化粧品口コミサイト「@cosme」のほか、EC(電子商取引)サイトも運営し、首都圏を中心に実店舗も展開されていますね。もともとはどのような発想からビジネスをスタートされたのでしょうか。
吉松:基本はやはり、データベースをどう作るかというところからです。「@cosme」も、各化粧品メーカーが自社では持ち得ない顧客データを、ネットを使ってどう集められるかというところから発想して作りました。
化粧品メーカーのA社であれば、自社商品を買ったお客さんのデータを集めることはできても、B社の商品を買ったお客さんのデータはなかなか集められない。ならばメーカーを問わず、あらゆる化粧品のデータを一元化して集められるプラットフォームをうちが作ろう、と。そのキーワードが「口コミ」であり、口コミを集める手段がインターネットでした。
そのような口コミをリアルに体験できるお店が「@cosme store」です。我々は(化粧品業界独特の商慣習のため)一流百貨店が扱う化粧品を仕入れることはできなくても、サンプルとして並べることはできる。そうすると、お客さんはそれとほかの化粧品を比較した上で百貨店へ行けますよね。つまり、実際に買う前に立ち寄れる店にしようね、という考え方でずっと来ています。
価格競争に巻き込まれにくい商材が化粧品だった
では、なぜ化粧品だったのかと言いますと、再販制度があるからです。ほとんどの商品では、中間流通を省いてeコマースにしても、参入障壁が低いですから、いずれは価格競争に巻き込まれてしまう。そうならない商材は何かと考えた時に、書籍等と非常に近い化粧品が思い浮かびました。
ECサイト「@cosme shopping」を始めた当初は「どうせ安売りするんだろう」と言われましたが、基本は定価販売です。僕たちは価格破壊を目的としたマーケット・クラッシャーではなく、あくまでマーケット・デザイン・カンパニーを標榜しています。データベースを使い、消費者の声がリアルに反映される新しい仕組み、市場構造を作りたいだけであって、既存の秩序を壊そうとしているわけではない。これが根っこの部分にある考え方です。