親玉は…被害の7割は首都圏に集中
国際組織か 愛知県警逮捕の出し子「暗証番号は同じ」
17都府県のコンビニの現金自動受払機(ATM)で偽造クレジットカードを使って18億円以上が不正に引き出された事件で、被害の約7割は首都圏の1都3県に集中していることが毎日新聞の取材で分かった。南アフリカの銀行のクレジットカード情報が利用されていることや、100人以上とみられる引き出し役(出し子)が一斉に実行している手口から、警察当局は大規模な国際組織が関わっている可能性があるとみて実態解明を進めている。【まとめ・斎川瞳、春増翔太、谷口拓未】
事件は5月15日午前5時ごろから約3時間の間に各地で発生。カード会社から現金を借りるキャッシング機能を使い、コンビニなどに設置されたセブン銀行、ゆうちょ銀行、イーネットのATM約1700台から約18億6000万円が引き出された。利用された偽造カードはいずれも南アフリカのスタンダード銀行が発行したクレジットカードの情報が書き込まれていた。スタンダード銀行はカード情報流出の被害に遭ったことを認め、「損害額は推定約3億ランド(約21億円)に上る」と発表している。
毎日新聞が全国の警察本部に取材したところ、都府県別で特に被害額が多かったのは東京(約5億7300万円)▽神奈川(4億2827万円)▽千葉(約2億円)▽埼玉(1億数千万円)で、この1都3県だけで約13億円と全体の約7割を占めた。福岡でも約1億5000万円と大きな被害が出ていた。
店内のATMが利用された千葉県内のセブン−イレブンの店長によると、黒っぽい服の男が手元の紙に何かを書き込みながら、ATMにカードを差し入れる動作を繰り返す様子が防犯カメラに映っていた。男は腕時計で時間を気にしながら、約30分間で数百万円を引き出したとみられる。店長は「日曜日の朝だったのは、客が少ない時間を狙ったのでは」と話す。
捜査関係者によると、偽造カードの大半は「生カード」と呼ばれるプラスチック板に磁気テープを張り付けて作られたものとみられる。一部のATMは不正を検知する機能でカードを回収しており、中国の焼き肉店の顧客カードで作製したとみられる偽造カードも見つかった。
手口の一端も明らかになっている。新潟県警が振り込め詐欺に関わったとして逮捕した男の関係先から、言語を「日本語」に設定することなどATMを操作する手順が書かれたメモが押収された。
愛知県警が5月31日に窃盗容疑で逮捕した男2人は、暴走族仲間だった別の男から依頼され、5万円の報酬で現金の引き出しを請け負ったとされる。うち1人は「複数のカードを渡されたが、暗証番号は同じだった」と供述。警察当局は、多数の引き出し役に偽造カードが配られたルートなどを調べている。