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花巻の老舗デパート、半世紀余の歴史に幕

地元住民や同社従業員らに惜しまれつつ、閉店の時を迎えた老舗百貨店「マルカン」=花巻市で2016年6月7日午後6時42分、二村祐士朗撮影

 岩手県花巻市の老舗デパート「マルカン百貨店」は7日閉店し、半世紀余りの歴史に幕を閉じた。買い物客は閉店を惜しみつつ、空きビルなどの再生を手がける同市のまちづくり会社「花巻家守舎」の引き継ぎ計画が軌道に乗ることに期待を寄せた。

 マルカン百貨店は1960年に衣料品デパートとして創業し、73年に現在の地で百貨店として営業を始めた。レトロな雰囲気を残す6階の大食堂では、ナポリタンにトンカツがのった「ナポリカツ」と、箸で食べるソフトクリームの組み合わせが人気だった。

 しかし、建物の老朽化による耐震不足で、閉店することに。「花巻家守舎」は先月31日、新会社で事業引き継ぎを模索し、営業再開の判断を8月末にすると発表していた。

 閉店日を迎えた7日。店舗前には午前10時の開店前から行列ができた。客の目当ては大食堂。すぐに長い列ができ店内もにぎわった。

 花巻市上小舟渡の無職、小野敏彦さん(68)は、市街地が見渡せる窓際の席でソフトクリームをほおばっていた。開業時からのファンで「ビールにサイコロステーキの後、アイスをゆっくり食べるのが私の定番。満席で話し声が絶えない、この雰囲気が大好きで。恋人を失ったような気分」と言い、寂しさをにじませた。

 同県北上市の私立専大北上高2年、菊池真珠来さん(16)は、友人と2人で自転車で片道40分かけて来店。オムライスを食べた。「放課後、友達と一緒に来ては学校でのことをいっぱい話した思い出の場所。店を何とか続けてほしい」と願った。

 閉店の午後7時。館内には「蛍の光」が流れ、玄関のシャッターが下がった。店内に並んだ従業員は「ありがとうございました」と言って頭を下げると、買い物客らはスマホをかざし、閉店の瞬間を収めていた。

 マルカン百貨店社長の佐々木一さんは「お客さんの存続してほしいという声はうれしかった。閉店は苦渋の決断だが、事業引き継ぎが決まれば支援したい」と話していた。【二村祐士朗、近藤綾加】

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