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【社会】

東京の僕らが「沖縄戦」語り継ぐ 中野の高3が19日イベント

ひめゆり平和祈念資料館で島袋淑子館長(右)から話を聞いた石井純さん=2015年12月19日、沖縄県糸満市で(石井さん提供)

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 七十一年前の六月まで激烈な地上戦が続き、日本人十九万人が命を落とした沖縄戦の記憶を継いでいこうと、東京の中高生と沖縄の大学生がイベント「小さき平和へのFLAG!」を十九日、東京国際フォーラムで開く。企画した東京大学教育学部付属中等教育学校(中高一貫校)の高校三年石井純さん(18)=東京都中野区=は「沖縄戦を語り継ぐことが、戦争という過ちを繰り返さないことにつながる」と話し、参加する中高生を募集している。 (飯田孝幸)

 イベントでは、百十人の中高生が沖縄の大学生を交え、沖縄戦があった過去、米軍基地を抱える現在、そして将来について議論する。

 米軍基地をテーマにした映画「人魚に会える日。」の仲村颯悟(りゅうご)監督がイベントのために撮り下ろした沖縄戦を巡る映像の上映、沖縄の音楽や食の紹介もあり、「五感で沖縄を感じ、沖縄戦を学ぶ場にしたい」(石井さん)という。

 石井さんは高校一年の時、総合学習で一年間にわたって沖縄戦について学んだ。授業の一環で沖縄も訪れ、民泊先の女性から母親が経験した戦争体験を聞き涙が止まらなかった。「沖縄戦を扱ったテレビのドキュメンタリーなどを見たことがあったけど、沖縄の人の話を直接聞くことで心を動かされた」と振り返る。

 ひめゆり平和祈念資料館(沖縄県糸満市)では、亡くなった人たちの顔写真が一人ずつ展示してあるコーナーで衝撃を受けた。ひめゆり学徒隊のことは知っていた。でも、写真を見て一人一人が、かつて生きていたんだと強く意識させられた。「これまで、なぜ深く考えなかったんだろう」と思ったという。

 高校の卒業研究は、沖縄戦を東京でどう伝えるかというテーマに決め、昨年十二月、再び沖縄を訪ねた。そこで沖縄県の大田昌秀元知事や、ひめゆり平和祈念資料館の島袋淑子館長(88)から戦争経験などを聞いた。イベントはこうした経験を踏まえ、卒業研究の総まとめとして開催。沖縄を訪れる修学旅行生の平和学習をサポートしている大学生たちや仲村監督らがイベントに協力する。

 沖縄では女性の遺体を遺棄したとして元海兵隊員の軍属が逮捕された後も、米兵が飲酒運転で人身事故を起こした。石井さんは「沖縄の米軍基地についてもメリット、デメリットをきちんと話し合いたい。社会全体で沖縄について考えることにつなげていきたい」と話す。

 インターネット上で資金提供を呼び掛けるクラウドファンディングで十四日までイベント開催資金を集めている。イベントへの中高生の参加費は五百円。イベントへの参加申し込みや資金の寄付は「小さき平和へのFLAG!」の公式サイトから。

<沖縄戦> 太平洋戦争末期の1945年3月、慶良間(けらま)諸島への米軍上陸で始まった。同年6月23日に日本軍の組織的戦闘は終結したとされるが、その後も各地で戦闘状態は続いた。住民を巻き込んだ地上戦で、県民の4人に1人が命を落とした。看護活動に動員され、半数以上が亡くなったひめゆり学徒隊による講話は、証言者の高齢化で継続が難しくなり2015年3月で終了した。

 

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