システムトレードにおいて考えるべきこと
わたしはシステムトレードはほとんど使っていなくて、アルゴリズム的な考え方はリスク管理のために一部利用しているだけです。ただ、理論は面白くて数学的にもあまり難しくないので結構好き。
マネーレポートさんがMT4を用いてシステムトレードに取り組んでいるようなので、わたしも少し書いてみます。
自分らしくリスク管理的な視点なのですが、長期的に見たときシステムトレードの利益を最大化するための考え方についてです。
FXで有利な法則を見つけた、ではどう賭けようか
為替市場のパターンを見つけるのがまず必要
システムトレードでは優位性のある法則(繰り返した勝てる為替市場のパターン)を見つけるのがはじめの一歩です。
これ自体(バックテストから適当に見つけることはできても)再現性のある形で特定するのは容易ではないのですが、まあできたとしましょう。これが出来なければ、そもそもシステムトレードを使う大前提が整いません。
有利な法則を見つけたら考えるべきこと
為替市場でシステムトレードで勝てる法則を見つけたとします。そのパターンを性質は以下のようなものだったとします。
勝率:55%
損益率(勝ちトレードでの平均の利益÷負けトレードでの平均の損失):2.0
こうしたトレード手法を編み出せば、まず利益は稼げます。
勝率が55%で勝った時に負けた時の2倍のお金が入ってくるのですから(サンプルとして極めて楽観的な例を挙げている)。
しかし、最速でお金を増やすには一回当たりのトレードでお金をいくらかければいいのか(自己資金の何割をかければいいのか)という問題が生じます。
掛け金に関する感覚的な話
持っている資金の100%を常にかけ続けたらどうでしょうか?これは勝ち続ければお金がすごく早く増えます。しかし、勝率はたったの55%(システムトレードとしては十分高い確率ですが)。
これでは、感覚的にもすぐ破産しそうです。
この辺は理論的にはVaR(バリュー・アット・リスク)の上位互換のような概念(かなり適当)である期待ショートフォール確率(利回りがある一定の水準を下回る確率、信頼区間の外側の損失も取り込んでるため金融危機後に重要性が認識されている)によるわけですが、まあ読み飛ばしてください。
逆に0.01%みたいな極端に小さな資金をかけたらどうでしょうか?これなら破産はしないように思えます。
55%の確率で勝てて、勝ったときに負けた時の2倍のお金が入って来る勝負に、一回当たり0.01%の資金しかかけなければ、まず破産しないですよね。
こうした賭け方は理論上の優位性を確実に享受できる賭け方といえます。
しかし、お金の増える速度はどうでしょうか?
おそらくほとんどの人にとって、物足りないものになるのではないでしょうか?せっかくこんな良い賭けの機会があるのにたったの0.01%しか賭けないのは、機会損失にすら感じる人も多います。
システムトレードの収益最大化問題はケリーの公式でわかる
掛け金をめぐる問題は、理論上の優位性を享受するために突発的に退場させられず、かつ最大限の利益を享受できる金額をかけるにはどうしたらいいか、ということが出来そうです。
実は、この方法は数学的にはジョン・ケリーという数学者によって大昔に解明されています。
トレードの性質を再掲します。
勝率:55%
損益率(勝ちトレードでの平均の利益÷負けトレードでの平均の損失(絶対値)):2.0
この勝率と損益率の2条件だけで、ケリーの公式は最適な掛け金(資金に対する1回当たりの掛け金の割合)を導いてくれます。
ケリーの公式
F={(R+1)P-1}/R
R:損益率
P:確率
ケリーの公式はこんなに単純です。この公式に上記のトレードの性質を当てはめてみましょう。
F={(2+1)×0.55-1)} / 2
=32.5%
となり、1回当たりの掛け金は総資金の32.5%が良いことが分かりました。
かなり大きな数字(割合)ですが、上のサンプルトレードの性質が楽観的過ぎたためです。
ちなみに、損益率を1(勝つトレードの収益と負けるトレードの損失の絶対値が同一)だとしたら、総資金の5%しか許容されないことになります。まあ、感覚的に良い数字ですね。こっちをサンプルに使えばよかったよ・・・
勝率と損益率が変わったら
最後に勝率と損益率のイメージがわかるようなチャートを載せておきます。
勝率と損益率が変化したら、ケリーの公式が示唆するかけ率はどうなるか?というチャートです。
図:勝率とケリーの公式の関係
上のチャートは、損益率が2としています。勝率を横軸に取っており、斜めの赤い線がケリーの公式が示す掛け金です。マイナスになっている部分は、賭けるなっていう勝率のゾーンですね。
図:損益率とケリーの公式の関係
今度は勝率を55%で固定しました。横軸に損益率をとった場合のケリーの公式が示す掛け金を図示しています。
なんとなくイメージが湧いたでしょうか?