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日銀の「補完策」 リスクが高まる一方だ

 日銀が先週末、「異次元緩和」と呼ばれる大規模な金融緩和を「補完する」策を発表した。物価上昇率2%の実現まで緩和を続ける余力が、日銀には十分残っている。そうアピールしたかったのかもしれないが、逆に政策の泥沼化、手詰まり感を印象付ける形になった。

     一段と市場をゆがめ、日本経済が将来重大な混乱に陥るリスクは高まる一方だ。突然の日銀の発表に市場は動揺し、原油安も相まって、東京市場では週明けも株安が続いた。

     今回の補完策は大きく三つの措置からなる。

     まず、従来より満期までの期間が長い国債を多く買えるようにするものだ。日銀は大量の国債を金融機関から買っているが、その結果、市場に出回る国債の品薄状態が深刻化している。満期までの期間が短めの国債では、マイナス金利という、借金する側がもうかる異常事態が続く。

     このまま量的緩和を続けると支障をきたしそうなため、日銀が買う国債の種類を多様化して対処しようとなったわけだ。しかし、保有残高を年80兆円のペースで増やす政策を維持すれば、いずれまた壁が見えてくるだろう。一方、国債市場における日銀の存在がさらに大きくなることで、購入の手を緩められなくなるリスクが高まる。緩めようとした途端、価格が暴落しかねないのだ。

     2番目の柱は、不動産投資信託(REIT)の購入に関するものだが、こちらも今のままでは早晩買い入れの上限に達してしまうので、上限を引き上げておこうという措置である。日銀による保有の比重が高まることで、市場がゆがんでいくのは、国債と同様だ。

     日銀が買い入れる株式投資信託に新たなタイプを設け、年3000億円を投じるというのが第3の柱だ。設備投資や賃上げに積極的な企業の株を集めた投資信託が対象という。安倍政権が重視する課題と重なる。

     だが、民間に委ねるべき投資行動に中央銀行が影響を与えようとするのは間違いだ。政府の政治的思惑から独立した存在という、中央銀行のあるべき姿にも反する。

     三つの措置はいずれも6対3の多数決で決まった。反対した3人が市場に明るい金融界出身だったことを重く受け止めるべきだろう。

     米国では、物価上昇率が目標を大きく下回っているにもかかわらず、中央銀行が量的緩和を終え、利上げを開始した。日銀はいまだに2%目標の短期実現に固執し、量的緩和を進めることも引くことも大きな危険を伴う、抜き差しならない状況に自らを追い込みつつある。危ない実験が失敗した時、苦しむのは国民だということを忘れてはならない。

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