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iPS網膜移植再開を正式発表 他人細胞も初利用

神戸新聞NEXT 6月6日(月)21時52分配信

 理化学研究所多細胞システム形成研究センター(神戸市中央区)は、遺伝子変異が見つかったため中止していた人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った網膜への移植を、関西の3機関と連携して再開すると正式に発表した。患者自身の細胞から作ったiPS細胞に加え、他人の細胞から作ったものも初めて利用。手術は来年前半にも実施する。

 3機関は、神戸市立医療センター中央市民病院と大阪大学、京都大学。京都大のiPS細胞研究所(山中伸弥所長)が備蓄しているiPS細胞を提供し、理研多細胞研で分化させる。移植手術や診察は中央市民病院と大阪大病院が担当する。今月にも中央市民病院の倫理委員会に申請する。

 理研多細胞研の高橋政代プロジェクトリーダーらは、2014年にiPS細胞から作った網膜色素上皮細胞の移植を世界で初めて行った。だが、2例目は細胞の遺伝子変異が見つかったため、移植を見送っていた。

 移植の対象は、1例目と同様に網膜が傷んで失明の恐れがある「滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性」の患者で、iPS細胞を使って病気の進行を抑える。遺伝子変異などを確認済みの他人の細胞を使うことで、安全性を担保し、一から培養するのに比べ時間やコストも減らせる。

 1例目の移植は網膜色素上皮細胞のシートを使ったが、今回は作るのが容易な同細胞入りの「懸濁液」も使用。シートと懸濁液を、自身と他人の5症例ずつ移植する計画で、患者は最大20人になる。

 高橋リーダーは「他人の細胞なら将来的には数百万円で治療できる。4機関で協力できるのは非常に心強い」と話し、山中所長は「こうしてタッグを組めたのは大きな前進」とした。(森 信弘、山路 進)

最終更新:6月6日(月)21時57分

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