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政活費の報酬化 非常識な前例を作るな

 あきれた議論である。地方議員に経費として支給される政務活動費(政活費)について、東京都千代田区の審議会は使い道に制限がない議員報酬に付け替えるよう答申した。

     多くの議会が政務活動費の透明化に取り組む中で、使途の報告義務がない報酬にしてしまう発想は常識から外れている。区議会はこんな改革への逆行に応じてはならない。

     「政務活動費に対する積年の課題に一石を投じることができた」。答申に盛られたこんな自画自賛の表現に強い違和感を抱いてしまう。

     千代田区議会の定数は25で、区議は月額15万円の政務活動費が支払われている。石川雅己区長の諮問会議である有識者会議はこのうち10万円分を議員報酬に付け替えるとともに、政務活動費は5万円に減額するよう答申した。実現すれば報酬は月額約72万円に増額する。

     政務活動費は元兵庫県議による多額の流用事件を端緒として、ずさんな使い道が厳しい批判を浴びている。今年も神戸市議会で会派のひとつが約3400万円を「陣中見舞い」などとして所属議員に配っていた問題が発覚するなど、議会の信頼を損ねる事態が後を絶たない。

     だからといって、政務活動費を報酬に回すような発想は理解できない。審議会会長の武藤博己法政大教授は「議員のなり手を増やすには報酬引き上げが必要だ。政務活動費は『政務活動』の範囲が不透明で使いづらい」と説明しているという。だが、労働の対価である報酬と、調査、研究活動など経費への補助金である政務活動費は区別して論ずべきだ。

     政務活動費について「制度そのものを廃止し、自分の報酬の中から自らの責任で支出する時代へと向かっている」と指摘した答申の見解にも賛成できない。

     地方議会の多くは領収書の添付を例外なく義務づけたり、事前に全額支払う方式を見直したりするなど政務活動費改革に取り組んでいる。

     報酬に付け替えれば、これまで批判が多かった飲食などに政務活動費分をあてていくことも自由になる。使い道をできるだけ透明にして、住民の理解を得ていく努力の放棄である。

     議論の進め方にも疑問がある。政務活動費は、地方議会自らがあり方を議論し、金額や公開方法を自律的に決めるのが原則だ。区長の審議会には区議OBも加わっているという。不自然な区側の主導に区議の多くから反発が出ているのは当然だ。

     答申を実現するためには条例改正が必要となる。首都・東京の中心の地方議会であしき前例を作らぬよう区議会は明確な反対姿勢を示し、区は条例案提出を見送るべきだ。

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