高浜で知事同意 不自然な駆け込み表明
毎日新聞
関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働に福井県の西川一誠知事が同意した。高浜町長・町議会と県議会は同意済みで、地元同意手続きはこれで完了した。
だが、高浜3、4号機を巡っては福井地裁が今年4月、運転を禁止する仮処分決定を出している。決定が覆らなければ再稼働できない。関電の異議申し立てに対する同地裁の判断が24日に出る。そのわずか2日前に、駆け込むように知事が同意を表明したことは極めて不自然である。
高浜3、4号機は今年2月、新規制基準に基づく原子力規制委員会の安全審査に合格した。一方、福井地裁は仮処分決定で、「新基準は合理性がなく、適合しても安全性が確保されない」と指摘し、運転を禁じた。24日の判断は、4月とは別の裁判長が担当しており、運転禁止が維持されるかどうかが焦点だ。
西川知事は記者会見で、高浜町や県議会の意見、国の方針などを勘案して判断したことを説明し、「(司法判断とは)事柄が別。先とか後とかは問題ではない」と述べた。行政判断は、司法判断に縛られることはないと言いたいのだろう。
しかし、現在は、高浜原発の安全性は確保されているという行政判断は誤りだと、司法が待ったをかけている状態だ。地裁の判断が出た後で意見表明する方が自然である。仮に地裁が再稼働の禁止決定を維持すれば、同意表明はしにくくなる。その前に西川知事が先手を打ったとすれば、司法軽視と言わざるを得ない。
西川知事は記者会見で、県民の理解が一番大事だと述べたが、県民の意向をどこまでくんだかも疑問だ。
福井県は住民向けの説明会を開いていない。高浜町も、原子力規制庁作製の安全対策を解説したビデオを町内のケーブルテレビで放映し、町内の各団体代表者と国の担当者による意見交換会を開いただけだ。
事故時の住民避難計画の策定が義務づけられた原発30キロ圏には京都、滋賀両府県の計8市町も入る。住民は福井より京都の方が多い。それにもかかわらず、政府と関電は、福井以外の自治体を同意手続きの対象とはしなかった。
原発事故に府県境は関係ない。再稼働に際し、30キロ圏内の自治体の意見を反映する仕組みが必要だ。
政府は3府県の避難計画を了承したが、福井県内に立地する他の原発との同時事故は想定されておらず、
避難時の車両確保や交通渋滞対策も課題として残っている。
新規制基準に合格した原発の再稼働で、地元同意完了は3例目だ。多くの国民が望む脱原発依存の道筋を示さないまま、原発に回帰する安倍政権の姿勢も納得できない。