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生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

日本の貧困対策「周回遅れ」が伊勢志摩サミットで発覚

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第51回】 2016年6月3日
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「周回遅れ」の日本に
生活保護の拡大と活用でチャンスを

 セーフティネットと言えるものが生活保護しかない、という現状を変えていく必要もある。

 「でも短期的には、雇用や保険から漏れる人の救済は必要です。他に何もないから、生活保護が必然的に増えるんです。『現在あるパイをどう分配するのか』という考え方からは、『削減ありき』となるのは仕方ありません。あとは『どう削るか』です。でも、そうではなくて、社会保障全体をどう考えるのか、生活保護をどう位置づけ、他の制度をどう補完するのか。そういう大きな議論が必要なのではないでしょうか」(大西さん)

 生活保護に関する議論として、少なくとも「ネット世論」で、財源を理由とした削減論、削減論に対抗する人権論、または削減論と人権論の「落とし所」を探る論ではない何かが、広く語られたことはあっただろうか? 私の記憶にはない。

 「政府が『財源』を理由にして削減を主張するのは、よく分かります。市民社会は対抗上、その財源論に反対しているうちに、視野が狭まって『社会保障が厳しいので、限られた財源の中で考える』しかしなくなっている気がします。あまりにも、限定された環境の中での議論や提言やアプローチに慣らされてしまったのだと思います。

 例えは不適切かもしれませんが、日常的に殴られていると、何日か殴られないと『ああよかった』とホッとして、『暴力は悪い』ということに気づけなくなりますよね。それと似ていると思います。社会保障の削減が進んでいることは、ある種の暴力が続いているということですから」(大西さん)

 日本という国の全体が軋んでいる中で、さまざまな問題が起こっている。「持続可能な開発目標(SDGs)」は、日本が抱える数多くの問題と背景を、まるごと、包括的に解決するためにも使えるはずだ。

 とりあえず、SDGsの「誰も置き去りにしないことを確保しながら、あらゆる形態の貧困に終止符を打ち、不平等と闘い」は、生活保護基準を「健康で文化的な」レベルに向上させ、維持し、それ以下の生活をしている人々を今すぐ一人残らず生活保護の対象にすること(現在は50~80%が対象になっていないと試算されている)で実現できる。しかし生活保護は、制度そのもの・生活保護基準ともども、さらに激しく揺るがされる可能性が浮上している。

 次回は、2016年5月28日に再開された社保審・生活保護基準部会で提示された、これからの生活保護制度見直しについてレポートする予定だ。

 「誰も置き去りにしない」どころか、「ほとんどが置き去りにされる」、さらには「日本が置き去りにされる」となりかねない動きに、引き続き、関心と注目をいただきたい。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

生活保護当事者の増加、不正受給の社会問題化などをきっかけに生活保護制度自体の見直しが本格化している。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を紹介しながら、制度そのものの解説。生活保護と貧困と常に隣り合わせにある人々の「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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