イギリスがいま、EUを離脱するかどうかの瀬戸際に立っています。
来る6月23日に国民投票が行われ、そこで離脱派の得票数が上回れば、イギリスがEUを離脱する可能性がぐっと高くなります。
この問題*1ですが、まだ国民投票の日が先だからか、遠い国の話だからなのか、なかなか日本では関心が高くないように感じます。「イギリス、EU離脱するってよ」てな感じで他人事のように思っている人も少なくないのではないでしょうか。
しかしながら、イギリスがEUを離脱すれば、当然ながら日本にも大きな影響があります。だからこそ、我々は6月23日の国民投票の結果を、注意深く見守らなければならないのです。
そこで今回は、そもそもなぜイギリスはEUを離脱しようとしているのか、そして離脱した場合にどのような影響があるのか、をできるだけやさしい言葉を使ってわかりやすく書いてみたいと思います。
なぜイギリスはEUを離脱したいのか?
そもそもイギリスは、経済的なメリットのあるEUをどうして自ら抜けようとしているのでしょうか。
ジョンソン前ロンドン市長をはじめとする離脱派の最も端的な主張としては、表向きには「国としての主導権を回復する」と標榜していますが、実際のメッセージとしては「これ以上移民・難民を受け入れられない」ということです。
何年も前から議論されているように、ヨーロッパではほとんどの国において、シリアやイラク、北アフリカからの難民受け入れ問題が生じています。
その中でも特に、難民にとってイギリスは人気国です。それはなぜか?イギリスの社会保障が手厚いからです。具体的に言うと、正式な手続きを踏んで難民として受け入れられれば、福祉手当という金銭が与えられたり、無料で医療施設を利用できたり、確実に住居が与えられます。みんな「イギリスは素晴らしい」と言うわけですね。
戦時国からの難民だけでなく、中国などからの移民も非常に多くなってきており、問題になっています。
とりあえずイギリスに行けばなんとかなる。そうやって移民・難民はイギリスを目指して行くのです。
EU加盟国には難民受け入れを拒否できない、という法律があります。移民についても、特別な理由がない限り拒否できません。
だから、イギリスが移民・難民受け入れを拒否、あるいは制限するには、EUを離脱しなければならないのです。
どうしてイギリスは移民・難民を受け入れたくないの?
それではなぜイギリスは移民・難民を受け入れたくないのでしょうか。それは、国民の税負担が重くなるからです。
基本的に、難民の衣食住の費用負担は、国の税金から賄われます。イギリスは、特別裕福な国ではありません。むしろ、財政は弱含んでいます。自国の財政もままならない状態で、本来使わなければならないところに税金が行かず、難民の受け入れ費用になってしまう。イギリス国民が不満を持つのも当然です。
それから、移民が増えると問題になるのが、仕事の面です。当然、移民はイギリスに来て、ぷーたら遊んで暮らすわけではありませんから、仕事をします。そうすると、もともとあった仕事をイギリス人と移民で奪い合うわけですから、イギリス人からしたらたまったものではありません。
さらには、他国の文化が入り混じることによるイギリス古来の文化喪失、また治安の悪化などの懸念も叫ばれています。
もしイギリスがEUを離脱したらどうなる?
ここまで離脱派の主張を書いてきましたが、もしイギリスが本当にEUを離脱したら、そのような影響が起こるのでしょう。
一番大きな影響は、「ヨーロッパの中枢マーケットとしての地位陥落」です。もっと簡単に言うと、ロンドンが見捨てられる、ということです。
現在、世界のマーケットは、3つの都市を中心に回っています。まずはウォール街で有名なアメリカ・ニューヨーク、そしてアジア圏においては中国・上海、そしてヨーロッパを統括するのはイギリスのロンドンです。この3つを中心にしてマーケットを回すことによって、24時間の取引が可能となるわけです。
だから、ロンドンには各国の金融機関がこぞって拠点を置いています。イギリスがEUに加盟している現在、ロンドンに拠点を置けばEUのその他27か国でも許認可を求められず、自由にビジネスを展開できます。
しかしながら、イギリスがEUを離脱すると、もしかしたら、これらの企業がロンドンを出て行ってしまうかもしれないのです。要は、「ロンドンに拠点を置いても、ヨーロッパ展開できないじゃん」となるわけです。
おそらく、イギリスがEUを離脱した場合、金融機関の多くはドイツかフランスに移転すると言われています。
そうすると、当然、多くの失業者が出ます。この影響によって生まれる失業者は、残留派のデータによれば95万人に上ると言われています(イギリスの国民数は約6,500万人)。これは大事ですね。
ポンドも売られ、ユーロも売られ…
さらに、イギリスがEUを離脱すれば、イギリスの国力の信用低下が発生します。EUという大きな後ろ盾を捨てて独り立ちするのですから、信用低下は当然です。
そうすると、イギリスの通貨であるポンドの価値が低下します。通貨の強さは国の力を表します。具体的には、現在の157円から120円ぐらいまで落ちるのではないかと見積もられています。
ポンドが弱くなるとどうなるのか。イギリスが他国のものを買うときに、より多くのポンドを支払わなければならなくなります。つまり、イギリスの購買力が低下するわけです。これは、イギリスの景気悪化にもつながります(お金が回らなくなるので当然です)。
さらに、イギリスの購買力が弱くなると、EU全体の景気悪化にもつながります。イギリスがものを買わなくなれば、それまで売れていたものも在庫になってしまって、ものもお金も流れが悪くなってしまうのです。
つまり、EU全体が不景気に陥る可能性があります。
さらには、イギリス経済の先行き不安から、マーケット全体に悪影響を及ぼす可能性も高くなってきます。
日本への影響は?
気になるのは、日本にはどのような影響があるのか、というところですが、ヨーロッパが不景気になれば、日本にも悪影響が出る、というのはパッとわかると思います。
現在、イギリスに進出している日本企業の数は931社です。これはEUではドイツに次ぐ2位の企業数です。
さらに、日本の対イギリス直接投資の額は1兆7000億円です。これは、アメリカに次ぐ世界2位の金額です。
こういった数字だけでも、イギリスの景気が悪くなれば、日本もかなりのダメージを食らうことは理解できるでしょう。
さらに、前述したポンド安、ユーロ安になると、今度は日本の輸出産業にも大きな影響が出てきます。
ヨーロッパからすれば、ポンド安、ユーロ安になると、日本の製品はこれまでより買いにくくなります(例えば、今まで100ユーロで買えていたものが120ユーロになってしまう)。そうすると、日本の対ヨーロッパ輸出が落ち込み、日本経済全体の景気悪化にもつながってくるわけです。
まとめ
イギリスが移民・難民問題で苦しいのは理解できますが、世界全体への影響を考えると、「残留したほうがいいのでは…」と思ってしまいます。しかし、それは、イギリス国民自身が決断することです。
「国としての主導権を回復する」という離脱派の主張の通り、彼らにも一国としてのプライドがあるのでしょう。いつまでもEUに守られ、縛られるのは嫌だと。
ヨーロッパ中央銀行のドラギ総裁は、「イギリスはEUに残るべきだ。残留のほうがイギリスにとっても利益になる」と発言しています。
ドラギ総裁だけでなく、各国の首脳、あるいは経済界の主要人物も、さらには経済番組のコメンテーターもこぞって「EU残留」を求めています。
現在のところ、世論調査では、離脱が47%、残留が44%と、わずかに離脱派が上回っているようです。かなり拮抗した状態が続いているようで、正直どちらに転ぶかわかりません。
6月23日、注目して見てみましょう。
参考 テレビ東京「ワールドビジネスサテライト 6/4放送分」
*1:「Britain(イギリス)」の「Exit(離脱)」で「Brexit(ブレグジット)」と呼ばれています