ディズニーの魔法の王国がミドルキングダム(中国)に参入する準備を進める中で、中国一の大富豪は自国の子供たちの心――そして親たちの財布――をめぐってミッキーマウスと戦う態勢を整えた。
億万長者の不動産王で、不動産・エンターテインメント産業のコングロマリット(複合企業)、大連万達集団(ワンダ・グループ)会長の王健林氏は、新しい子供向けテーマパークに対する30億ドルの投資が、富を手に台頭する中間層を大勢呼び込むことに賭けている。
中国南部の南昌市に先月末オープンした娯楽リゾート施設「ワンダ・シティ」は、地元住民の嗜好を満足させる自らの強みに期待する。同施設は、獅子舞と、地元の共産党幹部のお決まりのスピーチの式典をもって開業した。アトラクションには、中国で最も高くて長いジェットコースターや、中国の茶器一式を思わせるよう設計されたショッピングモールなどがある。
■「虎はオオカミの群れにかなわない」
一方、世界最大のエンターテインメント企業であるディズニーも、レジャー活動を渇望する中国に賭けている。中国本土初となるディズニーランドのリゾート施設が6月16日に上海でオープンする。政府が所有する企業3社と組んだ、総工費550億元(約8800億円)の合弁事業だ。
ディズニーは自社の世界的なヒット映画が、感受性の強い子供たちと子供に甘い親を呼び込むことに注力している。新たなテーマパークは、「カリブの海賊」や、「アイアンマン」「アベンジャーズ」といったスーパーヒーロー映画に基づくアトラクションを呼び物にしている。
中国の1人当たりの所得はこの30年ほどで20倍に拡大しており、ディズニーは中国全土から観光客を呼び込むために、2013年のヒット映画「アナと雪の女王」に登場するエルサとアナをはじめ、世界的に認知されたキャラクターを活用している。
だが、米フォーブス誌の推定で340億ドルの資産を持つ王氏は、知名度とアニメキャラクターにおけるディズニーの恐るべき優位性を恐れていないと言う。ワンダは、中国各地に比較的安いテーマパークを多く開発する計画だ。豪華な休暇ではなく、手軽な週末の日帰り旅行を求めている都市部のホワイトカラー労働者を呼び込むのが狙い。