階になって……明日の朝練どうしよう、とふと思った。

 『邪香猫』メンバーの最早日課になっている朝練。クエストとかで『ウォルカ』を離れたりしても、行った先の町や村の外れとかで毎日やってることなんだけど……今回滞在しているここはさすがにちょっと、勝手が違うというか何というか。

 外出てやろうにも、ここはAAの危険区。Aランク以上の魔物も普通に出てくる。

 僕やシェリーさん、ナナさんあたりならともかく……他3人はちょっと、訓練のために外に出るってのは、実力的な意味で危険だろう。

 なので、まあ最悪できなくても仕方ないかとは思いつつ、一応クローナさんに聞いてみようと思って、メイドさんに案内してもらってクローナさんの部屋に行ってみた。
 近くに、そういう訓練とかに使えそうな空き地とかないかとか。

 ノックしたら『いいぞー』って声が返ってきたので、静かにドアを開けて中にはいると、そこには……

 
「だから何でまた全裸なんですかっ!? お風呂上がり!?」

「いや? 俺寝る時基本何も着ねーし」

 
 あっさりとそんなことを言ってのけるクローナさんは、今度は白衣すら着ておらず、完全に生まれたままの姿で部屋の中を闊歩していた。

 いや、何でその格好で『いいぞー』って返事を返したんだあんた!? せめて服着るとか……一応僕も男なんだから。

「バーカ、ガキに見られていちいち恥ずかしがるほどこちとら初心じゃねーっつの」

「いや、僕もう今年で一応16なんですけど……」

「それがどうした、こちとら今年548だぞ。それにだ、仮にてめーが煩悩を抑えきれなくなって俺に襲い掛かったとして……勝てると思ってんのか俺に?」

「いえ、無理です」

「わかってんじゃねーか。じゃ問題ねーだろ。もしそうなったら返り討ちにしてやるから安心しとけマセガキ」

 言いながらも、一応気を使ってくれたらしいクローナさんは、クローゼットから出した着心地よさそうなバスローブを出して着てくれた。

 ほっ、よかった……これで視線逸らしたまましゃべる必要がなくなった……
 下着はつけてもらってないけど、まあそこは仕方ないだろう。この際。

「ふー……しかしまあ、似てる似てるって言われつつ、リリンの個性が一番際立ってる部分で似てねーのな? ストイックというか、初心というか……」

「母が、性に関して奔放だった、って話ですか?」

「そーゆーことだ。まあ、そこにもちょっと裏話があったりするんだが、それは今関係ねーから置いといて……正直、てっきりお仲間の女共は全員お手つきかと思ってたんだよ」

「……僕、そんなにスケベっていうか、節操ないように見えますかね?」

 結構いろんな人から言われたり、冷やかされたりするんだけど……そろそろ本気で気になりだし始めている僕である。

「や、そういうわけじゃねーが……ま、いいや。で、何だって用件?」

「ああ、はい、実は……」

 かくかくしかじか。

「なるほどな……」

 するとクローナさん、少し考えて……何だか何かを思いついたようなリアクションと共に、

「……よし、わかった。ホントなら『んなもん外で勝手にやれ』つって放っぽりだすところだが……今回は特別に、ちょうどいい部屋があるから使わせてやるよ。明日の朝もっぺんこの部屋に来い、案内してやっから」

 

 ……というようなやり取りが昨日あって……その翌日。
 つまり、今日。

 言われたとおりに、クローナさんの部屋の前に集合した僕らは……彼女に案内され、地下のある部屋につれて来られていた。

 一言で言うと……滅茶苦茶広い。
 具体的にいうと……陸上競技場がすっぽり入ってもお釣りが来そうなくらいだ。

 縦横それぞれ300m以上、高さも数十mは軽くありそうなその部屋は……まるで超大型の体育館のごとし。

 ……城の面積から考えてもちょっと不自然な広さなんだけど……魔法で空間拡張でもしてるんだろうか?

 そしてその部屋、床も壁も天井も、全てが緑色のタイルみたいな何かで覆われていて……しかもちょっと叩いてみた感じ、かなり頑丈であることがわかった。

 クローナさん曰く、ここは運動場という名の訓練施設らしく、どれだけ暴れても平気なように、超がつくほど頑丈に作られているとのこと。
 ここを、訓練用に貸し出してくれるらしい。

 ありがたい申し出なので、僕らは遠慮なくお言葉に甘えさせてもらい、そこでいつもの『特訓』をやらせてもらうことにした。

 
 ……それが……

 
「はい、それじゃあ皆さん注も~く! これより、クローナ対ミナト君の模擬戦を始めまーす」

 
 その体育館(?)の中央で向かい合う、僕とクローナさん。
 そして、その間に立って嬉々として司会進行&審判役をやっているアイリーンさん。

 ……どうしてこうなった?

 
 ☆☆☆

 
 いや、最初のうちは普通に『訓練』やってたんだよ、僕ら。

 エルクやザリー、ミュウちゃんの基礎訓練とか、シェリーさんやナナさんとの戦闘訓練とか、全員一緒になっての『否常識オリジナル魔法』の訓練とか。

 ただ、僕はいつもの装備がないから、素手でだけど。退院してから、ずっと。
 普通の金属製の装備じゃ、僕の戦い方には耐え切れないのである。

 前に試してみたんだけど、『マジックアーツ』で炎や雷を纏ったら悲惨なことになるだろうなとは思ってたけど……普通の体術でも、動きやら何やらが無茶無茶なせいで、すぐにベコベコにへこんで使い物にならなくなったし。

 まあ、どっちみち僕の皮膚や筋肉は鎧なんぞよりよっぽど頑丈なので、最近は素手でやってたんだけど……ありがたいことに、訓練前にクローナさんが『これ使え』って課してくれたのが……なんと、僕のと同じ『ジョーカーメタル』の装備。

 それ借りて、ありがたく使わせてもらって特訓やってたんだけど……それが一通り終わったタイミングで、僕に十分体力が残ってることを確認したクローナさんから、声がかかった。

 

 ……で、現在に至る。

 運動場の中央で向かい合う、僕とクローナさん。

 クローナさんは、手首を回したり肩を回したりして、念入りに準備運動を行っている。

 服装は……幸い、全裸ではない。

 ただし、露出は多い……というか、戦闘服には到底見えない。
 ノースリーブのシャツに、丈のほとんどないジーンズ地の短パン。何ていうか……夏用の部屋着みたいだ。パッと見、模擬戦とはいえこれから戦う者の服装じゃあない。

 ……ていうか、ホントに部屋着じゃないのかアレ?

 それはそうと、どうやらクローナさんは、依頼の1つである『僕の体の分析』に際し、実際に『マジックアーツ』を使っているところを見るためにこの運動場を使わせて、そこでの『特訓』の様子を終始観察してたらしい。

 基礎訓練から『否常識魔法』まで、もちろん僕が『マジックアーツ』を使うところも一通り観察したクローナさんは、最後に僕を呼んで……こうなったわけだ。

「えっと……実際に戦ってみて、僕の『マジックアーツ』を見極める、と?」

「あと、テメー自身の戦い方その他もだ。コレが一番手っ取り早そうだしな」

 ぐぐっ、と伸びをして準備運動を終えたクローナさんは、目線でアイリーンさんに合図をし、アイリーンさんもそれに首肯で答えた。
 さすが昔なじみ、一瞬で全てが伝わってる。

「つーわけだ小僧。本気で来い。あと、お前のオリジナル魔法、使える分でかまわねーからなるたけ全部使え」

「はあ、わかりました……えっと、クローナさん、装備とかは?」

「いらねーよ。ガキの相手なんざ素手で十分だ」

 くいっくいっ、と、手のひらを上にして『かかってこい』のジェスチャー。

 ……ホントに余裕、って感じだな、クローナさん。ご丁寧に挑発まで。

 熱血系の主人公なら、ここで舐められきってることに怒って飛び掛っていく感じなのかもしれないが……僕はというと、冷静なままでいることが出来た。

 なぜかっていうと……そういうのばっかりだったからだ。半年前まで。

 そのことをクローナさんも多少なり感じたらしく、ちょっと意外そうにして、

「何だ、大概の男はこういうこと言うとムキになって突っかかって来るんだが……冷静だな?」

「まあ……実際、そんな感じの人に半年前までしごかれてたので」

「あー、なる。強かったろ、お前の母ちゃん」

「はい。通算で確か……114975戦全敗ですね。家出る前に確認して来ましたんで」

「……数えてたのか、それ?」

「いや、何か母さんが変なマジックアイテム使って記録してたんですよ」

「……あ、それ多分俺が作った奴だ」

「マジですか」

 聞いてはいたけど、武器とか以外にも、マジックアイテムの捜索もできるらしいクローナさん。その上医学知識なんかも博識だってんだから、ホントに多芸だよなあ。

「はいはい、じゃ、準備運動も済んだみたいだし、用意はいいね……はじめ!」

 と、
 アイリーンさんの号令と共に、いつもの感じで臨戦態勢に……入った瞬間、

 
 ずしっ、と、

 
「「「――っ!!」」」

 
 運動場全体の空気が、重くなったような感覚。
 明らかにこの部屋は、さっきまでとは何かが違っていた。

 ベンチという名の観客席にまで伝わっているらしいそれに……エルク達は驚いて引きつっており、アイリーンさんは……何だか昔を懐かしむような顔をしていた。

 そして、そのプレッシャーの根源は……今正に、僕の目の前で臨戦態勢に入っている、吸血鬼美女であることは、言うまでも無い。

 近所のコンビニにでも行くかのような軽装の彼女から放たれる威圧感は、巨大な龍か何かを前にしているかのような……言葉に表すのも難しい、圧倒的なものだった。
 ……多分これでも、全力の殺気じゃないんだろうけど。

 特に構えも何もとっていないクローナさんは、軽く深呼吸すると、三白眼で目つきの悪い視線だけをこっちに向けて、

「……殺す気で来な、小僧。力を見てやる」

 ……あー……久しぶりだな、この感覚。
 母さんにかかっていく時も、こんな感じだったっけ。

 とりあえず、胸を借りるつもりで……けど、情けない姿なんかさらさないように、全力でぶつかっていきますか。

 
 ☆☆☆

 
 まるで本物の戦場のような、緊迫した空気。

 最初に動いたのは……ミナトだった。

 床が砕けんばかりの勢いで踏み込み、クローナのみぞおちめがけて全力・全速力の拳を打ち込み……しかし、

 その拳は、クローナによって片手で受け止められた。

 着弾直前に割り込んできた手のひらによって、当たり前のように止められた腕には、分厚い岩盤すら粉々にするだけの魔力がこめられていたが……それを止めたクローナの手は、赤くなってすらいない。

 ミナト自身も、ベンチで見ていたエルクたちも……全員が驚愕の視線を向ける。

 が、ミナトの再起動は早かった。

 打ち込んだその拳をつかまれるより前に、素早く後ろに跳びすさる。
 そして間髪入れず、フェイント混じりのステップで近づくと、正面から行くと見せかけて……クローナの後ろに回りこんだ。

 そのまま、後頭部狙いで放ったハイキックは……しかしまたしても防がれる。
 素早く体をひねったクローナの、添えるように差し出された右手で。

 そして今度は、クローナはミナトが下がる前にその足をつかみ……

「よっ、と」

「い゛っ――!?」

 そのまま、軽く腕を振るような挙動で、ミナトを……天井まで投げ飛ばした。

 その軽い挙動とは裏腹に、恐るべき威力で繰り出されたらしい今の一投で……ミナトはというと、轟音を立てて天井に激突し、マンガか何かのように『大』の字にめり込んでいた。

「おらー、さっさと降りて来い。今のじゃ大したダメージもねーだろ」

「いや、そうでもないんですけど……」

 ずぼっ、と天井から体を抜き取るミナトは、そうはいいつつ……どこか怪我している様子はなかった。
 出血はもちろん、アザなども特に見られない。

 常人なら『びちゃっ』とつぶれて色々と危険なものが飛び出る威力だったのだが。

「よい……しょっ!」

 天井から抜け出すなり、そのまま天井を蹴って勢いよく落下するミナト。

 着地すると同時に床を蹴り、クローナの懐に入り……今度は大振りの攻撃ではなく、ジャブなどの小回りの聞く攻撃でのラッシュを叩き込む。

 上下左右からクローナに襲いかかる、ミナトの拳。
 ジャブ1つとっても、一発一発が岩を砕く威力と矢のような速さを持ち、放たれるたびに空を切る音が響くそれを……クローナはしかし、右腕一本で防ぎ、さばききっていた。

 時にフェイントも混ざるのだが、同じく目にも留まらぬ速さで繰り出されるそれにも一切引っかからず、自分に当たる攻撃のみに反応し、逸らし、受け止め、叩き落す。

 横で見ているエルクたちには、ミナトの手が4、5本に見え、それをさばくクローナの右手もそのくらいに増えて見えている。
 そんな、刹那と呼ぶのもおこがましそうな攻防の中で……

「……んー、スピードやパワーは上々、技のキレも、リリンが鍛えただけあってなかなかだな。纏ってる魔力もいい感じだし……っと」

 クローナは余裕綽々。普通の口調で、そんな批評を呟いていた。

 その直後、ミナトはフェイントから一瞬でクローナの背後に回りこみ……

 そこに割り込むように飛んできた、クローナの後ろ回し蹴りで、壁まで吹き飛んだ。

「が……まだ甘ェな、色々と」

 細身の美脚を振りぬいた形で、ぽつりと呟くクローナ。

 その足の向いている先で、またしても轟音と共に壁に激突するミナト。

 ベンチのエルク達は、信じられないものを見るかのような目で、その両者を交互に見……開いた口がふさがらない状態だった。

 それも、無理のないことだろう。
 今まで、彼女達の中で『最強』と言っていい存在だった少年が……それより背も低く、体も細い、見た目か弱そうな女性を相手に、完全に赤子扱いなのだから。

 そして、

(やれやれ、相変わらず容赦ないなクローナは…………ん?)

 大人気ないまでにミナトを圧倒する、かつての仲間に、苦笑していたアイリーンは……何かに気付いたように、一瞬だけ、きょとんとしたような表情になった。

 クローナが、振りぬいた足を地面に戻し、ミナトが飛んでいった先を一瞥した……その瞬間に、

 
 ……友のその目が、妙にぎらついた、楽しそうな光を帯びていたような気がして。

 
 ☆☆☆

 
 えーと、
 結論から言うと……完敗。

 いや、そもそもあれが果たして戦いになってたのかって聞かれると、ちょっと微妙なもんがあるんだけども。

 殴っても受け止められるし、連打は片手で裁かれるし……

 フェイントは全然通じないし、向こうの攻撃は反応できないほど速いし……

 天井まで投げ飛ばされるし、壁まで蹴り飛ばされるし……

 けど、そんなのはまだ序の口で……その後『フォルムチェンジ』とか、最後には短時間だけ『ダークジョーカー』まで使ったのに……ものの見事に完封された。

 さすがは『女楼蜘蛛』……マジで本気出して戦ったのに、アザ一つつけらんなかった。

 15分ほど戦って、結構ボロボロになった僕は……ただいま、エルクの膝枕で介抱してもらってる最中です。

「派手にやられたわねー……大丈夫?」

「うん、大丈夫……体中痛いけど、午前中には治ってると思うから」

「……常人の致命傷クラスの攻撃結構食らってなかったっけ?」

 うん、ざっと100回くらいは。

 特に、最後の最後に『ダークジョーカー』で戦ってたときに、カウンター気味に叩き込まれた膝蹴りが強烈だったな……。

 食らった瞬間にもう意識途切れちゃったんだけど……エルクに聞いたら、そのあと僕、そのまま天井までふっ飛んで激突して落ちてきて……しかしそれでも勢い殺しきれなくて、跳ね返ってまた天井までふっ飛んで、最終的にめり込んだまま気絶してたらしい。

 その後、クローナさんが引っ張り出して運んできてくれたそうだ。

 いや、顎割れたかと思ったよ……脳震盪なんて久しぶりだったな。

 しかしまあ、わかっちゃいたけど、見事なまでに手も足も出なかったなあ……完全に遊ばれたっていうか、好きなようにされたっていうか。
 つくづく、母さんとの訓練を思い出すひと時だった。

「私達皆、声も出なかったわよ。まさかあんたが、あそこまで一方的にやられるなんてね」

「そうそう、もうホントにびっくりしちゃった……上には上がいるのね、この世界」

 と、仰向けの僕の視界に、横からシェリーさんが入ってきた。
 長い髪が垂れてきて、顔に当たってちょっとくすぐったい。

「普段からミナト君の強さ見ててさあ、何だかんだ言ってミナト君が最強なんじゃないかなー、とか私思ってたんだけど……いるのね、ミナト君でも手も足も出ない相手なんて」

「そりゃいるって……まだまだだよ、僕なんて。ナナさんあたりは……身近にドレーク兄さんとかがいたわけだし、わかるでしょそのへん?」

「あ、いえ……ドレーク総帥が本気を出されるような事態には、さすがに遭遇したことは無いので……」

 あー、なるほど。そりゃそうか。
 あの『兄弟最強』たる兄が本気を出す機会なんて、そうそうないだろうしなあ。

「あわよくば何か勉強になれば、とか思って見学してたんだけど……レベルが違いすぎて何にも参考にならなかったわね」

「ですねー……まず動きが見えませんでした。お兄さんが蹴られて飛んだのか自分で飛んだのかもわかりませんでしたよ」

 なんか自嘲気味にそう言うエルクとミュウちゃんだけど、おかしいのは多分、いや確実に僕らの闘いの方だと思うので、落ち込む必要は無いと思う。

 無論、それはエルクたちもわかってるんだろうけど、なぜか脱力してしまうらしい。
 なんか申し訳ない。理由もなく。

 最終的に、ザリーが『僕らに出来るのはミナト君レベルの敵とは戦わない、ってことだけだね』という至言で閉めたところで、僕が意識を取り戻したことに気付いたクローナさんがつかつかと近寄ってきた。

「おー起きたか。どうだ? 気分は」

「あー、はい。えっと……なんか懐かしかったです」

「どんな感想だそれは」

 いや、何度も言うけど、母さんとの模擬戦が正にあんな感じだったから。
 どんだけ必死になっても手も足も出ない所とか。

 ただまあ、母さんは僕を『育てる』部分を主眼に置いてたから、もうちょっと手加減してくれてたというか……あそこまで容赦なく突っぱねる感じじゃなかったけど。

 わざと隙を作って、そこを狙えば攻撃当てられるくらいはやってくれてたし。

 ……まあ、当たろうが防がれようがダメージはろくに通らなかったけどさ。

 と、若干昔を懐かしんでいた僕は……クローナさんが、何やらクリップボードみたいなものを脇に挟んで持っていることに気付いた。

 それが何かを聞くより先に、クローナさんが口を開く。
 内容は……さっきの戦いの講評だった。

 基礎的な身体能力や体術の錬度は、一応及第点だとか、
 魔力コントロールも、中々のレベルだけどまだ成長の余地があるとか、
 オリジナル魔法は多彩で面白かったけど、全体的に術式が乱雑なのが多いとか、

 ……ああ、そういや、言われたとおり模擬戦の中で、戦闘用のオリジナル魔法もほぼ全部使ったな。
 『マジックアーツ』に『フォルムチェンジ』、『エレキャリバー』に『ダークジョーカー』……その他諸々……まあ、ことごとく防がれたけど。

 ……そういやその時、何だかちょこちょこクローナさんが、変な感じだったな?

 何というか……目がギラッと光って見えたというか、妙に楽しそうだったというか……笑ってるように見えたことも何度かあったし。

 そんなことを思い出していると、一通り講評を終えたクローナさんが、こんなことを聞いてきた。

「……しっかしよ、小僧?」

「はい?」

「オメー、面白い魔法作るな? さっきあらかた見せてもらったが……特にほら、この切り刻む電撃なんか、斬新で」

 そう言うと、おもむろにクローナさんは、両手の人差し指同士を目の前で向かい合わせ……その間に何と、黒い電撃を発生させた。

 え!? ちょ、それってまさか……!?

「あ、あの……クローナさん!? それ……」

「ああ、そうだ。お前がさっき使ってた技さ。『エレキャリバー』っつったか?」

「何でクローナさんが!? え、見ただけでどんな技かわかったんですか!?」

「うんにゃ、さすがにそれは無理。けど……おめーが気絶してる間に、おめーの嫁に許可とってちょっとコレ借りたんだよ」

 『嫁』が誰なのかはまあ……考えるまでもない。

 そんなことを言いながら、クローナさんが僕に、手に持っている何かもぴらぴらと見せて……って、あれ!? それ、僕のオリジナル魔法のネタ帳!?
 リュックの中に入れといたのに……

「……てか、勝手に漁って取り出してから『別にいいだろ』って言ってたよねお前?」

 しかも事後承諾かよ。

 アイリーンさんの暴露で明らかになった横行を経て、どうやら無断で僕のリュックから取り出したネタ帳をもとに『エレキャリバー』を再現したらしいクローナさんは、それをこっちに投げてよこすと、

「さて……中々面白いもんを考えてるみてーだな、小僧。けど……」

 そこで一旦言葉を切って、こんなことを言い出した。

「俺に言わせりゃ、それだけにもったいねえなあ……」

「はい? もったいない……っていうと?」

「いや、だってよ……」

 そう言ってニヤリと笑うクローナさん。

 そしておもむろに、明後日の方向に向けて手を突き出すと……次の瞬間、

 
 ――バリリリィッ、と、

 
 轟音と共に、その手のひらから、巨大な『エレキャリバー』の黒い電撃が飛び出した。

 しかもそれは、放電後に霧散したりせず、そこにとどまり……徐々に形を変化させていく。

 最終的に……なんとクローナさんの手元には、『エレキャリバー』で刀身が形作られた、電気の剣が形成されてしまった。

 しかも、漂ってくる魔力の感じからして……その品質(?)は損なわれたりしていない。というか、圧縮されてるみたいに……むしろ密度も威力も上がってるみたいだ。

 あれを一振りすれば、その軌道上の物体を粉微塵に破砕できるだろう。

 あっけに取られる僕らの目の前で……次の瞬間、更にとんでもないことが起きた。

 手の中に会った黒い雷剣が、眼にも留まらぬ速度で射出された。
 クローナさん、一切動いてないにも関わらず。

 剣は……数十m先に刺さり、炸裂し……後には、半径数mほどがキレイに消滅して、クレーターのような痕跡が残っていた。

 ……え、何今の?

「ほらな? こんな風に、まだまだ改良できる所がいくらでもあるんだからよ。それなのにノート見てみりゃ、まるでアレで完成したみたいに書いてあんだぜ? もったいねーだろどう考えても? 俺はむしろ、あれを見て余計に探究心がうずいたね」

 そう言って……驚いて、自分でも気付かないうちに膝枕から起き上がっていた僕の隣(エルクとは反対側)に腰掛けるクローナさん。

 その様子を見ていたアイリーンさんが……笑顔は崩さないものの、珍しく眉をひそめて彼女に尋ねた。

「クローナ? ……どうかしたのかい、君?」

「んあ? 何がだよ、アイリーン?」

「いや……思えばさっきからなんだけど……何だか君が、いつになく楽しそうというか、嬉しそうにしているように見えてね。そんなに彼のオリジナル魔法は面白かった?」

「いや? 面白ェのは魔法じゃねえよ……このガキ自身だ」

「……?」

 今度は、アイリーンさんの顔から笑みすら消えた。

 それに構わず、今度はクローナさんは僕の方に向き直ると、僕の目を正面から見据えて……至近距離に顔を近づけて、

「さて、と。ひとつ聞きてーんだがな、小僧。お前……こういう風に自分のオリジナルの魔法作ったりするの、楽しいか?」

 唐突に、そんな質問を。

「……? まあ、楽しいですね、すごく」

「使うのと作るの、どっちが楽しい?」

「どっちも楽しいです。使うのも、作るのも……あげるのも」

「こいつらにか?」

 と、『邪香猫』メンバーに視線を向けてたずねられたので、首肯。

「ほー……じゃ、そういうの作るに際して、非難されたこととかはねーか? 危険だとか、むやみにそんなもの作るべきじゃないとか、何かあったら責任持てるのかとか」

「あーまあ、時々ありますけど……」

 むしろ、洋館時代から……その手のことは、母さんに口をすっぱくして注意されてきた。

 最近はエルク他、『邪香猫』メンバーや、ノエル姉さんあたりからも時々言われてる。少しは自重しろ、って。

 わかっちゃいたけど……料理でもするかのように新しい『魔法』を気軽に作り出す僕のこのやり方は、どこへ行っても驚かれ、呆れられるもののようだ。

 そして、それを諌め、心配してくれる人の気持ちも……よくわかる。
 懸念すべき面倒ごとに事欠かないからだ。こんな風に気軽に新しい魔法を考えて作り出せる、僕の能力も……そして、作った魔法そのものも。

 今は、この実力だけで色んな所から勧誘を受けている僕だけど、このことが知れれば……さらに面倒なことになるだろう。

 母さんから聞いた感じ、新しい魔法の研究・開発はどこの国でも力を入れている分野で、優秀な研究者、もしくはそれになりうる人材はどこも獲得に貪欲。

 作った魔法に関しても、その術式なんかの秘密を知るために、色々なところが貪欲。
 その動機は、実際に使うためだったり、研究して更なる進歩をめざすためだったり。

 そして作った魔法が、誰にどんな使われ方をするかだってわからない。
 生活を便利にするために作った魔法が、戦争に使われて多くの人の命を奪うとか、そういう結果を呼び込まないとも限らないわけだし。

 特に最後の例、
 前世の話を例に持ち出してみれば……そんなものはいくつも出てくる。

 例えば『ダイナマイト』。
 もともと土木工事とかにメインで使われてた便利な道具だったそれも……少しの刺激では爆発しないことをいいことに、これ幸いと戦争に使われるようになった。

 近代的な生活に欠かせない『電気』にしても、夕飯の食卓を照らすことも出来れば、電気椅子に人間を座らせて処刑することも出来る。

 それに、これらのような大げさな例にしなくても……どこにでもある包丁にしたって、野菜を切れば普通の調理器具だし、人を斬れば立派な凶器だ。

 結局の所……どんな道具、どんな技術も……使い方次第、使う人次第で、どうとでも形を変えられるのである。

 何かを『作り出す』立場の人は、常にそういうトラブルに巻き込まれる危険と隣りあわせだっていうことを理解しなければならない。

 クローナさんの今の言葉が示す『責任』ってのは……つまりはそういう意味だ。

 
 ……けど、

 その答えを……僕はだいぶ前に出している。

 
「それは、もちろんありましたけど……もう割り切ってますから、僕」

「……ほぉ?」

 
 たしかに、自分が作ったものはどんな使われ方をするかなんてのはわからないし、どこかで犯罪に使われたりとか、そういうことを考えると……少し怖くはある。

 けど……開き直りにも近い言い方だけど、僕はこう思っている。

 

 そこまで面倒みたり、責任背負い込む必要、別に無いよね? と。

 

 身の回りのもの、何でも使い方次第で凶器になりうる……コレだけ聞くと物騒に聞こえるけど、これって別に、特別でもなんでもない。至極当たり前のことだろう。

 包丁作った人が、作った包丁が殺人に使われたからって、何か罪になるだろうか?

 自動車販売のセールスマンが、売った車が事故を起こして人が死ぬかもとか考えて販売を自粛したりするだろうか?

 猟銃。猟友会の人が増えた獣を間引くことも出来るし、殺人に使える凶器にもなる。

 パソコン。サラリーマンの力強い味方にも、匿名で他人を誹謗中傷する凶器にもなる。

 スタンガン。か弱い女性の護身用武器にもなるし、誘拐の時に便利な凶器にもなる。

 ……とまあ、一部例外を除けば、道具なんて使う人次第でどうとでも化ける。

 どんな結果になろうが……その『結果』を引き起こしたのは『使う人』。
 危ないこと、悪いことに使わなきゃいいだけの話なのである。誰がどこでどんな使い方をしても100%安全な道具なんて、多分この世にないだろう。

 麺棒だって耳に突っ込めば鼓膜を破れるし、こんにゃくだって喉に詰まれば窒息する。
 道具はどんな使い方をしても、それによる当然の結果しか出さない。故意にせよ過失にせよ、不測の事態を引き起こすのはいつも人間だ。

 それにもちろん僕も、本当に必要な自重なら普通にする。例えば、使ったら世界が滅びかねないような危険な魔法とかは……さすがに作るつもりとかない。

 そもそも僕が魔法を作るのは、自分の好奇心を満たすためと、親しい誰かの役に立てばいいと思って、ってのが主な理由だし……見知らぬ誰かの役に立つつもりも、見知らぬ誰かを害するつもりもない。そんな目的で他人に魔法を譲り渡すことだって多分ない。

 もしかしたら、僕が開発した何かの魔法をコピーして使う奴がいるかも知れないけど、そしてその使用用途が世間一般的に『悪用』と言われるものかも知れないけど、

 だからって僕に責任とか……まあ、全くとは言わないけど、追求されるのはお門違いだ。
 僕が知らない所で使われた魔法に対してまで、責任なんて持てないし。

 基本、僕は僕のために魔法を作り、僕のために使う。
 その時、動機は見栄かもしれないし、愛情かもしれない。おせっかいかも知れないし、ただの好奇心かもしれない。そしてそれが何だろうと、何の言い訳もする気は無い。

 だけどその代わりに、必要以上に自重するつもりも、要りもしない責任感や罪悪感を背負い込むつもりも一切無い。

 それで自分に何か返ってきたら、それは自業自得だ。その場合も言い訳はしない。
 ただし、甘んじてその被害を受けるつもりも無い。その矛先が自分だった場合はもちろん、大切な仲間や家族だったりするなら、全力でその『危害』を排除する。

 だいぶ前に、僕はそう決めた。

 そんなもんだ、世界なんて。
 前世も、この異世界も……このへんは変わらない。

 ……なんかカッコつけちゃった気がしなくもないけど、そういうわけで……
 結論としては、僕はあくまで僕のために、楽しく魔法を作って使います。一応、良識に持ちづいて最低限必要な自重はするつもりです。以上。

 
 ……というようなことを簡単に話したら、クローナさんはしばらく僕の目をじっと見て……数秒後、

 ニィッ、と、
 何というか……獰猛というか、凶悪な笑みを浮かべた。

 真っ直ぐ僕の目を見てくるその瞳には……今度こそ間違いなく、明確なある感情が見て取れた。
 隠しきれない……否、ここまできたら隠す気すらなさそうな……『歓喜』の色が。

 何というか……まるで、獲物を前にした肉食獣のような……大好きなオモチャを前にした子供のような……そんな雰囲気だ。

 ……横から、意味ありげな視線を向けてくるエルクはとりあえず無視して、
 僕がクローナさんの真意を測りかねていると……そのクローナさんは、喉の辺りから『くっくっくっ……』と、笑いがこみ上げて来ているような音をさせていた。

「いいねえ、お前……中々に俺好みのガキじゃねーか」

「……はい?」

「長生きはしてみるもんだなおい。最近……は知らねーが、150年前なんざ威勢がいいだけのアホか妙に正義感が強いバカしかいなかったが……」

 ……やっぱし要領を得ないけど……とりあえず、なぜか彼女が喜んでるらしいことは伝わってくる。

 すると、その様子を見ていたアイリーンさんが、何かに気付いた様子で……

「……! おい、クローナ? 君、何を考えてる? まさか……」

「黙ってろアイリーン、横から口を出すな、こいつは俺の獲物だ」

「は?」

 獲物? 獲物って何!?

 それには答えず、クローナさんはぐわし、と僕の肩をつかんで、

「小僧……いや、ミナト・キャドリーユ、よく聞け」

「……何でしょ?」

「俺はな……自分で言うのもなんだが、『女楼蜘蛛』の誰よりも、勤勉だった」

 いきなり何?

「いついかなる時も決して研鑽を怠らず、常に自分の力を高めるべく努力した。現状に満足せず、今望めるだけの高みを目指して、ひたすらに邁進し続けた。貪欲に知識を求め、それを使う機会に恵まれれば遺憾なく発揮し、それによって人々が少しでも笑顔になれるように、戦場以外でも戦ってきた…………っていう美談がいつの間にか勝手に出来てた」

 なんじゃそら。

「無論、実際はそんなこたぁねぇ。俺が戦ってきたのも、色々なことを学んできたのも、そしてその知識と力を使ってきたのも……いつだって俺と、俺が個人的に好きなやつらのためだ。それ以外の何でもねえし、それを間違ってたとも思ってねえ。何ならこれからもそうするつもりだが、それに何のためらいもねえ」

 そこまで言うと、なぜかクローナさん、ベンチの上に上がって立つ。行儀悪し。
 腕組んで胸張って仁王立ちして、見下ろしてくる。……パンツ見えそう。

「サービスだ、見たきゃ見とけ。いいか小僧、結局世の中って奴は、『持ってる奴』が何かと叩かれるようにできてんだ。何かを作っても、金を稼いでも、力を示しても……まず第一に『もってない奴』のことを考えるのが正しくて、『持ってる奴』にはむしろ損をさせるようなことが美談として平気でまかり通る。自重しろだの、周りを見ろだのってな」

 けどな、と続けるクローナさん。

「そんなもんは詭弁以外の何でもねえ。『持ってる奴』は『持ってる奴』で、血反吐吐く思いで取り組んで出した結果かも知れねえし、色んなもんを犠牲にしてたどり着いた境地かもしれねえ。『魔法』を作る研究者にゃ、そんなバックグラウンド持ってる奴はざらにいる。なのに周囲はその結果だけ見て、金を稼げば分け与えろと、力があれば人のために使えとさえずり、喚き、そしていざそこに問題が生まれれば、嬉々として糾弾する。わかるか? 人間なんて所詮そんなもんだ。自分の利益のために必死になり、他人の利益のおこぼれに預かろうと必死になる。そのために正義だの美徳だのと、理屈という名の駄々をこねる!

 もっとも俺やお前みてーなのは、別に血反吐なんざはかなくても、呼吸でもするような感覚で結果を出せる……しかしそれは罪じゃねえし、そこに自重なんてものもいらねえ。ただ、最低限『成す者』『作る者』としての覚悟や自覚ってもんを持ってさえいればな……それさえきちんと腹に据えてりゃ、誰に何を言われる筋合いもねえ!

 いいか小僧! 探求は罪じゃねえ! 独走は悪じゃねえ! 凡人が1年かかる道のりを天才が1秒で踏破したって、それはただの結果だ……ズルくもなけりゃ卑怯でもねえ! 誰が何を生み出して、それがどこでどう使われて、どんな事態が起きようが、使ったのが人間である以上、そこにあるのは『当然の結果』以外の何ものでもねえ! 当たり前だ、俺達はただ、できることをやってるだけなんだからな!」

 …………

 過激で苛烈な言葉が満載の、400時詰め原稿用紙1枚でも足りなそうな、量的にも中身的にもずっしり来るクローナさんのお話が、ようやく終わった。
 ある意味いきなりだったから、僕ら全員唖然としてたけど……不思議とその言葉は、一言一句響いたというか、心にしみこんだ感じがした。

 その状態から僕ら一同回復できないでいると、未だ獰猛な笑みを崩さないクローナさんは、からかうような口調で、

「くくく……どうした小僧? 先達の言葉がそんなにも感動的だったか?」

「あー、いやあ……僕今、説教されたんですかね? それとも、激励されたんですかね?」

「好きなように受け取ってくれてかまわねーよ。ああ、もう1つ付け足させてもらうなら……何やろーと自由だが、自分を心配してくれる周りの奴らを悲しませるようなことだけはないよーにしとけ。それで十分だ。そして……」

 そこまで言って、クローナさんは再びベンチに座る。
 しかも胡坐で、体ごとこっちを向いて……また僕の顔を正面から見据える。

 そしてなぜか、握手を求めるように手を差し出してきて、

「今のが俺の本音であり持論なわけだが……もし、今の話を聴いて、お前が嫌悪感を抱いたりとか、自分の主義に反するとか、そういうことを思わなかったんであれば……1つ、俺からお前に提案したいことがある……」

 一拍、

 

「ミナト・キャドリーユ。お前……俺の弟子になれ!」

 
 
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