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香川博人香川博人  - ,,,,,  11:00 PM

母国レースで初優勝! エアレース・パイロットの室屋義秀さんが考えるチームリーダーとしてやるべきこと

母国レースで初優勝! エアレース・パイロットの室屋義秀さんが考えるチームリーダーとしてやるべきこと

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Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool


6月5日に開催された「レッドブル・エアレース千葉2016」マスタークラスで念願の初優勝を果たしたアジア人唯一のエアレース・パイロット、室屋義秀(むろや・よしひで)さん。レース後の記者会見では、予選が強風と高波で中止となり、本戦では機体にトラブルが起こるなど、アクシデントが続くなかで優勝できたことについて「チーム全員が限られた時間の中で最善を尽くしてくれた」と語っていました。

では、エアレース・パイロットであり、「チーム FALKEN」のリーダーでもある室屋さんは、世界最速のエアレースシリーズで優勝するためにどのようなマネジメントを行ってきたのでしょうか。前回の「世界チャンピオンになるためのチーム力」に続き、今回は「チーム力の向上とリーダーのあり方」について聞いてみました。


室屋義秀(MUROYA YOSHIHIDE) /エアレース・パイロット
lh_160602_airrace_prof.JPG1973年生まれ、福島市在住。アニメ『ガンダム』に憧れ20歳で渡米して飛行機のライセンスを取得。24歳のときに本格的なエアロバティックス(曲技飛行)を学ぶために再び渡米し訓練を積む。その後、曲技飛行世界選手権では日本代表に選ばれ、日本のエアショーでも活躍。2009年、36歳で『レッドブル・エアレース』に初参戦。2015年シリーズの第5戦アスコット(イギリス)、第7戦フォートワース(アメリカ)で3位となり、年間総合6位を獲得。現在、全日本曲技飛行競技会のサポートなどスカイスポーツの振興や地元福島の復興支援活動にも積極的に参画している。


骨太の目標と向かう方向を提示するだけ。あとは個人の創意工夫に任せる


lh_160606_airrace_01.jpg▲「レッドブル・エアレース千葉2016」に向けた最終調整に忙しいなかインタビューに答えてくれた室屋さん


── 2016年シーズンからチームのメンバーが拡充されましたが、どのような構成と役割になっていますか?

室屋氏:私がチーム全体のマネジメントを行い、実際の現場ではレース戦略やコスト計算ができて、パイロットの思考も理解できるチーム・コーディネーターがチームをまとめる役割を担っています。

そして、チーム・コーディネーターの下に、レースで戦うコースを分析するレース・アナリスト、機体を整備するチーム・テクニシャン、機体の空力設計や電子制御プラグラムなどを担当するレース・エンジニアがおり、私を含めて4カ国7名で構成されています。

── 室屋さんは「2016年シーズンはチームの総合力で年間表彰台を目指す」と語っていますが、多国籍チームをまとめる上で大切にしていることは?

室屋氏:どんなシーンにおいても同じだと思いますが、きちんとした目標を設定して、チームとして共有しながら向かって行くことですね。そして、目標を達成するために、具体的に何をすべきか、最低限の考えを提示しておくことです。

国籍や文化が違うと、同じ方向に向かっていても考え方や進め方が異なるので、ある程度の指針を示しておく必要があります。ただし、その先はチーム全員が各分野のプロフェッショナルなので個人の自由に任せていいのかなと思っています。


勝つために何をすべきか。個々で考えたことをチームで実践してくことが1番の近道


lh_160606_airrace_02.jpg▲室屋さんが「レッドブル・エアレース千葉2016」で優勝を決めた歴史的瞬間 Samo Vidic/Red Bull Content Pool


── リーダーとして室屋さんが考えるチームづくりとは?

室屋氏:たとえば、エンジニアはテクニカルな部分を突き詰めて話をしてきますが、私はそれほどメカニックに詳しくないので最後までは言いません。その部分はチーム・コーディネーターに任せています。チームリーダーとしての私の役割は、安全上の問題や予算的に課題がないか、研究開発だけに集中してレースへの対応が疎かになっていないかなど、全体の進捗をチェックすることです。

それ以外に問題がなければ、レースで勝つためにそれぞれの分野で考えた新しい試みを積極的に実装テストしてレースへの導入を検討するようにしています。コンピュータのシミュレーション技術は発達していますが、テストフライトしてみないと本当の状況はわかりません。実際にやってみることでチームとしての知見や経験が増えるので、半分失敗しても次につながると思っています。

── 同じ目標に向かっていながらも自由な環境が与えられ、自身の考えを試すことができる。仕事をする上でやりがいを感じる環境ですね?

室屋氏:エアレースは結果が数字として表れるのでわかりやすく、勝てば嬉しいし、負ければ悔しいので次こそはと頑張る。そのモチベーションを維持するためには、おもしろがったり、楽しんでいないと続かないし、挑戦する気持ちがないと勝利に近づくことはできませんからね。


目標に向かってチームを導けるか。その答えは自分の中にしかない


lh_160606_airrace_03.jpg▲ピットでレースを見守っていた「チーム FALKEN」のメンバーたちが見せた優勝が決まった瞬間の表情 Jörg Mitte//Red Bull Content Pool


── 昨年のインタビューで、エアレース・パイロットとしての「判断力」についてお聞きしましたが、リーダーとして判断・決断するときに気をつけていることは?

室屋氏:以前お話したように、レースを戦うパイロットは、飛行中にあれこれ考えている余裕がないので、空へ飛び立つ前にさまざまな状況をシミュレーションして、判断する引き出しをたくさん用意しておきます。チームの場合も年間プランを基に進めているので、同じように、こうなったらこうするという判断材料をいくつも想定して自分の中に持つようにしています。

ただし、チーム内の人間関係で予期せぬできごとも起こります。たとえば、考え方の違いでわだかまりが起これば、それを取り除いて進むべき方向を決めるのもチームリーダーの仕事です。そうした判断を迫られるときに気をつけているのが、自分自身が1つの感情に取り憑かれていないかを確認することです。何通りかあるはずの解決策を考えて判断できれば良いわけですが、忙しくなると自分を見失い、目の前の問題に対処するという感情だけが先走って判断を誤ってしまうことがあるからです。ですので、もし自分の判断力が鈍っているなと自覚したときは、決断を急がないようにしています。


lh_160606_airrace_04.JPG▲レース後の記者会見で、最善を尽くしてレースへ送り出してくれたチームに感謝し、初優勝を果たせた喜びを語る室屋さん


── では最後に、理想とするチームリーダー像はありますか?

室屋氏:これといったスタイルはありません。チームリーダーは行き先を決めて、旗を振ってチームの士気を高め、すべての責任を取るだけです。目標となる行き先を決めるのは極めて難しいことですが、100%を少し超えた力を発揮すれば到達できそうな目標を考え抜いて、そこへ向かってチーム全体を導けるか、みんなが共に進もうと思える環境をつくれるかだと思っています。




チームとしての目標設定、モチベーションの維持、突発的なトラブルへの対処など、室屋さんが実践していることは、チームを率いるリーダーの役割としてビジネスでも参考にしたいですね。

さて、レッドブル・エアレース2016の次戦は、7月16日、17日に行われるブダペスト(ハンガリー)大会です。チームとしてさらなる熟成をはかった戦い、2戦連続の優勝に期待しましょう。

レッドブル・エアレース2016
室屋義秀オフィシャルウェブサイト

(文/香川博人 写真/神山拓生)

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