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ネット上の中傷 有効な救済策が必要だ

 インターネット上で人を中傷したり、プライバシーを侵害したりする書き込みが後を絶たない。

     法務省によると、全国の法務局に寄せられたネットの人権侵害事案は年々増え、2014年は1429件に上っている。

     氷山の一角だろう。サイトの管理者や検索会社に削除を求めるケースは増えているが、手続きの煩雑さや削除の基準など課題は多い。

     20年東京五輪のエンブレムに採用された作品をめぐっては、ネット上の指摘で問題が発覚した。一方で、デザイナーの個人情報や中傷が書き込まれ、拡散した。「ネット私刑(リンチ)」とも呼ばれている。

     川崎市で中学1年の男子生徒が殺害された事件では、逮捕された少年の家族のプライバシーまでネット上にさらされた。

     個人に非があったとしても、決して許される行為ではない。

     こうした場合、法律に基づいてサイトの管理者に削除を依頼できる。管理者は、明らかな権利侵害を把握しながら放置すれば損害賠償責任を負う。だが、管理者が誰だか分からないサイトが多く、連絡がつかないこともある。また連絡がついて削除依頼しても、簡単に応じてもらえないことが多い。

     裁判所に削除の仮処分を申し立てる方法もある。東京地裁でも増えているが、書き込みが拡散した個々のサイトごとに申し立てをする必要があるなど時間と費用がかかる。削除の手続きをスムーズにする法的な仕組みが必要ではないか。

     ネット情報の削除を個人や企業から請け負うIT企業まで出てきた。東京のある中堅企業には、多い日で数十件の相談がある。費用は個人が月数万円以上、企業は15万〜50万円かかるという。

     同社の幹部は「サイトの管理者と交渉するほか、検索しても目立たなくするテクニックもある。需要はもっと増える」と言う。

     サイトの管理者とは別に、ヤフーやグーグルのような検索会社に削除を依頼するケースも増えている。ヤフーは今年3月、プライバシー保護の観点から、削除の基準を作って公表した。性的画像、病歴など明らかな権利侵害があると判断すれば、依頼に応じている。

     ただし削除する場合、表現の自由や知る権利との兼ね合いを考慮しなければならない。現状では、検索会社の判断に委ねられている。

     削除の基準をどう考えるか、さらに議論が必要だ。

     ネットへの匿名の書き込みは無責任になりやすい。ネット社会のリスクやモラルを子供が小さい時から学校で教えることも大切だろう。

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