自民党の甘利明・前経済再生担当相が政治活動を再開した。

 現金授受問題で1月に閣僚を辞任してから、「睡眠障害」を理由にすべての国会審議を欠席してきたが、ようやく体調が回復しつつあるという。

 甘利氏はおととい、約4カ月ぶりに記者らに囲まれ、「これからは政務活動をして、やりがいを持つことが回復の後押しをするのではないか」と、主治医から活動再開を認める診断が出たことを説明した。

 回復に向かって良かった。早く完治して、盟友の安倍首相のためにも、参院選の勝利をめざして全力で働いてほしい。そう期待する人は多いだろう。

 一方で、それ以上にたくさんの人が、あらあら、何ともタイミングのよい回復ぶりだなと、あきれているのではないか。

 先週、甘利氏らが千葉県の建設会社から600万円を受け取っていた問題が不起訴処分になった。翌日、国会が閉じた。その5日後の復帰宣言である。

 忘れてもらっては困る。甘利氏はまだ説明責任を果たしていない。

 疑惑があれば、捜査当局の解明を待つまでもなく、みずから国民に説明する。それが、国民の代表である国会議員の務めのはずだ。

 甘利氏自身、大臣辞任の記者会見で「弁護士による調査を続け、しかるべきタイミングで公表する」と約束していた。あのときは、政治家としての「美学」「生き様」「矜持(きょうじ)」といった言葉も連ねていた。

 それなのに、会期中は国会審議を休んで野党の追及をかわし、会期が終わればすぐに政務に復帰する――。これではあまりに国会軽視が過ぎる。

 自民党や、安倍首相の責任も重い。

 自民党は野党が求める甘利氏の参考人招致や証人喚問を拒み続けた。安倍首相も任命責任を認めはしたが結局、「甘利氏が説明責任を果たしてくれる」と言うだけだった。

 活動再開の前に、甘利氏にはなすべきことがある。速やかに国民に説明することだ。

 600万円というお金を、どんな思いで受けとったのか。甘利氏本人や秘書が交渉にどうかかわったのか。弁護士の調査結果とともに、丁寧に語る責任がある。

 野党が求める国会の閉会中審査に応じる。みずから記者会見を開く。すぐにでもできることはある。

 検察審査会の動きがあるから説明できない。そんな先延ばしは、もはや許されない。