衆院改革答申案 現実的な策ではないか
衆院議長の諮問機関「衆議院選挙制度に関する調査会」が衆院定数を10議席削減する答申案をまとめた。現在の小選挙区比例代表並立制の骨格を変えずに、「1票の格差」是正という緊急課題に応えるためには答申案は現実的な内容だと考える。もちろん、最終的に判断するのは国会だが、もう先送りは許されない。与野党は早急に結論を出すべきだ。
答申案は議席配分に関して今の制度より人口比を反映しやすい「アダムズ方式」という仕組みを採用。2010年の国勢調査で計算すると定数は東京都で3増、埼玉、千葉、神奈川、愛知の4県で各1増となり、青森など13県で各1減となる。
これにより都道府県間の格差は最大1・621倍(愛媛県と鳥取県)となって、現在の1・788倍(東京都と鳥取県)に比べて若干改善する。昨年末の衆院選での小選挙区の「1票の格差」について、最高裁は先月、「違憲状態」との判断を下した。この憲法上避けられない緊急要請に応える一つの方法といえる。
一方、比例代表は東京ブロックの定数を1増し、東北、北関東、東海、近畿、九州の5ブロックで各1減する。小選挙区と合わせて10減が実現すれば、衆院の総定数は戦後最も少ない465となる。
日本は先進各国に比べ国会議員数が決して多いわけではない。「何人ならば適正か」は議論の分かれるところだ。単に減らせばいいという考え方は、ひいては議会不要論につながりかねず、短絡的だというべきである。調査会の中でも定数削減にはさまざまな意見があったという。
ただし、民主党政権下の12年秋、当時の野田佳彦首相と自民党の安倍晋三総裁(現首相)が消費増税に合わせ「国会も身を切る覚悟が必要」として定数削減を合意した経緯がある。約束が口先だけで終われば政治不信は今以上に拡大するはずだ。
それを踏まえれば答申案が10削減を提案したのも理解はできる。また並立制自体を変える抜本改革を求める声もあるが、変更にはさらに時間をかけた国民的議論が必要だろう。
答申は来月中旬、正式に提出される。ところが議席減となる県を地盤とする議員を多数抱える自民党からは早くも反発が出ている。公明党や民主党、維新の党は答申案を基本的に前向きに評価しているが、共産、社民両党などは元々、定数削減に反対だ。このため与野党協議は難航しそうで、改革が次期衆院選に間に合うかどうかは微妙な情勢だという。
しかし、与野党協議では一致点を見いだせなかったから第三者機関に議論を委ねたことを忘れてもらっては困る。再び結論を先送りすれば政治不信はもっと広がることになる。