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熊本テント村 経験を今後に生かそう

 熊本地震で取り組まれた支援活動には、今後起こる震災で生かすべきものがある。その一つが、被災者の戸外避難形態として今回初めて本格的に導入されたテント村である。

     登山家の野口健さんと岡山県総社市、医療支援のNPO法人「AMDA」が設置、管理に協力した。野口さんは2015年4月のネパール大地震でテントを大量に送り、住民から感謝された経験を持つ。熊本地震でも被害の大きかった益城町を視察、被災者が屋根の落ちた体育館で避難している姿や、余震が怖いと車中連泊している様子を目撃し、テント村を作るアイデアを思いついた。

     野口さんは、自ら基金を発足させるとともに、知人の片岡聡一・総社市長に相談、岡山を拠点とするAMDAの菅波茂代表も加わり3者態勢でプロジェクトが進んだ。同市は東日本大震災の経験から13年に新条例を定め、大規模災害については国内のどこで起きたものに対しても、市長の権限で1000万円までの支援が即座にできる態勢になっていた。

     この3者の支援申し入れに対し、益城町は当初テントが皆に行き渡らない、と消極的だったが、総社市が責任を持つということで納得、同町総合運動公園のトラック内にテント村を作ることを受け入れた。テントは野口さんがヒマラヤのベースキャンプで使用したものと同型で、雨風に強く、天井が高くて、圧迫感がない。タープ(日よけ)もつけて居住性を高めた。メーカーへの特注で、最大時は156張り(世帯)を設置、571人が入居した。

     テント村は、地震発生10日後の4月24日に開村、5月31日に閉じた。益城町の管理下ではあったが、総社市などから職員が派遣され、常時5〜7人の専任スタッフを置いた。AMDAは医療テントを設置した。

     野口さんによると、テント村の利点は、家族単位で使えることから、心身共に快適、健康に過ごせることだ。体を十分伸ばせるし、プライバシーも保てる。子どもが泣いても気兼ねしなくていい、テント生活に子どもが喜んでいるという声も出た。

     一方で、気象条件の急変にどの程度耐えられるか、という問題もあった。実際に、5月に入りテント内の気温が上昇し熱中症の危険が出てきたこと、梅雨に入り河川が氾濫した時のことが考慮され閉村になった。

     今回のテント村の実験には、震災国・日本として大いに学びたい。災害発生後、仮設住宅ができるまでのつなぎ的な仮住居としての有用性だ。被災地外の自治体による直接支援も参考になる。テントは簡易で運びやすく何度も使える。これをプールし、運び、村を運営するノウハウを官民で築き上げていけないか。

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