元世界ヘビー級チャンピオン モハメド・アリ氏 死去

元世界ヘビー級チャンピオン モハメド・アリ氏 死去
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プロボクシングの元世界ヘビー級チャンピオン、モハメド・アリ氏が、アメリカ西部の病院で亡くなりました。74歳でした。
モハメド・アリ氏は12歳でボクシングを始め、1960年、ローマオリンピックのボクシング、ライトヘビー級で金メダルを獲得しました。プロに転向したアリ氏は、1964年、22歳でヘビー級の世界チャンピオンになりましたが、3年後、ベトナム戦争への徴兵を拒否したことでタイトルを剥奪されました。
その後、アリ氏はプロボクシングに復帰し、1974年に世界王座を奪還して通算19回の防衛を果たし、ヘビー級ながら華麗なフットワークを見せるボクシングスタイルは、「チョウのように舞い、ハチのように刺す」と評されました。通算成績は56勝5敗で、このうち37勝がノックアウト勝ちでした。
一方、アリ氏は、アメリカのレストランで受けた人種差別に抗議して、ローマオリンピックの金メダルを川に投げ捨てたほか、黒人の人権擁護を呼びかける集会に参加するなど、人種差別の撤廃を国際社会に訴えました。
引退後は、難病のパーキンソン病を患って闘病を続け、1996年のアトランタオリンピックの開会式では、聖火台に火をともしました。また、アリ氏は病をおして、アメリカ軍兵士の慰問などの社会活動を続け、2005年には、アメリカ政府から、最高の栄誉とされる「自由勲章」を贈られました。
アリ氏は3日、アメリカ西部・アリゾナ州の病院で74歳で亡くなりました。

世界のメディア 大きく伝える

世界各国のメディアが、モハメド・アリ氏の死去を速報で伝えました。
このうち、アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは、アリ氏を「ボクシングと20世紀の巨人」と評したうえで、「オーソドックスではないボクシングスタイルをリングに持ち込み、最もわくわくさせてくれた。愛されもし、嫌われもしたが、50年間にわたって地球上で最も著名な人物の1人であり続けた」と伝えています。
アメリカのABCテレビは、アリ氏の生前の活躍を振り返る特別番組を放送するとともに、ツイッターに、「伝説であり、時代の象徴であり、ヒーローだった。安らかに眠ってください」と投稿しました。また、ロイター通信は、「最も偉大なボクサーだった。ハンサムかつ大胆で、言いたいことを言い、徴兵を拒否して黒人の運動のシンボルになった」として、アリ氏がアメリカの公民権運動に大きな影響を与えたと伝えています。
さらに、フランスのAFP通信は、「人々に愛された74歳のヒーローが、数十年間、パーキンソン病と闘った末にこの世を去った」としたうえで、リングの外でのアリ氏について、「イスラム教への改宗や、ベトナム戦争や公民権運動を巡る言動を中傷されたこともあったが、みずからの信念を曲げず、最後には称賛を勝ち取った」とたたえました。

オバマ大統領「同じ時代過ごせたことに感謝」

モハメド・アリ氏が亡くなったことについて、オバマ大統領は、4日、ミシェル夫人と共に声明を発表しました。
この中で、「世界中の人たちと同じように、私もミシェル夫人も彼の死を嘆き悲しんでいるが、同じ時代を過ごせたことを幸せに思い、神に感謝したい」と追悼しました。そして、オバマ大統領は「リングの上で戦うだけでなく、人々の権利のためにも戦ってきた。キング牧師や南アフリカのマンデラ元大統領などと共に立ちあがった。彼の戦いは困難で、周囲からは敵視され刑務所に送られそうにもなったが、彼が勝ちとったものこそが、まさにいまのアメリカを示すものとなっている」として、宗教や人種の差別の撤廃を訴えてきたアリ氏の功績をたたえました。

タイソン氏「神がチャンプを迎えに」

プロボクシングの元世界ヘビー級チャンピオンモハメド・アリ氏が亡くなったことについて、親交のあった同じ元世界ヘビー級チャンピオンのマイク・タイソン氏は、自身のツイッターに、アリ氏と談笑する写真とともに、「神がチャンピオンを迎えに来た。さようなら、偉大な人」と投稿し、ボクシング界の英雄の死を悼みました。

パッキャオ氏「偉大な人を失った」

イギリスのキャメロン首相は自身のツイッターで、「モハメド・アリ氏はリング上におけるチャンピオンだっただけでなく公民権におけるチャンピオンでもあった。あまりに多くの人々の模範となった人だ」と投稿し、アリ氏の功績をたたえました。

また、フィリピンの上院議員で、ボクシングの元世界王者のマニー・パッキャオ氏は、自身のツイッターで、「われわれはきょう、偉大な人を失った。あなたはいつまでも史上最高であり続けるだろう」と追悼のコメントを寄せました。
アリ氏の娘で、父親に関する書籍も出版している作家のハナ・アリさんは、自身のツイッターで、「父は神のもとに旅立ちました。神のご加護がありますように。お父さん、あなたは私のすべてです」とコメントしています。