花見や緑化用に移植されたソメイヨシノの花粉で、近くに自生する野生の桜が交雑して、遺伝子汚染されていることが、環境省研究班の調べで分かった。生物は地域ごとに独自に進化して、その地域に合った有用な遺伝子を受け継いでいる。遺伝子が混じることで、病気や気候への適応力に影響が出かねない。研究班は来年度、適切な樹木の移植方法に関する指針を作る。
研究班メンバーの向井譲・岐阜大教授らは05〜07年、岐阜や静岡の公園や山で、ヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンなど野生の桜、計216個の種子を集め、遺伝子を調べた。すると、13%にあたる29個の種子からソメイヨシノの遺伝子が見つかった。
反対に、ソメイヨシノも別の桜の花粉で結実していた。種子129個の約半数から、半径約200メートルにある桜の遺伝子が見つかった。ソメイヨシノの根元では、交雑した種子が芽吹いていた。今後、芽吹いた種が、子孫を残せるか調べる。
向井さんは「今後、ソメイヨシノを、地域固有の野生桜が自生する地域に植える際には、注意が必要になるだろう」と話す。
研究班代表の津村義彦・森林総合研究所室長によると、ブナも地域ごとで遺伝子に違いがあり、別の地域に植えると、気候が合わず、枝先が枯れやすくなることが分かったという。
このため、ブナ、ヤマザクラなどで地域ごとに遺伝子型が違うことを地図で示し、適正な移植、緑化の方法を定めた指針案を作成する。
これらの結果は、3月に盛岡市で開かれる日本生態学会で発表する。(長崎緑子)