韓国外交部(省に相当)の尹炳世(ユン・ビョンセ)長官の別名は「オ(五)・ビョンセ」だが、これは意外と広く知られている。大統領の任期は5年だが、尹長官はこの5年間、ずっと外相で居続けるかもしれないことから、取材記者や若い外交部職員たちがつけた名前だ。ところが最近になって尹長官が本当に外相を5年間続ける可能性が現実味を帯びてきた。これまで3年3カ月にわたりこれといった失敗もなく、今後どうしても交代せざるを得ない状況が来そうにもないからだ。
「5年の任期を勤め上げる外相」は、韓国ではいわば夢のようなものだった。建国から67年、これまで外交長官を務めた人物は36人もいるため、その任期は平均すると2年にも満たない。1987年に大統領直接選挙制となってからは、閣僚の座はいわば選挙の戦利品扱いとなり、その任期も一層短くなった。特に故・金大中(キム・デジュン)大統領の在任中には5人の人物がほぼ1年交代で外相に就任した。ある政権ではある閣僚が「儀典秘書官」と呼ばれ、また別の政権のある閣僚は「執事」として通じていた。
大統領の任期5年の最初から最後まで勤め上げる外相。韓国でこのような外相の登場を望む声が出始めた背景には、上記のような現状に対する自戒の念もあったことだろう。海外では例えば18年の長きにわたり外相を務め、ドイツ統一の基盤を築いた旧西ドイツの故ゲンシャー氏のようなケースがあるし、あるいは米国では大統領選挙の段階から国務長官候補が登場し、その後も大統領の4年の任期をほぼ最初から最後まで共にする。もちろんここまではいかなくとも、外相に大統領を傍らで支える「戦略家」の側面を求める声があるのはまぎれもない事実だ。
ただ残念ながら尹長官のこれまでの3年3カ月については、「自画自賛」以外にこれといって思い浮かぶことがない。彼が普段から発言する内容が正しければ、現在の韓米関係、あるいは韓中関係は過去のどの時点よりも良好でなければならず、国際社会における大韓民国の立場や権威もこれまで以上に高まっているはずだ。外交部の官僚たちが国民の意見など意に介さず、もしかして本当にそう考えていないか気になるところだ。