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子どもの貧困対策 一歩前進だが足りない

 ひとり親家庭に支給される児童扶養手当が増額され、多子世帯の保育所や幼稚園の利用料負担が軽減されることになった。政府の「子どもの貧困対策会議」が支援策をまとめ、来年度予算に盛り込まれる。

     児童扶養手当の第2子への増額は36年ぶり、第3子以降は22年ぶりだ。ずっと後回しにされてきた経済的支援に政府が踏み出したことは評価したい。だが、今回の対策はひとり親で2人以上子どもがいる家庭に絞った支援策に過ぎない。

     子どもの貧困率は2012年に16・3%と過去最悪を更新した。実に6人に1人の子どもが相対的貧困状態にある。特に、ひとり親家庭の半分以上が貧困状態にあり、先進国の中では最悪の水準だ。保育、教育、医療など各分野での支援策を拡充していかねばならない。

     子どもの貧困対策法は13年に成立し、昨年には子どもの貧困対策大綱が策定された。しかし、貧困率削減の数値目標は盛り込まれず、具体的な経済支援もなかったため実効性に疑問が投げ掛けられていた。生活保護の支給水準を切り下げてきたのが安倍政権であり、子どもの貧困については、まず親に養育の責任を求め、公的な経済支援には腰が重かったというのが実情だ。

     親自身の努力を求める意見は国民の間にも根強いが、母子家庭の8割で母親が働いており、その半数はパートやアルバイトで平均年収は181万円に過ぎない。その中から健康保険や年金の保険料を払っているのだ。二つ以上の仕事を掛け持ちで長時間働いているため、子どもの食事など日常の世話に手が回らない人も多い。それが子どもの栄養や衛生面に悪影響を及ぼし、学習意欲の低下をもたらす原因となっている。

     経済的困窮は、子どもの生活そのものを危機に陥れているのだ。

     問題は、深刻な実態が潜在化しており、支援に結びつき難いということだ。服装は普通で携帯電話を持っている子が、実はカップラーメンと菓子だけ食べて過ごしているという例はいくらでもある。子どもはその不健康さを自覚できず、親も自らの責任が指摘されることへの恐れや恥ずかしさから声を上げられないというのだ。

     最近は食事付きの学習支援の場が各地に広がっており、政府はこうした「居場所」を早期に年間約50万人分作ることを対策に盛り込んだ。しかし、学校や地域で孤立し深刻な困窮状態にある子どもはなかなか居場所にやって来ないという。待っているだけではだめなのだ。

     今回の政府の対策は、子どもの貧困問題のほんの一部に手を付けただけだ。さらに本格的な対策に乗り出すべきである。

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