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生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

日本の貧困対策「周回遅れ」が伊勢志摩サミットで発覚

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第51回】 2016年6月3日
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世界から取り残されそうな
日本の動きは?

 貧困問題・生活保護問題の取材を本格的に開始してから、ちょうど満5年になる私は、この5年間で、

 「日本政府は、貧困問題なんて、ましてや声を出せない貧困の子どもなんて、どうでもいいんだ」

 と確信するようになった。この5年間で、社会保障・社会福祉は全面的に後退している。「子どもの貧困対策」「障害者の雇用促進」「女性活躍」といった耳当たりのよい言葉が一つあれば、その数倍~数十倍、貧困・排除・差別を推進したり放置したりする政策の動きがある。この状況で、「日本政府は、貧困問題に取り組み、貧困と表裏一体の格差にも取り組む可能性がある」と信じるのは難しい。

 「でも、今後の国際社会のありかたは、『持続可能な開発目標(SDGs)』でかなり変わるでしょう。2030年、目標を達成するために、各国、もう動き始めていますから。韓国は、とても積極的です。ドイツも、具体的な計画を立てていますし、コロンビアは進捗状況を示したりしています。『取り残されちゃうぞ、日本』と危機感を覚えています。日本のメディアにも、外務省にも政府にも、危機感を持ってほしいです。2030年、達成できてなくてはならないんですから」(大西さん)

 もちろん、政府が「やる気ありません」と明言しているわけではない。2016年5月20日には「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が設置され、各省庁による会合も持たれている。しかし議事録には和泉洋人総理補佐官の発言として、

 「今後、国内実施と国際協力の両面で率先して取り組んでいくべく、我が国の内外の取組を省庁横断的に総括し、優先課題を特定した上で、「SDGs実施指針」の策定を進めていきたいと考えております」(※太字は筆者による)

 とある。「優先課題を特定した上で」は「つまみ食いして」の婉曲表現なのであろうか? ちなみに、SDGsのポリシー「誰も置き去りにしないことを確保しながら、あらゆる形態の貧困に終止符を打ち、不平等と闘い」を実現するにあたって、最も重要な役割を担っているのは厚生労働省であるはずだ。会合には、厚生労働省からの出席者もいたのだが、発言はなかった。

 「『G7伊勢志摩首脳宣言』には、先進国内、日本国内の貧困と社会保障に関して、あまりにも言及がありません。これは、政府の優先順位の低さであり、日本国民の関心の低さの現れでしょう。でも、このままでは、日本社会の持続可能性がありません」(大西さん)

 高齢化と社会保障費増大は、日本社会の危機の象徴とされてきている。2016年6月1日、生活保護世帯のうち高齢者世帯が初めて50%を超えたことが報道された(日経新聞記事など)。

 「社会保障の『ホームチェンジ』が必要なんだと思います。たとえば、生活保護世帯の約75%、うち高齢者世帯では90%が単身世帯なのに、未だに生活保護基準は『標準世帯(33歳男・29歳女・4歳児)』を前提に検討されています。このような、長年使われてきている前提、委員会・審議会で検討する現在の形式なども含めて、大きな議論が必要だと思います」(大西さん)

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

生活保護当事者の増加、不正受給の社会問題化などをきっかけに生活保護制度自体の見直しが本格化している。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を紹介しながら、制度そのものの解説。生活保護と貧困と常に隣り合わせにある人々の「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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