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スイス「最低生活保障」否決へ 国民投票、働く意欲低下懸念

2016/6/5 23:11
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 【ジュネーブ=原克彦】スイスが5日実施した国民投票で、すべての住民に無条件で毎月一定額を支給する「最低生活保障(ベーシック・インカム)」の導入が否決されることが確実になった。最低生活保障を導入する代わりに年金や失業手当を廃止する提案だったが、財源不足や国民が働かなくなることへの不安が強かったもようだ。

 ベーシック・インカムの具体的な支給額は提案の可決後に決める段取りだった。市民運動家らは月額で大人が2500スイスフラン(約27万5千円)、子供は625スイスフランを提唱していた。スイス公共放送は開票の途中経過から8割近くが反対したと予想。賛成派が逆転する可能性はほぼなくなった。

 政府は現在の年金や失業手当を充当しても財源が不足すると指摘し、反対するよう呼びかけていた。経済界も働く意欲が大幅に下がるとして強く反対したほか、労組は想定する支給額では収入が減る年金受給者もいるとの理由から反対した。右派、左派とも明確に賛成する政党はなかった。

 これに対し賛成派は貧困対策に有効なことや、社会保障の一本化で行政の効率化につながると主張。提唱する支給額は物価が高いスイスでは豊かに暮らせる水準でなく、勤労意欲の低下にはつながらないとしていた。

 ベーシック・インカムは失業問題など市場経済の副作用を是正する仕組みとして期待される一方、ばらまき政策に陥る懸念や労働者が働く動機を失うとの批判も多い。資本主義国家では本格的に導入した事例がないこともあり、スイスの投票結果が注目されていた。

 直接民主制が浸透したスイスでは10万人の署名が集まれば、国民からの提案を投票に諮ることが決められている。ベーシック・インカムの提案は、制度の実現よりも問題提起を目指した面もある。所得を巡る案件では2014年に時給22スイスフランの最低賃金を設ける提案を否決したことがある。

 5日の国民投票では、公共サービスの改善に向けて通信会社スイスコムなど政府系企業を非営利にする提案の賛否も問われたが、反対多数で否決される見通しだ。

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