北原みのり「沖縄の米兵は透明人間」
当時の状況を調査した時、特にベトナム戦争時のAサインバーで働く女性たちの過酷さは、筆舌に尽くしがたいものがあったという。人を殺す訓練を受け、実際に殺し、自分も生と死の狭間から生還した男たちが沖縄に立ち寄った時、女たちは1日に20~30人もの相手をしなければいけない日々だった。女たちは店から様々な名目で借金を背負わされ、1カ月平均100ドルの給料時代に、7千ドルの借金を抱えさせられていた人もいた。自分の意思で辞められない状況だったのだ。そして何より、Aサインバーがあったとしても、米軍による強姦事件はなくならなかった。
高里さんは、こう仰る。
「沖縄の米兵は透明人間なんです」と。
どこから来て、どこに移動するのか、沖縄の人たちには知らされていない。数時間後にグアムの基地に向かう米兵2人によるレイプ事件が起きたこともあった。沖縄滞在は、たった2日だった。不平等な地位協定のため、もし日本の警察が彼らを捕らえられなければ、加害者が罰せられることはなかっただろう。
「タイミング」の問題ではない。そして「風俗活用云々」の問題ではない。沖縄の人が、そして米軍基地の周辺に住む人々が、常に抱えている恐怖であり、悔しさだ。その痛みによりそうことなく、男の性欲の話をまずする男や、政局の話をしたがる政治家たちに、感じる心はあるのだろうか。
※週刊朝日 2016年6月10日号
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