ドローン規制 活用との両立図りたい
小型無人機ドローンの飛行ルールを定めた改正航空法が今月、施行された。人口密集地での飛行は原則禁止で、禁止空域での飛行には国土交通相の許可や承認が必要になる。
今年4月、首相官邸の屋上に、男がドローンを落下させた事件がきっかけだった。
空港周辺を除けば、高度250メートルまでならば、ドローンを飛ばすことを直接禁じる規制がなかった。その後、法規制の議論が加速した。
ドローンは官民さまざまな分野で活用が進んでいる。一定のルールの下で飛行の安全性を確保することは大切だ。政府はルールの徹底を図ってもらいたい。
飛行が禁じられる人口密集地は、国勢調査で人口集中地区とされた場所で、東京23区はほぼ全域が対象になる。その他、夜間の飛行も禁止される。操縦に当たっては、目視の範囲内で常時監視して飛行させることや、多数の人が集まる場所の上空で飛行させないことも求められる。
一方で、安全だと判断されれば、禁止空域での飛行が許可されることもある。その場合でも、高度によっては、航空機が機体を認識しやすいようにライトをつけることなど、条件が付く。
新たなルールを十分に知らない人は少なくないとみられる。違反した場合は罰金が科せられるだけに、国交省は丁寧な説明と安全指導を心がけてもらいたい。
ドローンは、事故や災害時の捜索や救助、スポーツ大会の警備など公的な用途で幅広く活用されている。
農薬の散布や森林の管理といった分野に使われることも多い。
外出が困難な高齢者のために高層住宅に商品を宅配するといった商業活動での活用も計画されている。
成長分野であるドローンに対する産業界の期待は大きい。ルールが明確になったことを歓迎する声が聞かれ、今後さらに導入は進むだろう。
ただし、なお課題は残る。
多数のドローンが飛べば、思わぬ事故が起きる可能性が出てくる。物を運ぶ際の落下対策など、産業界は安全の根幹に関わることへの備えに万全を期してもらいたい。また、メーカーは、機体の性能向上に取り組んでほしい。
今回のルール作りでは、機体の登録制度や操縦者の免許制度の導入は見送られた。
米国では、個人が趣味で持つドローンについて、登録義務を課すことになり、今月から運用が始まる。テロ防止の観点からも規制のあり方を議論する必要があるだろう。
ドローンの機能は日進月歩で進化している。対策は常に見直し、柔軟に規制と活用の両立を図っていくことが望ましい。