5. 腎臓移植とは
腎臓移植は、末期腎不全で腎臓が機能しなくなった患者に他人の腎臓を移植し、その人の腎臓として働くようにさせる医療です。移植が成功すれば腎臓は正常に機能し、免疫抑制剤を飲む以外は普通の人と同じように生活することができます。
腎臓移植を行うには腎臓が提供されることが前提です。だれから腎臓を提供されるかによって、死体腎移植と生体腎移植に分けられます。
本来臓器移植は、事故や脳血管の病気などで脳に損傷を受けた結果、脳死となったけれども臓器は無事であるという人から、臓器の提供を受けて移植するものです。これは「脳死は人の死である」という考え方を前提としています。この場合のドナー(臓器提供する人)を死体ドナーといいます。
死体ドナーから腎臓提供を受ける移植を死体腎移植といいます。死体腎移植には、脳死となっても人工的に心臓を動かし続けている状態で腎臓を摘出し、移植する「脳死下腎臓移植」と、脳死を経て心臓が停止してから腎臓を摘出し移植する「心停止下腎臓移植」があります(※心停止下の腎臓提供は、本人がドナーカードを持っていなくても、生前反対していなければ家族の承諾で可能です)。ひとりのドナーから腎臓が2個とも提供されれば、ふたりの人が腎臓移植を受けることができます。
死体腎移植は臓器移植法の下で(社)日本臓器移植ネットワークが厳密に管理しています。臓器の提供、移植をネットワークの枠外で個人的に行うことはできません。
死体腎移植を希望する人は、移植を実施する病院を通じて(社)日本臓器移植ネットワークに登録し、移植の機会を待つことになります。臓器の提供があった場合、登録者の中から、血液型一致などの条件を満たした上で、主にHLA型(白血球の型、型が合っていると移植成績がよい)の適合度と、待機期間(ネットワークに登録してからの期間)の長さをポイント化し、ポイントの高い人が選ばれます。
しかし、登録者が約12,000人いるのに対して、実際に行われている死体腎移植は2002年で122件とわずか1%にすぎません。臓器の提供があまりにも少ないので、残念ながら移植を希望しても実現する可能性は非常に低いのが現状です。
生体腎移植は親、子、兄弟などの血縁者、または配偶者から腎臓の提供を受けて移植します。腎臓はひとりに2個あり、ひとつになっても腎臓の機能に問題がないため、1個を取り出してレシピエント(移植を受ける人)の体に移植します。
生体腎移植は臓器を提供したい人、移植を受けたい人、それぞれの意思があり、医学的に問題がなければ、自由に医療機関で行うことができます。
日本では死体腎移植を受ける機会が非常に少ないため、確実に移植を受ける手段としては生体腎移植を選択するしかありません。しかし家族による腎臓提供は、あくまでも自発的な善意に基づくものであり、強制や圧力が働くことは望ましくありません。一方、移植を受けた側にも、提供してくれた相手に負担をかけたという負い目の感情が生ずる場合があります。健康な人の体から腎臓を取り出すという特殊な医療ですから、よく考えて慎重に決断する必要があるでしょう。
〔ドナー、レシピエントの条件〕
〔プロセス〕
移植手術前
移植手術(図)
手術後の入院と通院
移植後の免疫抑制剤
死体腎移植において提供される腎臓は大変貴重なものですから、最大限生かすために移植を希望する膨大な数の候補者の中から、もっとも適した条件、もっとも優先すべき人が選ばれます。
生体腎移植では、移植を受けたい人と、臓器を提供できる人が最初から決まっているわけですから、条件がよい組み合わせばかりではありません。
腎臓移植の水準は近年非常に向上し、血液型不適合、高年齢など、従来は移植の障害となっていた要因もかなりの程度克服されるようになり、ドナー、レシピエントの幅が広がっています。
日本では移植が始まって以来2002年までに、生体腎移植11,551件、死体腎移植4,107 件、合計15,658件が実施されました。ここ数年は死体腎移植の数が低迷している情勢を反映して、生体腎移植の数は増える傾向にあり、2002年の634
件は過去最高を記録しました。また、この年の生体腎移植の比率84%も過去最高です。(死体腎移植が本格化した1981年以降)
アメリカでは2002年に14,776件と、日本の約20倍の数の腎臓移植が行われています(人口は約2倍)。そのアメリカでも近年、生体腎移植の数が急増しており、1994年には約3,000件(全体の28%)だったのが、2002年には約6,200件と倍増し、全体の42%に達しました。
図(移植数)(臓器移植ファクトブック2003年)
腎臓移植の成績は「生着率」で表します。これは移植後一定期間たった時点で、どのくらいの腎臓がレシピエントの体内で機能し続けているか、という割合です。
下の表では上の段が、1997年までに行われたすべての移植のうち、調査可能なもののデータです。下の段は比較的新しい1983年以降のデータです。最近のほうが成績が向上していることが分かります。
表.腎移植の正着率
| 生体腎移植の生着率 | ||||
| 1年 | 5年 | 10年 | 15年 | |
| 〜97年 | 89% | 73 | 54 | 41 |
| 83〜97年 | 93% | 77 | 56 | 40 |
| 死体腎移植の生着率 | ||||
| 1年 | 5年 | 10年 | 15年 | |
| 〜97年 | 78% | 59 | 43 | 31 |
| 83〜97年 | 82% | 63 | 46 | 35 |
腎臓の働き|腎不全とは|腎不全の治療法|血液透析、CAPD
腎臓移植とは|移植と透析|腎移植の成績|移植施設一覧