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米軍基地の再編にかかわる交付金をめぐって、政府が法改正に乗り出す。基地…
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米軍基地の再編にかかわる交付金をめぐって、政府が法改正に乗り出す。基地負担の受け入れに応じて金を渡す対象を、これまでの市町村(自治体)だけでなく、任意団体である自治会にも広げるところがミソだ。
政府は昨年度、沖縄県の普天間飛行場の移設に絡み、ある策を講じた。移設を拒んでいる名護市を通さず、移設予定地に近い同市辺野古周辺の三つの自治会に直接、計3900万円を配ったのだ。今年度は7800万円に増やす。
現行法が来春期限切れになるのを機に、この仕組みを制度化し、辺野古移設を政府ペースで進める狙いがあるようだ。
この改正に反対する。理由は四つある。
第1に、交付金を受け取る自治会と受け取らない自治会の間に溝ができ、同じ自治体の住民どうしが対立する構図を招きかねない。連帯感や共助の精神で成り立つ地域社会を、政府が税金を投じて壊してゆくことになれば、あまりに理不尽だ。
第2は、税金の使い方として疑問がぬぐえないことだ。
三つの自治会は投票で選ばれた区長と住民代表らが相談し、防災備蓄倉庫などに充てるという。だが、支出の妥当性を判断する基準はあいまいだし、その是非を判断する議会もない。
第3に、政府が市町村の頭越しに公金を出せば、統治のあり方を根幹からゆがめかねないことだ。そもそも地域の要望を束ね、採否を決めて実行するのは市町村の仕事だ。首長と議会で優先順位をつけ、その責任をとる。監査委員もいる。
こうした地方政府としての自治体の機能は、分権改革で強まり、国と地方は「上下・主従」の関係から「対等・協力」の関係になったはずだ。自治体を無視するかのような政府の姿勢は、市町村を国の下部組織とみなしているとしか思えない。
第4は、自治体を通さない補助金支給は事実上、辺野古という極めて限られた地域への適用を念頭に置いていることだ。
そうした法律を、国全体の法秩序を守る立場の政府がつくるのが適当だとは思えない。確かに、この法律の対象は沖縄だけではない。だが、現時点で辺野古以外の自治会に交付金を出す予定はあるのか。あるなら示してほしい。
こんなやり方を認めてしまえば、基地問題だけでなく、例えば放射性廃棄物の最終処分場建設など、引き受ける自治体が見つかっていない問題でも、同じ手法が使われる恐れはないか。そう懸念せざるを得ない。
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