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第27~30話 コボルド・フクロウ・警備隊
ギルド奥の魔窟から戻ってきた僕らは、当初の予定通り『依頼』を受けるべく、依頼書が貼ってある『ボード』の前に立つ。
その途中、『ナーガ』の一件で有名になった感じの僕らを勧誘しようとしてきた冒険者を適当にあしらいつつ、ボードに貼ってある依頼表を見る。
○薬草の採取
場所:ウォルカ東の平原
報酬……銀貨3枚(納品された物品の量と質により変動あり)
○遠足の警備
学院の遠足行事の警備および生徒達の安全確保
報酬……銀貨5枚(危険手当等で変動あり)
○コボルドの討伐
リトラス山中腹の山小屋に住み着いたコボルドの討伐
報酬……銀貨10枚
○遺跡調査隊の護衛
『ナーガの迷宮』の再調査を行う調査隊の護衛。複数日。
報酬……銀貨15枚(危険手当別途)
上2つはさっきもあったな……
とりあえず、子供は苦手だから2つ目は除外して、と。
一番下の『ナーガの迷宮』の再調査って、考古学者か何かの依頼だろうか?
ある意味ホームだけど、コレ多分、僕が『ナーガ』しとめたことに関係してる調査だよね……他に隠し部屋無いのか、これでもう安全なのか、とか。
そんなとこに、渦中の『黒ずくめの冒険者』である僕が行ったら、めんどくさいことになるのは目に見えてるので、これも却下。
となるとやっぱこれかな。『コボルドの討伐』。
討伐任務ってことで、達成条件もわかりやすい。
エルクに目で確認してみると、『いいんじゃない?』って感じの視線が帰ってきた。
「といっても、アンタにはどっちみち、退屈な依頼になっちゃうかもしれないけどね。コボルドはE程度の魔物だし」
「いやいや、そんなことないよ。状況とかも考えれば、いい経験になるって。多分」
「私にはそうかもね。最近、あんたと一緒にトレーニングしてる成果を試す機会にもなりそうだし……ん?でもコレ、討伐数が書かれてないわね」
あれ?じゃあ、どのくらい狩っとけばいいのかわかんないんだけど?
「そこにいる奴全部、ってことだろうけど……数までははっきりわかってないのかしら?となると、やる方としてはちょっと不都合ね。たまにあるのよ、こういうの」
これだと、現地行って戦っても、どれだけ倒しておけば依頼達成になるのかわかんないな。受付で相談したら何とかなるんじゃないかな?
「いや、それもそうなんだけど、単に、相手の数が予想以上に多いかもしれない、って可能性も考えなきゃいけないでしょ?せいぜい10匹くらいだと思っていざ行ったら、50匹とか100匹いました、じゃ大変だし……あんたなら楽勝かもしれないけど」
「いや、それはさすがに……時間かかると思う」
「……無理、とは言わないのね」
そんな感じで、僕らが微妙に緊張感に欠ける会話を繰り広げていると、
「へぇ~、面白そうな話してるね、君たち?」
いきなり後ろから、そんな声が聞こえた。
僕とエルクが振り返ると、そこには、1人の男が。
背は少し高めで、それなりに均整のとれた体つき。
橙色の髪で、顔立ちはいいかもだけど、耳にはピアスがついてる。
イケメン、って感じじゃないな。何というか……チャラ男?肌は黒くないけど。
「見かけない顔だけど、君達初心者?なんか、すごく頼もしそうな話してたから、気になっちゃったんだけどさ」
「……あんた誰?」
と、エルク。うわ、警戒心丸出し。
「ああ、ごめんごめん、自己紹介しなきゃね。僕はザリー。まあ、一応冒険者やってるんだ。よろしく」
と、白い歯(きらーん☆)を見せてにっこり笑うチャラ男……もとい、ザリー。
しかしそれにも、エルク無反応。いや、気持ちはわかるけども。
明らかに、絡み方が不自然……っていうか、気になったも何も、最初から声かける気だったってのが丸わかりな感じだから。
それ差し引いても、見るからに軟派だし。根が真面目なエルクには、声かけられるだけでもいい気分はしないだろう。
目的は、例によって勧誘か……それとも、単にナンパか何かか……
「それでさ、君たち、何か依頼書見て困ってたみたいだったけど……ん?君ってもしかして……」
と、ザリーが僕を見て何か言おうとした所で、
「おいザリー、何してんだ?」
お、増えた。
そんな野太い、低い声と共に、そのザリーの背後から、知り合いか何かと思しき、2人の男がさらにこっちにやってきた。
見ると2人とも、中年のオヤジって感じだ。
色黒で中肉中背、無精ひげにいかつい顔。
片方は筋肉質のゴリマッチョ、もう片方は肥満体でメタボな体格。
その2人が、ザリーと話してる僕らの所に寄ってきた。
どうやら、チャラ男ことザリーの連れか何かみたいなんだけど、ザリーが簡単に状況を説明すると、その2人はこっちを……性格には、僕の隣に立っているエルクを視界に納めるなり、なんというか……何考えてるか大体わかる感じの笑みを浮かべた。
そして、何をいうかと思えば、
「なあ嬢ちゃん、困ってるんだったら俺たちが手伝ってやろうか?」
と、ニヤニヤ笑いながら……エルク単体に勧誘。
……オイ、僕は無視か。
「初心者だもんな、わからなくて困ることも多いだろ?何だったら、俺達が色々教えてやるからよ」
「そうそう、手取り足取り丁寧によ」
ゴリマッチョも加わって、下心丸出しの勧誘。
いやあ、よくもまあこんな露骨な勧誘できるな……成功すると思ってんだろうか?
「そうだそうだ、俺達これから依頼受けようと思ってんだけどよ、よかったら嬢ちゃんも一緒にどうだ?」
「そりゃいいぜ!いい練習になるし、いざとなったら俺達が手伝ってやれるからな!ん?どうだ?」
「せっかくだけど遠慮するわ。連れもいるから」
と言って、僕の肩に手を添えるエルク。
そこで初めて、中年ズの視線が僕に向く。
これまた、露骨に面白く無さそうな『何だよコイツは?』的な視線。……よくもまあそんな見事に使い分けられるなアンタら。
「コイツか?なんか頼りなさそうじゃないかよ、やめとけやめとけ」
「そうそう、こんなヒョロイ奴より、俺達みたいなベテラン冒険者と一緒にいて教わった方が成長するぜ?」
「おう、俺達ゃ2人ともDランクだからな。初心者の面倒見るくらい、わけねえぜ?」
……僕より下じゃん。
いやまあ、Dなら一応、一般的に『一人前』って言っていいレベルなんだろうけど。
前にエルクも、特に才能もない一般人が努力で到達できるレベルの限界が、DかC、よくてB前後くらいだ、って言ってた。
それ考えると、まあ、一人前っちゃあ一人前か?……これで?
あ、ちなみにアイリーンさんの話だと、何を隠そう僕をBランクにするように最終決定したのはアイリーンさんらしい。『どうせそのくらい強いんだから、場外時間かけて下積みさせることもないでしょ。身近にコーチ役もいるみたいだし』だってさ。それで僕、いきなりBになったわけだ。
で、そのまましばらくナンパにしか聞こえない勧誘が続いたんだけど……当然エルクが首を縦に振るわけもなく、適当にあしらってさっさと僕らの依頼を受けることにした。
☆☆☆
ギルドの受付に、コボルド討伐の依頼票を提出し……そのランク差ゆえにか、リィンさんから若干の『えー』な視線を受けた――まあ、Bランクの僕がEランクの依頼を受けてるんだから仕方ない――その1時間後。
僕とエルク、その山小屋があるという『リトラス山』の山道を登っていた。
たぶん、もうちょっとで中腹だから、そろそろ着くと思うんだけど。
結論からいうと、『リトラス山』は、『ナーガの迷宮』よりもさらに安全……っていうと言い方が若干変かもしれないが、それくらい魔物の危険が少ない所だった。
出てくる魔物は、そのほとんどが『迷宮』でみたことあるものばかりだったし、そのほとんどが、エルク1人でも十分に対処できるくらいの危険度の低さだった。
ただ一度だけ、『迷宮』では見なかった……しかし、あまりにも有名な魔物『スライム』なるそれが出てきた時は、意味もなくテンションが上がった。
青い紡錘形に顔があり、笑みを浮かべている……というようなおちゃめなものではなく、核と液状の体から構成される、アメーバのような見た目ではあったけども。
体液が酸性らしいが、遠くから石なんかを投げて核を破壊すれば終わりだったし、一回ためしに触ってみたけど、僕の肌を溶かすことはできていなかった。かゆくもなかったし。
そんなわけで、特に何か目立った苦労もなく、歩みを進めている僕らである。
「あー、空気美味しい。弁当とか持ってくればよかったかな」
「クエストをピクニック代わりにするのはやめなさい」
と、毎度おなじみ呆れ口調のエルクのツッコミ。
ちなみにギルドからここまで、通常なら徒歩で、早足でも5時間弱、馬車でも、2時間弱くらいはかかる道のりである。ってエルクが言ってた。
だから通常は、この手の任務でその『リトラス山』とやらに行く際は、馬とかを用意できない場合は、野営か、途中にある村とかでの宿泊を挟んで、外泊込みでやるケースが多いらしい。
その距離を僕らが、途中昼食を挟んでなお、たったの1時間でどうやって来たかというと、至極単純。
僕がエルクを背負って、走って来たのだ。風の魔力で強化した脚力で。
あと、風圧とかでエルクがしんどくならないように、また『他者強化』使って、エルクの基礎的な身体能力とかも微妙に強化して。密着してたから、発動も楽だった。
それでも酔いそうになってたけど……まあ、これも訓練の一環ってことで。
「何が訓練の一環よ!?ホットドッグ戻す所だったでしょ!」
「まあまあ。急いでたんだし、仕方ないでしょ。それにいずれはエルクも、あのくらいの速さで走って移動することもあるかもしれないんだから、練習だよ練習」
「んな未来くるわけないでしょ!?私普通の人間なのに!」
「でも、エルクだって一応、魔術使えるんでしょ?」
「いや、使えるけど、だからそれはさぁ……」
ああ、そうそう。
今まで触れてなかったけど、実はエルク、魔術も少しだけ使える。本当に少しだけ、らしいけど。
魔術っていうのは、訓練すれば誰でも多少は使えるわけではなく、そもそも才能が無ければ使うこと自体できないもの。
実際、冒険者の半分くらいは、魔術に縁の無い肉体派の人達だそうだ。
エルクにはその才能があって、特に『風』の魔力を扱うのが得意だったらしい。あくまで、ほかに比べれば、だけど。
しかし、彼女の幼少時代の生活環境は聞いていた通りであるため、その道に詳しい誰かに師事したりする余裕も時間も無かった。
彼女のお母さんも魔術にはさほど長けてはいなかったようなので、他の技能と違って、魔術に関してはさわり程度の訓練しか受けられなかったそうだ。
結果、魔術の才能を伸ばすことは出来なかったため、彼女はすっぱりと諦め、その分を他の技能の訓練に当てていたのだそうだ。
そのため、今現在彼女はほとんど魔術は使えない。せいぜい、うちわで扇いだ程度の風を起こす程度で、部屋の換気くらいにしか使えないという。
けど、僕からしたらそれ、すごくもったいないし、そこも含めて彼女の『伸びしろ』だと思うので、これから一緒に訓練していく中で、出来る限りその辺もどうにか伸ばしてあげられたらな、と思っている。
幸い僕は魔術に関しては、この『マジックアーツ』を覚える段階で母さんからしこたま叩き込まれたので、それなりに扱い方に心得はあるし、むしろ自分で進んで研究していた。
その途中、才能の問題で、自分には使えないような魔術も、いくつも開発した(涙)。
なので、その時の記憶をたどれば、それなりのレベルで指南することくらいはできるかもしれないし、いくつかそういう術を教えることも出来る。
もちろん、母さんから安全認定を受けたものに限るけども。
「だからって、あんたみたく、馬より速く走って息切れ一つしない、なんてレベルにはなれない思うんだけど……」
「どうかな?僕は案外、練習すればエルクもそのくらいできると思うけど?」
「何それ、根拠は?」
「勘」
「……さいですか」
呆れ、黙るエルク。……これ以上話し合っても疲れるだけだと判断したか。
けど、僕はけっこう本気でそう思ってるんだけどね……。
何でかって?それはまた後で。
とまあ、そのまましばらく歩いていると、ようやく、目的地に着いたようだ。
林道を進んで、少しだけ開けた感じの、地ならしされたような場所に出た。
そこには、簡単な作りだけど、それなりの大きさの山小屋が。
そしてその周囲には、2足歩行する、犬の頭をもった魔物……コボルドが、数匹うろついていた。手には、棍棒や、さび付いた剣などの武器をもっている。
とりあえず、近くの茂みの陰に隠れて、様子を伺うことに。
受付で聴いた話だと、コボルドの正確な数は、やはりわかっていないらしい。
ただしコボルドは、ゴブリンやオークなんかよりも賢い分臆病で、そこが危険だと判断した場合、生き残りがいても勝手にどこかへ逃げ去ってくれるという。
なので、ある程度の数を倒して、その証拠を持ち帰れば、クリアになるそうだ。
ちなみに、討伐系の依頼でその完了を証明する証拠となるのは、大抵の場合、その魔物の素材である。体のどこでもいい魔物もいれば、指定されている魔物もいる。
「コボルドのは……何だっけ?」
「手首よ。左右どちらでもいいけど、ごまかしを防ぐために、どちらかに統一して持ってくることになってるわね」
……手、切り取るの?魔物とはいえ、人の形してるやつの?
若干抵抗あるけど……まあ、こういう世界、こういう業界なんだと諦める。
「……見たところ、4,5匹ってとこだけど……小屋の中にまだ何匹かいるわね」
「それでも、たいした数じゃないと思うよ。作戦とか必要?」
「囲まれないようにだけ気をつければ、別に要らないと思うわ。あと、わかってるとは思うけど、山小屋を傷つけないようにね」
「了解。じゃ、行きますか!」
作戦会議(?)も終わったので、早速行動に移ることにした。
ぎりぎりまで近づいて奇襲、っていう手も考えたんだけど、あいつら見た目『犬』だし……臭いでばれるかもしれない。
こっちは連中に対して風下だから、その心配は少ないと思うけど、コボルドの嗅覚や聴覚がどれほどのレベルかははっきりとはわからないからなあ。
これ以上近づいて気付かれて、奇襲にならなくなったら元も子もないので、さっさと片付けることにした。
それに僕の場合、この距離からでも、奇襲は可能なので。
僕は、すでに装着済みの手甲&脚甲のぐあいを確かめ、エルクもダガーを抜く。
そしてさらに僕は……足元に落ちてる、適当な大きさ――ちょっとした撲殺が出来るくらい――の石を拾うと、
(じゃ、1、2の、3で突撃ね。僕が突っ込んで大方引き受けるから、エルクは討ちもらしの始末お願い。できる?)
こくり、とエルクがうなずくのを確認して、僕は、手に持った石を、投擲フォームで振りかぶる。
(よし、行くよ。いーち……)
――ひゅぼごっ! ←僕の投げた石がコボルドAの頭を粉砕する音
「よし、ゴー!」
「2と3は!?」
「省略!」
「何それっ!?」
今のはその……ボケかましたとかじゃなくて、コボルドの1匹がこっちに気付いたみたいで、声上げそうになってたから……っていう理由がちゃんとあるんだけど、時間が無いので省略。あとで説明する。
石が激突した衝撃で、仲間の1匹の頭部が前衛芸術みたくなったことに驚いているコボルドたち。
今正に虚を突かれている状態の彼らに、僕は茂みから飛び出して、いきなり最高速度で突っ込んだ。
勢いそのままに、別のコボルドに飛び膝蹴りをかまして首の骨を粉砕。
さらにそのコボルドの肩を踏み台にもう一度跳躍。彼らの群れのど真ん中に着地した。
着地地点にさらにもう一匹いたので、武器を構えられる前に回し蹴りを叩き込み、同じように一撃で首を砕く。
この間僅か5秒。瞬く間に3匹もの仲間が葬られ、残る2匹のコボルドは、今ようやく、僕という敵の存在を認識していた。
もう、遅すぎたわけだが。
2匹のうちの一匹が、獲物である棍棒を振り回し、がうがうとうるさく吼えながら飛び掛ってきたけど、正直、脅威には見えない。
振り下ろされる棍棒をひらりとかわして、体重を乗せた肘で延髄に一撃。
茂みの向こうまで飛んで行った。……その前に事切れていただろうけど。
そして、残り1匹のコボルドはというと、僕に飛び掛ってこようとしたその瞬間に、背後からエルクに頚動脈を切り裂かれていた。
僕という、あまりに派手に襲来した敵に気を取られて、他の敵の存在の可能性を完全に失念していた結果だろう。首から血を噴出して、数秒びくんびくんと震えていた後、動かなくなった。
その一瞬後、予想通り、第2陣とも呼ぶべきコボルドたちが小屋の中から出てきた。
全部で6匹。なんだ、外にいる連中のほうが少なかったのか。
そして、小屋の前の状況を見て、僕達を敵として認識し、武器を構えて襲って……
……くるより前に、その中の1匹の頭に真っ赤な華が咲いた。
理由、さっき僕が投げた石が足元に落ちてたので、拾ってリサイクルしたから。
早くも1匹減った第2陣のコボルド達もきっちりしとめるため、僕とエルクは地面を蹴った。
☆☆☆
結局1分とかからずコボルドの殲滅は終わったわけなんだけども、そんな戦いの中で僕は、このところ成長著しいエルクの動きがやはりよくなってるのをあらためて感じ取った。
見違えるほど、っていうレベルじゃないけど、目に見えて動きに無駄がなくなっている。
今の戦闘でも、2匹のコボルドを同時に相手取って、危なげなく立ち回れていた。本人曰く、結構緊張してたらしいけど。
たった数日という短期間で、随分化けたもんだ……理由には心当たりががあるけど。
まずエルクは、決して弱くは無い。冒険者だったお母さんに教えられただけあり、技術も判断力も、それなりにある。
あくまで僕の視点だけど、少なくとも技術だけなら、十分に一般的なラインを超えているし……エルク個人の才能だってかなりあると思う。
ただどうしても、もっと基本的なもの、『経験』や『筋力』なんかが欠如していることが災いして、その技術を生かしきれない。
言ってしまえば、使いこなせない技術が大量に死蔵されてる、って感じだ。
もともとの体のつくりや、遺伝による所も大きいだろう。
加えてエルクは女性。男女差別するわけじゃないけど、基礎体力的にもちょっと厳しいところなのは事実だな。
身体強化の魔術でも使えれば別だけど、それだって一朝一夕じゃどうにもならない。
さらに、エルクの戦闘はほぼ完全に我流であり、誰かに師事したということがない。
そのためか、戦い方として形は出来てるんだけど、随所随所にコツや技能の欠落が見られて、荒削りだ。
多分だけど、誰かに師事していれば、訓練の過程で教えてもらえたであろうポイントをいくつか見逃しているのかもしれない。いやきっとそうだ。
その状態で、知識だけで知ってる技能を生かそうとしても、そりゃ上手くいかなくて当然ってもんだろう。
だからエルクは、お母さんから受け継いだ技能を生かせるだけのフィジカルを育てて、十分な経験を積んで、それらに肉付けする形で、彼女に必要な技を選んで覚えていけば、飛躍的に強くなる、と僕は思っていた。
さっきエルクに『勘』って言ったのも、あてずっぽうってわけじゃないんだ。
ともあれ、そんなエルクとの初ミッションも無事に成功したので、討伐証明部位であるコボルドの手首を切り取って麻袋につめる中、僕はふと、山小屋の向こう側に見える岩肌が、奇妙な形に崩れていることに気付いた。
何だろう?崖の下に、やけにたくさん砂礫が落ちて積もってて……あれ、最近崖崩れでもあったのかな?
エルクに聞いてみると、こないだの崖崩れのせいじゃないか、ってことだったけど……それってつまり、どっちみちここに山小屋があるのって危ないんじゃ……。
だって、あんな近くで崖崩れが起きてるんだし、魔物以前にさあ……
もし、山小屋の中で誰かが寝泊りしてる時に、崩れた土砂が山小屋に届いたり、山小屋のある場所の地面そのものが崩れたりしたら……
そんなことを考えながら、崩れた崖を眺めていた僕は……その砂礫の中に、一瞬、何か光っているようなものを見つけた。
証拠品の切り取りも終わったので、袋をエルクに預けて、ちょっとそこに行ってみると、砂やら小石やらの中に、何か白いものが埋もれていた。
しかも、やけに表面がつるっとしてて、光沢まである。
これ、石じゃないな。何だろ?
気になったので、周りに積もっている砂を払いのけて、取り出してみると……
「……卵?」
そう、卵だった。見た目は。
ただし、大きい。人の頭ぐらいある大きさの卵だ。……卵か?
この大きさだし、卵だとしても多分、魔物の卵じゃないかな……あんな崖崩れの現場で、よくもまあ割れずに残ってられたもんだ。
と、その時、
――ぽつり、
「「え?」」
☆☆☆
それから1分後、
今しがた、コボルド達から奪還したばかりの山小屋で、とりあえず一休みしている僕とエルクがいた。
理由は簡単。外がバケツをひっくり返したような超大雨だから。
山の天気は変わりやすい、ってよく言うけど、ここまで急に、しかもこんなゲリラ豪雨レベルにまで変わるもんなのかな? 音だけで下山を断念できるレベルのそれなんだけども。
まあ何にせよ、今は雨が止むのを待つしかないだろう。
この雨の中を山道を歩くのは危険が過ぎるし、見通しも悪くなってる。
ましてや、帰るために通らなきゃいけない道はほとんど獣道なんだから、雨に濡れていれば、足を滑らせたりする可能性もある。
それで滑ったその先が崖だったら、そりゃ悲惨なことになる。エルクの場合は単に物理的に。僕の場合は、迷子的に。
エルクも、いくら帰り道を覚えてるからって、この雨の中行くのはまずいだろうということなので、大人しく止むのを待っていることにしたんだけど……雨は中々止まず、そのまま何時間と経過してしまい、ついには夜に。
もう今日中の下山は無理だと判断した僕らは、今日はこの山小屋に泊まることにした。
一応、屋内だといっても魔物への警戒は必要だろうし、それ以前にこの大雨だ。土石流とかも怖い。
なので、片方が眠っている間、もう片方が起きていて番をする、ってことにした。
夜の前半はエルクに見張りをしてもらって僕が寝て、後半はエルクを寝かせて僕が起きていた。
そして、明け方、
東の空が、若干明るくなってきたかな~、って頃だった。
―――ぴしっ!
「ん?」
視界の端にあった、昨日、特に何も考えず、そのまま小屋の中に一緒に持ち込んでしまった、あの卵から……そんな音がした。
☆☆☆
卵から生まれたのは、小さな……フクロウみたいな姿の雛鳥だった。
僕の肩に止まって、ぴ――っ!と、景気よく鳴いてる。
ただ多分、普通の動物とかじゃなくて、魔物だろうと思うけど。
だってこいつ、生まれたてホヤホヤなのに、体高が大体20cmくらいある。
雛鳥にしちゃ、大きすぎる気がする。目も、生まれてすぐぱっちり開いてたし。
羽毛まで完全に生えそろってるときたもんだ。生まれてすぐの時こそ、くしゃくしゃだったけど、今はピシッと乾いて決まってる。すでに雛鳥に見えない。
まあ、卵の大きさ考えれば妥当なんだろうけど、それでも……
――ぴーっ!ぴーっ!(ばさばさばさっ!)
生後十数分でもう飛んでるし。
僕とエルクが泊まった山小屋の中を、こうして縦横無尽に飛び回り、疲れたら、僕の肩に止まって休む、と繰り返し。すんごい元気だなあ、生まれたてなのに。
「っていうか、何で僕の肩が止まり木代わりになってるんだろ?毎回」
「卵から孵って初めて見たのがあんただったから、親だと思われてるんじゃないの?」
うげ、ありうる。
確かに鳥とかには、生まれて初めて見た動くものを親だと思う習性がある、って聞いたことある。理由はそれか。
「それより、鳴き声が騒がしいんだけど、お腹でもすいてるんじゃないの?エサとかあげたら?」
「あー、僕も最初、そう思ってさ……」
雨も止んでたから外に出て、茂みとか探して、適当に小さな虫とかを捕まえた。
その間、ずっとこいつは僕の肩で泣き喚く。耳元でひっきりなしにピーピーピーピー……鼓膜へのダメージが深刻です。
けど、そうやって捕まえた虫に、何故かこいつ、見向きもしない。
バッタやミミズ、アリに芋虫、色々捕まえてみたけど、全部スルー。
この子、ホントに何食べるんだろ?
仕方ないので、リュックをひっくり返して中のもの全部ぶちまけると、その中から食べ物を選んで目の前に並べてみた。
すると雛鳥は、何かを見つけたようなしぐさを見せると、
食べ物ではなく、昨日の昼に拾った、スライムの『核』の所に舞い降りた。
そしてそのまま、足の爪を使って器用に抑えながら、嘴でつついてカチカチと削って食べている。え、何、それが好きなの?
一応コレ、安いけど、ギルドで換金可能なアイテムだから、エルクが『あっ!』って顔してたんだけど……まあ、また取ればいいし、そのまま食べさせてあげることに。
やっぱりお腹が減ってたんだろう、数十秒でまるまる1個(ちょっと欠けてたけど)平らげると、今度は、
「ちょっ……ダメよ!?ダメ!それはさすがにダメ!」
慌ててエルクが回収した、次に雛鳥が目をつけていたものとは……これまた食べ物ではなく、いざという時のために買っておいた、『魔力回復薬』だった。
錠剤タイプの薬で、魔力を含む薬草から作られている。飲めば、多少ではあるが、魔力を回復――と、いうよりは『補充』――できる、結構値の張る一品だ。
それを取り上げたエルクをうらめしそうに見る雛鳥。
いや、僕もその、薬食べようとするのはさすがにどうかと……まてよ?
そういえば、さっきの『スライムの核』、少量だけど、倒した後も生きていた時の魔力が残ってて、だから薬とかの材料として有用なんだって聞いたな。
だから、なるべく核には傷をつけずに、魔術とかで倒すのが理想的なんだ、って。
ってことは、こいつ……
☆☆☆
思ったとおりだった。
こいつどうやら、魔力を含んでるものが好物、もしくは、そういうのしか食べないみたいだ。
現に今、昨日、ここに来る途中でエルクが採取してた、微量ながら魔力を含む薬草を、美味しそうに食べてる。これまた器用に足を使って、少しずつ食いちぎって。
エルクも、この薬草は別に売り買いしてもそんなに値は張らないものだからか、すんなり食べさせることを了解してくれた。
それはそうと、エルクに聞いたところ……彼女もこいつが何なのかは知らないようだ。
リトラス山に出る魔物は一通りチェックしてあるけど、こんな魔物見たことも聞いたことも無いらしいし。
ましてや、魔力好きで偏食なんていう特徴。そういう魔物も存在しないわけじゃないけど、少なくともこのあたりにそんな魔物はいないはずなのだという。
見つけた時まだ卵だったしなあ、どこか他の土地から運ばれてきたんだろうか?
☆☆☆
小屋の後片付けを僕に任せて、周りの様子を見に行ってたエルクが帰ってきた。ちょっと厄介な報告と共に。
何かっていうと、やっぱり昨日の雨で、土砂崩れが起こったらしい。
そんなに小屋の近くじゃなかったから、寝てた僕らには危険はさしてなかったけど、問題はそのせいで、帰りの道がまるごと崩れてしまったことだそうだ。
木々がなぎ倒され、地面が崩れて流れ、結構悲惨な状態らしい。
通ろうとするとそれだけで、そうでなくても何かの拍子に崩れるかもしれないから危険で、そこは帰り道として通れそうには無いから、帰りは他の道を通る必要があるらしい。
エルクによると、この山小屋からふもとまで帰るルートは3つ。
そのうち1つは、今言ったとおり、土砂崩れでつぶれた。
残り2つのうち1つは、林の中を通るルートなんだけど、けっこう斜面とかが多くて、しかも地面がぬかるんでるから、負けず劣らず危険。
僕は多分大丈夫だけど、エルクがきついかも。足を取られたりしたらまずいし、林の中で木が多いし、斜面も通るから、背負っていくのもちょっと厳しいし。
そしてもう1つは、若干遠回りではあるものの、なだらかで、地形的な危険も少なく、地面がぬかるんでても足を取られるような場所は少ないルート。
ただこの場合、途中でリトラス山から出てしまう。
そして他の場所を通って帰ることになってしまうのだ。
その名も……『真紅の森』。
森の木々の葉が、一年中紅葉してるかのごとく赤いためにその名がついた森。
このリトラス山より魔物の平均レベルや出現頻度が若干高く、その分そっちの意味で危険が増える、といえるエリアである。
☆☆☆
消去法で必然的に、真紅の森経由のルートで帰ることになった僕らは、紅葉の季節みたいな……いや、日本で見る紅葉なんかよりよっぽど見事に木々の葉が真っ赤な景色を、何気に楽しみながら歩いていた。
道中、赤い鱗を持ち炎を吐くこともある『レッドリザード』や、魔法を使いこなすウサギ『マジックバニー』なんかをしとめて、肩に乗っている『アルバ』のエサにしつつ歩く。
……うん? 『アルバ』って何かって? このフクロウの名前だよ。
いや、いつまでも『こいつ』とか『雛鳥』とか呼んでるのもどうかと思うしさ、名前付けてみたわけだ。
幸いというか、こいつ自身も気に入ってくれたみたいだった。よかったよかった。
……エルクには『完全にあんたそいつ飼う気なのね……』ってジト目で言われちゃったけど、ね。
それはそうと、さっきから気になってたんだけど、
この森の魔物、気のせいか、全体的に気が立ってるのが多いような……?
もしかして、また何か出てるんじゃないだろうな?
「何か、って何よ?」
「そりゃあ、森の魔物たちがあんな感じで、食糧確保に必死になるくらいに、生態系のバランス崩しかねない強力な魔物とか?『ナーガ』みたいな」
崖崩れで、太古の昔から眠ってた魔物が目覚めました、的な?
「ちょっと勘弁してよ……嫌よ、そんなのに何回も出くわすの」
若干トラウマになってるのか、びくっと反応するエルク。冷や汗たらり。
いや、まあ、特に飢えてるとか、痩せてるとか、そういうのは感じられないから、大丈夫だとは思うんだけど……。
――!!――!!
…………ん?
今、何か聞こえたような……?
その瞬間、僕だけでなく、さっきから昼寝してたアルバも、はっとしたように目を覚まして顔を上げた。
そして、やっぱり僕と一緒に、きょろきょろと辺りを見回して……最終的に、2人とも同じ方角を向いて、ぴたりとそれをやめる。
「あれ、アルバも気付いた?」
――ぴーっ!
「?どうかしたの、あんた達?」
と、数歩先行してたエルクが気付いて振り向いた……次の瞬間、
――ヒュン!ぱしっ!!
何かが――あ、矢だコレ――矢が、木々の間を縫って飛んできたので、とりあえず手でキャッチしてみた。
そのまま直進させても、別にどこにも誰にも当たらない軌道だったけど、一応。
飛んできた時の勢いがわかるように、ビィィン、と僕の手の中で震える矢を見て唖然としていたエルクが、一瞬置いてようやく状況を理解した。
そして、あわてて矢の飛んできた方角を見るけど、そこには、誰もいない。
「ミナト、何かいるの!?」
「……いや、いるっちゃいるけど……」
多分、エルクは、昨日のコボルドとか、『迷宮』にいるゴブリンみたいな、武器を使う知能のある魔物の襲撃だと思ったんだろう。とっさにダガーを抜いて、身構える。
けど、それ多分違うな。聞こえる感じだと。
すっ、とエルクを手で制し、『大丈夫』と告げておく。
「多分、僕らが狙われてるわけじゃないよ」
「……?どういう意味?」
あーまあ、結構遠くだし……エルクには聞こえないか。
この森、もともと魔物の鳴き声とかがそこら中からして、結構うるさいからね。
僕の耳に何が聞こえたかっていうと……戦闘音だ。
剣が振るわれ、何かを切り裂く音。
鎧のようなものに、何かが当たる、金属質の音。
おそらく、矢が飛んでいるんであろう、風切り音。
そして……魔物の鳴き声に混じって聞こえる、人間の声。
けど、人間の声は、悲鳴って感じじゃないな。どっちかっていうと、怒声?号令?少なくとも、魔物に驚いたり、怯えてるわけじゃないような……。
そうなるとこの矢、コレ多分流れ弾だ。危ないなーもー。
「つまり、この先で誰か、魔物に襲われてるの?」
「一方的にじゃなく、応戦してるみたいだけどね?悲鳴とかは特に聞こえないし。それに、1人や2人じゃないかも」
聞こえる感じ、ざっと10人はいると思う。まだ距離があるから、はっきりと人数の断定は出来ないけど。
「ということは、冒険者のパーティかしら?それとも、護衛持ちの商隊とか?」
「さあ。どうする?ちょっと見に行ってみる?」
「……別に、他人にわざわざこっちから関わる義理はないけど……」
ちらっ、と手元の地図に目を落とし、
「ここからだと、どっちみち通り道ね。加勢するかどうかは別として、行ってみましょ」
「了解」
ルートを変えて迂回できないことも無いらしいけど、わざわざ遠回りするのも面倒。
それに、中々てこずってるみたいにも聞こえるから、いざって時は人助けだと思えばいいか。
☆☆☆
そのあと更に2、3回飛んできた流れ矢を、先頭を歩いてた僕が叩き落すかキャッチして防ぎながら前進することしばらく。
木々の間をぬって、ようやく、音が聞こえた先の山道に出……おわっと!(ぱしっ)また飛んできた。
すると、それをキャッチした向こうに見えたのは……
「……っ!?新手……いや、人間か?」
そこにいたのは、驚いたような表情でこっちを見ている、弓を構えた女の人だった。
そしてその周囲には、聞こえてた通り、人数は10人ちょっと、ってとこだろう。
皆武器を手に、襲ってくる森の魔物たちと戦っている。
何台か馬車もあって、それを囲むようにして戦ってるけど、商隊、には見えないな。
何でかっていうと、この人達、服装が全員統一されてるんだ。
それも、ただのおそろいって感じじゃない。軍服みたいに見える。つけてる鎧も、全員同じデザインだし。そこの女の人含めて。
冒険者っていうより、騎士とか軍人、みたいな?
すると、一瞬だけだったと思うけど、あっけに取られてた女の人が、はっとしたように、
「……おい、そこな少年!」
「えっ、はい!?」
「見たところ、冒険者か?ここは危険だ、早く……っ!」
と、女の人は途中で言葉を止めると、素早く再度弓を構え、矢を番える。
そして、こっちに狙いをつけて……ちょ、ちょっと!?
一瞬身構えたけどしかし、放たれたその矢は僕らに当たることはなく、だいぶ脇をすり抜けて、近くの木陰に潜んでいた『ウルフ』のこめかみを射抜いた。
おぉ、すごい。構えてから射るまで速い。
その弓矢使いの女性は、ふぅ、と一息つくと、改めて僕らに向き直り、
「すまない、驚かせた。それで少年、と、後ろにもう1人いたか。唐突で悪いが、冒険者か何かか?」
「え?あ、はい、そうですけど」
「そうか。ぞんざいな対応ですまんが、見ての通り取り込み中で……なっ!」
言いながらまた一匹、危なげない一射で、別の魔物を仕留める。
「道に迷ったわけでないのなら、ここから早々に離れることを推奨する。この通りの状況だからな。ここにいると、君達も危ないだろう」
「ええと、あなた方は?」
「見ての通りの者だ。が、すまんが、貴公らを保護することまでは、現状、難しい」
いや、見てわかんないんです。皆目。
すると、彼女が次のセリフを口にする前に、
その彼女の仲間らしき、少しはなれた所で戦っていた、騎士風の男性が、焦ったような声で、叫ぶように言った。
「隊長!10時方向に新手です!ウルフに……ベアやレッドリザードもいます!」
「くっ、またか!血の匂いが呼び水になって悪循環になっているな……。しかたない、各員……っ!?おい馬鹿者、後ろだ!」
と、女性が怒声を飛ばした、今しがた彼女を『隊長』と呼んだ男の背後に、今にも、彼に噛み付こうとして飛びかかってきているウルフが見えた。
が、そのことに『馬鹿者』の彼が気づくよりも早く……僕の投げた矢が、ウルフの目に刺さった。今しがたキャッチしたアレだ。
うん、さすがに今にもケガしそうな人、見過ごせないし。いくらなんでも。
一応、その一撃でウルフは止まったけど、その場で暴れると多少なり騎士(?)さん達に被害が出そうでもあったんで、素早くそこまで踏み込んで、蹴りを一発。
茂みの、というか木立ちの向こうまで蹴り飛ばした。
その、一瞬のうちに起こった出来事を、唖然としてみている、弓矢使いさん含む、周りの方々。
「えっと……お節介でした?」
「……いや、助かった、例を言う」
と、一番早く状況を理解した、弓矢使いのお姉さんからの一言。
「ついでだ少年、逃げろと言っておいてなんだが、もう少しお節介でもしていってくれないか?腕は確かなようだし、正直、今我らには少々余裕がなくてな」
「あ、はい、そういうことなら。エルク、いい?」
「ええ、いいわよ。予想できなくもなかったしね。早めに済ませなさいよ?」
「合点!あ、そうだ、アルバ、危ないからエルクのとこにいて」
――ぴーっ!
アルバが飛んでいって、エルクの肩に着地したのを確認。
そのエルクは、馬車に背を向けて、専守防衛の構えだ。うん、こういう局面では、それが妥当な判断だろう。
そして僕は、両手の手甲を打ちつけてガチンと鳴らし、先ほどの騎士さん(仮)が『新手』と言っていた魔物の群れに向き直った。
☆☆☆
十数分後、
僕らは、その魔物の群れをどうにか撃退することに成功していた。
騎士の人達に、守りに徹してもらいながら、馬車を動かしてその場から離れる。
そしてその間に、何人かの騎士と、僕と、例の弓矢使いの女性とで、しつこく食い下がってくる魔物達を蹴散らすという作戦で、どうにか離脱できたのだ。
で、今僕らは、その一団の馬車に乗せてもらって、先ほどの弓矢使いの女性と向き合って座っていた。
「さて……まずは礼を言わせてくれ。お陰で助かった」
「あ、いえ、偶然通りがかっただけですから。気にしなくて大丈夫なので」
「そう言ってもらえるのはありがたいが、貴公らのお陰で我が部隊の被害は確実に減っているのだ、そういうわけにもいくまい。今は、頭を下げるくらいしかできんが」
ぺこりと頭を下げる、どうやら、この一団の中で一番偉いらしいその女性。
そういう雰囲気を醸し出しつつも、きっちりこういう所で頭を下げられるこの態度は、なんというか、第一印象としてはいいものを感じた。
そして、ここにいたってようやく、その彼女の姿を、じっくり見ることが出来た。
短めの水色の髪に、動きやすそうなデザインの、青い布地の軍服。
身につけている鎧も、服とあわせているのか、青紫色で、エルクと同じような軽鎧。単純な防御力よりも、体の駆動を邪魔しないように意識されたつくりだ。
「自己紹介がまだだったな。私は、スウラ・コーウェン。この近くの駐屯地で、市街警備部隊の小隊長の任についている。彼らは、私の部下達だ」
市街警備部隊……ああ、エルクの一件の時にも出てきた、警察みたいなアレか。
略して『警備隊』。一応、この国の軍隊の一部なんだけど、どっちかっていうと、市民の生活により近い、交番のおまわりさんみたいな感じだとか。
わかりやすくいうと、生前の世界での、警察と軍人の違いみたいなもんかな?
有事の際には、市民を守って軍隊らしく戦うのもその役目らしいから、一応れっきとした軍隊の一機関ではあるらしいんだけどね。
で、この弓矢使いのスウラさんは、その『警備隊』の、ここらへんにある基地で、『小隊長』をやってるらしい。
とある任務のために、隊員たちを率いてこの森に来たものの、さっきのような状況になり、苦戦していたそうだ。
「正直な所、あのままでは少々危なかったからな。負けることは無かったと思うが、全員が無事ではすまなかったかも知れん。助かったよ」
「あ、いえ、皆さんご無事で何よりです」
と、再度頭を下げるスウラさんに会釈で返し、同時に、こちらも簡単に自己紹介を済ませておく。
「……さて、話がいきなり変わるのだが、お前達、冒険者だと言っていたが、この森には何の用で?」
「あ、いえ、この森に用事があったわけじゃないんですが……」
とりあえず、リトラス山からここに来たことや、これから迂回ルートで町に帰るつもりであることを、かいつまんで話す。
するとスウラさんは、若干眉間にしわを寄せて、
「となると、残念だが、この馬車に乗っていても目的地には着けんな。我らがこれから向かう目的地は、この森の奥なのだ」
「え、そうなんですか?」
「ああ。厳密には、目的地というか……『奥に行かなければならない』のだがな」
ちょっとよくわからないけど、そういうことらしい。
むぅ……旅は道連れ世は情け、ってことで、加勢したついでに森の外まで乗せてってもらおうかなとか思ったんだけど、そんな上手い話は無かったか。
けどそれなら、僕らはこのへんで失礼した方がよさそうだな。
僕ら、あくまで部外者だし、これから任務に行くスウラさん達にくっついてても、邪魔なだけだろう。
スウラさんに、ここらでおいとまします、と伝える。
「そうか、わかった。何か例をしたいが、何ぶんこれでも仕事中の身でな。心苦しいが、渡せるようなものが無い」
「ああいえ、そんなのホントにいいですから。お気持ちだけ貰っておきます」
「そうか。なら……っと、その前に」
するとスウラさんが、何かを思い出したように、僕らの目の前に地図を広げた。
何だろう、とエルクと2人で覗き込む僕らの目の前で、スウラさんは、その細い、色白のきれいな指で、地図の一点を指差す。
……うん、エルク任せた。
「お前達、これからここのルートを通って外を目指すつもりか?」
「そうだけど、何か問題があるの?」
「ああ。実はな……昨日の大雨で起こった土石流で、このあたり一帯の地形が崩れてしまっている。そのせいで、ここ以南の道のほとんどが使えなくなっているのだ」
……うわ、マジですか。
スウラさんが『ざっとこのへん』と指で示した範囲は、さっきエルクが『通って帰る』と言っていたルートがドンピシャで通る所だった。
……通れないじゃん。リトラス山から迂回したのと同じ理由で。
そしてスウラさんからは、さっきから僕らが気になっていた、森の魔物たちがやけに殺気立っている理由が、正にその土砂崩れだ、ということについても聞くことが出来た。
一部地域とはいえ、地形が変わるほどの土砂崩れの影響で、そのあたりを縄張りにしていた魔物が興奮状態にあるらしい。一夜にして縄張りを失い、新たにそれを確保しようと動く魔物の影響で、その付近にとどまらず、森の南側半分が騒乱状態なんだそうだ。
自然現象に文句は付けられないからなあ、しわ寄せがこんな形で出たわけか。
「どうする、エルク?」
「どうするも何も、それしか道ないんだから、その道行くしかないでしょ」
だよねー……
「……ところで1つ、提案があるのだが」
するとスウラさんが、少し言いづらそうに口を開いた。何だろう?
「お前達もしよければ、このまま我々に同行してはもらえないだろうか?」
「?どういうことですか?」
「今言った通りだ。これから我々は、この森の更に奥に任務で赴くわけだが、これより先の、魔物がさらに強くなる地帯に行くには、やや不安がある。それは、少々情けないが、先の戦闘の様子からも、察していただけると思うが」
「あー、なるほど」
「加えてこの『真紅の森』は、このあたりを含む浅部は、まだ魔物もランクの低いものばかりだが、ある程度の深さに進むと、その強さが急激に跳ね上がるのが特徴でな。今の我々では……全滅はないだろうが、全員が無事に帰ることは、おそらく出来ないだろう」
「たしか、王国軍に所属する兵士達は、その下積みとして『警備隊』に所属することもある、って聞いたけど……」
「ああ。ゆえに、単なる実力不足も、原因の一つと言って差し支えないかもしれん」
そこで、とスウラさん。
さっき、低レベル帯の魔物とはいえ、『ウルフ』やら『レッドリザード』やらを、徒手空拳でなぎ倒していた僕や、保守型な戦闘法ながら、騎士たちに勝るとも劣らない動きを見せていたエルク。
そんな僕ら2人を、部隊への加勢の冒険者として、一時的に雇いたいらしい。
「もちろん、後で報酬は払おう。言い値とまでは言えんが、私の私財からでも、労力につりあった額を用意させてもらうつもりだ」
「そこまでしなくても、一旦戻って、戦力を充実させてからくればいいんじゃない?」
と、エルク。
もっともだ。僕らみたいな、言ってみれば、どこの馬の骨とも知れない冒険者を雇うより、そっちの方が確実だし、現実的な判断だと思うけど。
それに、さっきの戦闘の様子を見る限り、矢とかもバカに出来ない数を消費したんじゃなかろうか?補充とかそのあたりを考えても、そうした方がいいと思う。
「……たしかに、普通ならそうするだろう。しかし、我々には今、そうするだけの時間的な余裕も無い」
「というと?」
「今回の任務だが、救出任務でな。そう時間をかけられんのだ」
聞けば、昨日、ある商人のキャラバンが、何か重要な商品を積んで『ウォルカ』を出発したらしいのだが、夜中には着くはずだった隣町に、まだ到着していないらしい。
調べた所、近道目的で『真紅の森』を抜けようとした所に大雨が来て、遭難したのだろうという推測が立った。
それを救出するのが、スウラさん達の役目、ってわけだ。
おそらく林道沿いには居るだろうから、時間はかからずに見つかるだろう、との見通しだったのだが、土砂崩れによる地形の変形や、そのせいで魔物たちが興奮していることもあり、難航していた、と。
あまりにも森の状態が予想外だったから、一度装備や、矢なんかの消耗品も補給したいけど、そんな状態の森の中に、保護対象を長く置いておくわけにもいかない。
しかもその場合、その際の道は、例の遠回りルートである。そうなると、今日中に再び捜索に入ることは、ほぼ不可能。時間的に、商人達の生存率が厳しすぎるのだ。
そこで、棚から牡丹餅気味に沸いて出た僕らに、助力を乞おう、ってわけか。
「それに、どこの馬の骨、などということも無いしな」
「?」
「立場柄、人を見る目は多少はあるつもりだ。先の戦闘の手並みもそうだが、特に……ミナトだったか、お前は、至近距離で私が放った矢を受け止めていただろう?」
そのことに関しても、この場を借りて詫びておく、とスウラさん。
まあ確かに、普通の人は、飛んでくる矢をキャッチとかできないか。その辺も評価されてたわけね、さりげなく。
「おまけに、人を助けておいて、礼もせびらずにさっさと退散しようとするような無欲さときた。ここまでくれば、相応に信頼できる奴だ、というのはわかるさ」
そう、柔らかな笑顔と共に言ってくれるスウラさん。
どうやら、好意的な評価を頂いているようで。そういうことを言って貰えてるっていうのは、まあ、うん、嬉しい。
「して、どうだろう?重ねて言うが、報酬は十分に払うつもりだ。前途有望な部下達のこともある。軍人の身で情けない限りだが、背に腹は変えられんのだ。……同行してはもらえないだろうか?」
変わらず柔和な、しかし真剣な目で頼み込んでくるスウラさん。
……あー、どうしよう……
褒めてもらったのは嬉しい。けど、こうなるとまた別っていうか……
嘘をついてるようにも見えないから、言葉通り、スウラさんは謝礼もきっちり払ってくれるんだろう。僕らにかける迷惑の分、相応の金額をきっちりと。
それでも、あからさまに普通じゃなく危険な『森』の中に、しかもこれからすぐに、準備期間も無しについていくのは、それなりに僕らに負担が来るわけで。
そして、そのへんの損得勘定とか、駆け引きっていうものが、僕は苦手というか……
……エルク、任せた。
「その仕事、拘束期間はどのくらいになるのかしら?」
「そうだな……商隊を捜索・発見して、護衛しつつ町まで帰還する、という形になるから、早ければ明日にも終了する。長くとも5日間だ。もっともそれは、捜索打ち切りの期限なのだが」
「……ミナト、あんた、魔法で氷とか作れたわよね?」
「?まあ、出来ないこともないけど?」
正確には、氷を直に作るんじゃなく、魔法で空気中の水分を集めて、氷の魔力の『マジックアーツ』で凍らせるっていうプロセスだけど。
でも、何、突然?
「ほら、討伐証明品のコボルドの手よ。アレ、腐らせるわけにはいかないでしょ?冷やせばとりあえず、何日か原型はとどまるかも」
「?依頼を受注中だったのか?」
「ええ。ほらコレ、一週間以内に、ギルドに提出しなきゃいけないのよ」
そう言って、切り取ったコボルドの手が入った袋を、スウラさんに見せるエルク。
「なるほど。そういうことなら、我々の備品の中に防腐剤があるから、使うといい。簡易的なものではあるが、それを使えば、2週間は持つはずだ」
「そうなの?随分都合がいいものを持ってるのね?」
「ああ。仕事柄、盗賊の首などを保存して持ち帰ったりもするからな。任務の内容に関わらず、遠征などの際は、いつもある程度の量を持つようにしている」
思いがけず、なんか生々しい職場事情を聞かされてしまった。
しかしまあ、そういうことなら、手首の保存とかも大丈夫なのか。
依頼の期限も、『長くても5日』なら、ギリギリ大丈夫、ってことか。
最悪の場合、五日後、捜索打ち切りになった段階で、僕らだけ離脱して、エルク背負って最高速度で走って帰れば、何とかなる。
「何ならその期限についても、我々からギルドに口利きするし、もちろん同行してもらうの間の食事などはこちらで用意しよう。ただ、人数が増える分、現地調達の食料も入ってくるゆえに、そこは了承してもらいたいが……」
「その他の設備なんかは?」
「寝泊りする場所、くらいか。馬車の中か、予備に持ってきているテントの2つがあるが、好きな方を選んでくれて構わない」
「仕事の内容は?戦闘時の加勢だけ?」
「基本はな。もっとも欲を言えば、付近の捜索の手伝いや、野営の準備なども多少手を借りたい所だが……ああもちろん、それも考慮して報酬は用意させてもらう」
「なるほど。そうね……報酬の金額だけ、大雑把にでいいから、聞けるかしら?」
「そうだな……とりあえず、銀貨50でどうだ?」
「え、そんなに!?」
日本円で……50万円!?マジで!?4,5日の護衛でそんなに!?
「……随分、大盤振る舞いじゃない?」
「そうでもないさ。これから行くのは、危険度が跳ね上がる、この『真紅の森』の深部だ。場合によっては、さらに報酬を上乗せするつもりでいる」
それを聞いてエルクは、しばらく考えて……
「……わかった。ミナト、いい?」
「受けるの?」
「ええ。他の条件を見ても、費用対効果はつりあってるわ。それに、今後のこと考えても、私たちが経験積むにもいい機会だと思うし」
なるほど、そりゃもっともだ。
今回のこの仕事、今後、商隊の護衛の時とかに生かせそうな経験積めそうだし。
それに加えて、破格の報酬までもらえるんだから、受けるのもいいんだろう。
そのままエルクに交渉とかも任せて、細かい事項を決定した後、僕らは正式に、スウラさん率いる警備隊の任務に、急遽同行させてもらった。
なんだか、簡単なクエストで肩慣らしのつもりだったのが、いつの間にかグレードアップしちゃってるけど……まあ、これも人生勉強だと思えば。
☆☆☆
スウラさん達警備隊と行動を共にして数時間、
僕らは割と早く、その目的の『商隊』を見つけることが出来ていた。
まあ、スウラさんの予想通り、森の中の林道沿いにいたし、それに、手早く見つけようと思って、僕も魔力で聴力全開にして探してたからね。
そしたら、1時間くらい探した所で、何か言い争いするような声が聞こえたから、そこに言ってみたら、ビンゴだったわけだ。
ちなみに、そこで保護した商人の皆さん、ウォルカで雇ったっていう冒険者の方々と一緒だったんだけど、その冒険者の人達、っていうのが……
「いやー、奇遇だねお2人さん。昨日の今日で、しかもこんな所でまた会えるなんてさ」
「……えっと、ザリーさんだっけ?そうだね」
「そんな『さん』なんてつけなくていいって、ザリーって呼び捨てにしてよ。知らない仲じゃないんだしさ?」
いや、あの数分にも満たないやり取りで『知り合い』にカテゴライズできるかってのも、微妙なもんだと思いますけど。
そう。その『護衛』についてた冒険者、っていうのが、昨日の昼ごろ、『ボード』の前で絡まれた、ザリーと他2名の不良冒険者だったのだ。
商隊を保護したと思ったら、何か変なのがついてきて……びっくりしたよ、うん。
そのうち、このチャラ男ことザリーは、人数の都合だとかで、僕らと同じ馬車。
そして残る2人……昨日、エルク目当てに絡んできてたメタボとゴリマッチョは、
「だからよぉ、このくらい必要経費だ、って言ってんだろ?けちけちすんな、金持ちの商人さんよ」
「俺達の力が出なきゃ、おたくら守れねーんだから、少しくらいいいだろ?」
「ふざけるな!だからって運んでいる商品に手をつける護衛がどこにいるんだ!」
やれやれ、まだやってるよ。
どうもあの2人、護衛として雇われたはいいものの、素行不良丸出しらしい。
聴いた話じゃ、ついさっき僕らが救助に到着する前に、商隊の商人さんが運んでた商品に手つけたって……いや、今聞こえた通りの内容なんだけどね。
「あーあ、あれじゃ町に戻ったら文句付けられちゃうなー。ただでさえ依頼完遂どころじゃないのに、これじゃ罰則金かかっちゃうかも」
「組む相手間違えたんじゃないの、あんた?」
「あははは、厳しいね~……」
と、エルクのとげのあるセリフに、さして気にした様子もなく笑うチャラ男。
しかし、こうして話してみると、やっぱりこのザリーって人物、雰囲気は軽々しいけど……そんなにうっとうしい感じでもない、かな?あの2人とは違って。
少なくとも、見た目ほど避けたくなるような人物じゃないことは確かだな。エルクやスウラさんなんかへの下品な視線も感じないし、かといって距離をとるでもない。
チャラ男なんだけど、何というか、社交性ってものをきっちり感じる。
「あ、そうだ。ねえ、そこの彼氏君」
と、ザリー。
その『彼氏』発言に一瞬でエルクが真っ赤になったけど、面白いのと、若干嬉しいので、放置したままいきます。
「昨日、ききそびれちゃったんだけど……君だよね?例の『ナーガ』を倒した、黒ずくめの冒険者、ってのはさ」
「あー……わかっちゃう?やっぱり」
「そりゃまあ、そのカッコだしね」
何というか、意外に話していて楽しい奴だったので、ザリーも加えた冒険者3人での馬車の旅は、割かし楽しげに進んだ。
足は御者さんと馬まかせだし、楽ちん楽ちん。
で、そんな時間がしばらく続いて、そろそろ日が暮れる時間帯に。
夜の森を進むのは、普通に考えて危険なので、今日はこの辺でキャンプを張ることにして、全員で野営の準備に取り掛かった。
その日の晩は、騎士団の皆さんが持ってきた乾物主体の保存食に加え、現地調達で狩ってきた、食べられそうな動物(魔物含む)をバーベキューにした。
状況が状況だけに、相当質素な食事を覚悟してたらしい皆さんは、大きな熊を2匹ほど狩ってきた時には、歓喜で迎えてくれました。
片手で1匹ずつ担いできたから、ちょっと引かれるかと思ったんだけど、逆に褒められて、背中ばしばし叩かれた。いいね、こういう細かいこと気にしない、豪快な感じの人達。ちょっと暑苦しいけど。
ちなみにその際、何匹かスライムやレッドリザードなんかにも出くわしたので、それらも狩っておいて、アルバの分の食事にしましたとさ。
☆☆☆
その日の夜、
途中で目が覚めて、しかも目が冴えて、眠れなくなってしまった。
目を閉じても全然眠くないので、気晴らしに顔でも洗ってこようかと、近くに見つけた川に向かうことに。
不寝の番をしている騎士さん達に一声かけて、野営場所を離れる。
不寝の番は、警備隊の騎士の人たちが交替でやってくれている。
最初は、僕もやった方がいいかってスウラさんに申し出たんだけど、戦闘で活躍してもらってるし、豪華な食材も取ってきてもらえたから、ってんで、夜ぐらいはゆっくり休んでくれとのことだ。
せっかくのご厚意なので、甘えさせてもらうことにした。その分、昼間頑張ろう。
川に到着すると、陽の光がないからか、昼間よりも若干冷たく感じるその水を顔にバシャバシャとかけて洗う。昨日今日と風呂に入っていないため、汗でしっとりと湿った肌に気持ちいい。
……しかし、余計に目が覚めてしまったようにも感じる。
僕の場合、こうやって顔洗ってすっきりさせてからしばらく時間がたつと、最初は今みたいに眠れなくても、後からすっきりして眠りやすくなるたちなのだ。
ただ、月の位置とか色々なことからして、そろそろ夜明けも近い時間帯なんじゃないか、ってことに今更ながら気付いた。
これなら、このまま起きてても別によさそうだな。寝不足、って感じもしないし。
せっかくだ、朝食にプラスする食材でも獲っておこうか。
エルクが現れたのは、その十数分後だった。
ちょうど魚とかも結構いっぱいいたので、大きいのを狙って『漁』を行っていた僕の耳に、茂みの向こうから誰かが近づいてくる足音が聞こえてきた。
で、振り返ると、大きめのタオルを持ったエルクが、茂みから出てくる所だった。
「……朝食?」
「うん。朝から肉はヘビーだし、昨日食べたから、魚がいいかなって。まあ、顔洗いに来たついでなんだけどね」
「それはいいんだけど……あんたは相変わらずというか、面白いやり方で魚獲るのね」
「面白い、かな?コレ」
「ええ。私の知る限りだと、そんな風に魚獲るの、あんたと熊くらいよ」
ああ、まあ自分でも確かに、泳いできた魚を『ばしゃん』と平手でひっぱたいて川岸までふっ飛ばすこのやり方は、北海道とかの川で鮭獲ってる熊っぽいなとは思ったけど。
けど僕、釣りとかめんどくさくて好きじゃないんだよね。待つの嫌いだから。
こっちの方が手っ取り早く、確実に獲れる。
それに、極力傷はつけないように、それこそ、掬い上げるように優しくふっ飛ばしてるので、状態はいい。着地点には、スカーフ変形させたシート引いてるし。
「あと、その水面に足で立ってるのって何なの?魔法?」
「いや、これはそのー……表面張力、って聞いたこと無い?アメンボとかの」
水の魔力を使って、足の裏に表面張力を発生させる技。これも、修行中に開発した。
今僕は、アメンボ――母さんに聞いたところ、この世界にもいるようだ――のごとく、両の足で水面に『立って』いて、このまま歩いたりすることも出来る。
あんまり速く走ると、足の裏の魔力が散っちゃって表面張力も崩れちゃうんだけど、その時は普通に、もっと原始的な力技で水上走行するので問題ない。
と、話すと、やはりというかため息が帰ってきた。非常識でごめん。
「ところで、エルクは何しに?」
「私は……水浴びよ。昨日今日って、お風呂入ってないし」
ちょっと言いよどんでからそう口にすると、鎧や服に手をかけて、するすると脱ぎ始めた。僕が目の前にいるのも、全く気にしないで。
「あ、なら僕、向こう行った方がいい?」
「いいわよ別に。今さら裸程度、あんたに見られたって別に気にしないわ。……もっとすごいことやってるんだし」
あーまあ、それは確かにそうだ。
あの夜以来、エルクとはいろんな意味で親しくなった僕は、昼だけでなく夜も、宿でも一緒にいる。
その数日後、
冒険者としてコンビを組んだにとどまらず、色々と深い関係にもなった僕らであるから、節約にもなるし部屋が一緒でもいいでしょ、ってエルクが言い出したのが発端。
確かにそれは間違ってない。昼間獲った素材の整理とか、次の日の予定の話し合いとかで、宿に帰ってからもエルクは僕の部屋に来ることは多かったし、時には、夜そのまま泊まっていくこともあった。
部屋のベッドも、人2人寝れるくらいには大きいし……そのまま、『そういうこと』になったりすることも多々。
だったらいっそ同室でいいかってことになったので、ターニャちゃんにその旨を伝えた所、ものすごく面白そうな顔で冷やかされた挙句、ダブルベッドの部屋を用意された。
いや、まあ……やることは間違ってないから、別にいいんだけど。
とまあ、それからはそんな感じで過ごしてきたから、今までに増して色々な距離も縮まったし、もっと言えば、裸程度がさほど恥ずかしくならないくらいの関係にもなった。
だからこんな風に、エルクが服を脱ぐ光景を前にしても……全くじゃないにしても、前ほどは戸惑わない。エルクの体で僕が見てない所は、おそらくもうない。
そしてそれはエルクも同じだ。僕に見られてもさほど気にしないし、今みたく『ここにいてくれた方が見張りにもなっていい』と、最近はそんな感じ。
男としては嬉しいような物足りないような、しかし信頼は感じるので素直に嬉しい。
そんなことを考えている間に全部脱ぎ終わったエルクは、小さめのタオルを水にぬらして体を拭き始めていた。
月明かりがあるのでさほど暗くも無い夜の闇の中で水浴びしているエルクの裸身は、気がつけばガン見してしまうくらいに魅力的だ。というか、実際にしている。今。
見すぎて、『一緒に入る?』って聞かれたけど、さすがに遠慮しておいた。
魅力的な誘いではあるけど……それですまなくなっちゃう可能性も高いし。思春期男子のメンタルっていうのは、そこまで頑丈じゃないからして。野外でそれはまずいよね。
『じゃあ汗とかは平気なのか』とも聞かれたけど、その辺は実は、爽快感さえ求めなければ、ちょっとした荒業が僕にはある。
どうするかっていうと、至極単純。しかし物騒。
炎の魔力で自分の体を発火し、セルフで全身火達磨になり……そのまま汚れという汚れを焼き落とすのである。1分も燃えていれば、汚れも古くなった角質とかもほぼ落ちる。
そして僕の体はもちろん、着ている服その他の装備は、炎程度では燃えないので、洗濯すらも一緒に出来てしまう始末だ。屋内ではできないのが欠点だけど。
それを聞いたエルクは、さっき同様呆れたような様子……の後に、ふと思いついたというか、思い出したような様子を見せて、
「あのさ、ミナト?」
「何?」
「そういう色んな便利な魔法って……もし私が頼んだら、教えてくれる?まあもちろん、もっと修行して、私が上手く魔法使えるようになってからの話だけど……」
そう、ちょっと遠慮がちに聞いてきた。
さんざん僕の非常識な、しかし興味の対象にもなるであろうオリジナル魔法を見てきて――これらの他にも、エルクには訓練とか探索の時とかに、色々と魔法見せてるしね――エルクも、いくつか使ってみたい魔法があったんだろう。
それを聞いて、別に僕は驚きはしなかった。
正直、いつか聞かれるんじゃないかとは思ってたし。
結論から言えば、半分Yes、半分Noである。
エルクをほぼ全面的に信頼し、公私共に――公ってのも変か?――パートナーとして頼り、頼られている僕は、エルクの成長につながるなら、それを渋る気はさらさらない。
今使ってるような便利魔術なら、喜んで教えるつもりだ。
もちろん、エルク自身言っていたように、それなりに魔力が形になってからだけど。
僕に『感応力』という面で才能がない分、ひょっとしたらエルクなら僕以上にこれらの魔法を使いこなすんじゃないか、って楽しみでもあるし。
ただ、これはYesの半分だ。Noの半分については別。
僕の魔法の中には、『人に教えるな』もしくは『使うな』と、伝授どころか僕自身も使用も禁止されているような、母さんに直々に『禁忌』指定されているものも多々ある。
全面的に禁止だったり、条件付きで許可だったりと種類があり、その理由も様々なんだけれども、僕の十八番である『エレメンタルブラッド』を例とするそれらは、不用意に外部に漏らすのは一律に危険であるため、誰だろうと教えるつもりは無い。
なので、それらに関しては、残念ながらエルクにも教えることは出来ないだろう。
もっとも、修行を重ねたエルクが、その領域にまで達したりすることがあれば、そしてその時、僕が彼女に全幅の信頼をおいていれば……わからないけど。
けどそれを話すと、エルクは残念そうなそぶりは全くと言っていいほど見せず、むしろ俄然気合が入ったかのような笑みを浮かべていた。
禁忌はともかく、自分にもこれらの面白魔法を使える時が来るかもしれないとわかって楽しみになったんだろうか。まあ、やる気が出るのはいいことだし、何も言うまい。
僕としても、そんな日が来るとすれば、自分のことのように今から楽しみである。
☆☆☆
その数分後、
エルクは体をほぼ洗い終わって、僕も魚を十分獲り終えた時、
「……ん?」
周囲に複数の気配を感じ、その直後、ふっと僕の頭上に暗い影が差した。
けれど、それに関しては羽ばたきの音で――ほとんどしなかったけど――気付いていたので、そいつが肩に止まる段階になっても、驚かなかった。
「アルバ、お前も起きちゃったの?……って、もともと夜行性か」
まあ、こいつがフクロウの仲間かはわかんないけど。
よく見ると、朝より成長したからか、純粋にフクロウっていうより、フクロウとタカ足して2で割ったような感じにも見えるような……って、今はそんなことはどうでもいい。
問題は残りの気配なんだけど……2つ、しかも、どちらも風下から来る。
しかもそのうち1つは、かなり気配が希薄だ。隠密に慣れてるような……嗅覚と聴覚を強化して、僕でなんとか感知できるレベル。
が、そうでないもう1つは、どうやら隠れるつもりは無かったようで、直後に茂みからその姿を現して……ああ、何だ。
「何だ、先客がいたようだな。ミナト殿にエルク殿か」
そこにいたのは、青い髪を早朝の涼しげな風にそよがせたスウラさんだった。
鎧は着てないけど、愛用らしい青い弓と矢をセットで持ってきている。
そしてもう片方の手には、質素ながらさわり心地はよさそうな、大小のタオル。
手荷物を見る限り、エルクと同じく水浴びに来たようだ。
そしてそれをスウラさんも悟ったらしい。エルクの手にある濡れたそれを見て、今から自分がしようとしていたことを、今正に終えたところか、と気付く。
そして、状況を見るに、その場に僕が一緒にいたことも。
「ふむ……予想通りといえばそうだが、2人はやはり、単なる冒険者仲間というだけでなく、仲睦まじい関係のようだな。ここでそういうことに及んだ様子は無さそうだが」
「まあ、ね」
「ははは……何とか我慢しました」
「そうか。ふふっ、若いのに誠実なことだ」
そう、すこしから階の意味をこめて言うと、スウラさんは、僕がいるのも気にせず、服を脱ごうと手をかけた。
あー、ちょっとこれはさすがに、うん。
「え、エルク、じゃあ僕、先行ってるから」
「おや、行ってしまうのかミナト殿?別にそこで見ていってくれても構わんが」
すると、本気かどうかわからない申し出がスウラさんから飛んできた。
あれ、もしかしてスウラさんって、意外とフランクっていうか……そういう類の冗談も結構好きなタイプだったりするの?
まあ、軍っていう男社会に生きてるわけだし、ホントに見られても気にしないのかもしれないけど……ここで『じゃあお言葉に甘えて』って言うわけにもいかないので、丁重にお断りしておく。
警戒そのものは、ちょっと離れた所から続けるし、弓持参&魔法も使えるスウラさんがいるんだから、安全面はそんなに心配ないだろう。
だから、
さっきから、肩に乗ってこつこつと僕の頭をつつくアルバが、しきりに嘴で指し示している……もう1つの謎の気配がある方に向かうことにした。
「じゃ、ごゆっくり」
とだけ言って、僕は地面を蹴った。
あ、スカーフと魚置いてきた。後で取りに戻ろう。
☆☆☆
ミナトが茂みの向こうに消えた直後、
エルクと同じく水浴びに来た彼女……スウラは、同じように鎧と服を脱ぎ、タオルを手に川に入って、体を洗い始めた。
エルクはまだ裸だが、女同士であるため、特に身構えるようなことも無い。
……先ほど、裸のままミナトと一緒にいる所を見られていることもあり、別に今さら、何か恥ずかしがっても仕方ない、と思っていることもある。
気がつけば、場繋ぎのちょっとした世間話から自然な流れで、女同士の話になっていた。
冒険者も軍も、基本男社会で大変だの、世話のかかる部下もしくは相棒がいるだの……愚痴も多分に織り込んでの。
そんな会話の中で、2人は互いに互いのことがよりよくわかってきていた。
エルクは、スウラが、冷静で落ち着いていて、必要な時にはきっちり引き締める厳しい性格の中にも、普段は人と人とのコミュニケーションを大事にしていて、軽い気持ちで話せるような、フランクで砕けた一面が垣間見える女だということに。
同行している部下達も、1人残らずスウラを慕っている、信頼できているように見えたその理由が、エルクの中で理解できたようだった。
一方でスウラも、エルクが、一見気が強くて苛烈そうな性格の中にも、随所に優しさや誠実さが見て取れていた。
そして時に、嬉しさや楽しさに浮かれかけるものの、素直になれずに逆に怒ったりと、かわいらしい部分が垣間見える女だということにも気付いていた。
あの少年もまた、彼女のこういうところが好きなのだろうか、とも。
互いの心のうちまではわからずとも、軽快に話は続く。
「しかし、ミナト殿は戻ってこんな。先ほど、何かの気配を感じて確認に行った様子だったが……エルク殿は何か感じたか?」
「いいえ?でも、あいつは人一倍そういう感覚鋭いし、さっきは割と目が本気だったから、ただの立ち去る口実だったってことも無さそうだったけど」
ミナトの持つ動物並みの五感――時々なぜか狙ったように発動せず、トラブルを招くけども――を知っているエルクは、そのことから推測していた。
「しかし、ならば何だったのだろうな?魔物でなければ、普通に考えて……エルク殿か私の裸目当ての覗き、という線が最有力だが……」
「あの不良2人とか?」
エルクの脳裏に、ギルドのボード前で、そして昨日救助してからもやたらと絡んできた、あの柄の悪い冒険者2人の顔が思い出され、不快そうに眉をひそめていた。
昨日の夜などは、酒を飲んで悪酔いし、エルクやスウラ、それに他の女性の警備兵たちにも声をかけていたことも思い出す。もっとも、誰にも相手にされていなかったが。
一方で、一緒にいた軽そうな雰囲気のザリーは、意外にもそういった様子は見せず、ミナトと男同士で割と楽しそうに話していた。ちょうど、今のエルクたちのように。
見た目と違って社交性があったザリーは、案外ミナトと相性もよかったようだ。
「まあそれもありうるが、たまに、私の部隊の連中も、遠征の際などには……私や、女の兵士の着替えなどを覗きにきたりするからな?」
「え!?ちょ、いいんですかそれ!?」
「まあ、無論よくはないだろうが、ある種、男の性というものだろうさ、特に責める気はない。気付かれれば制裁を受けるというのは、奴らも覚悟の上だろう」
「それ……気付かれないで覗いてる場合もあるかも、ってことですよね?」
「そうだな。しかしまあ、それだけ隠密行動が上手だという意味でもあるだろう?その時はまあ……私の裸ぐらいなら、精進した褒美に見ていればいいさ」
いっそ思い切りのいいスウラの言葉に、エルクは驚いていた。
軍という男社会に長くいると、こんな風に耐性がつくものなのだろうか、と。
実際それは間違っておらず、軍や警備隊にいる女性には、裸を見られようが気にしなかったり、猥談にも平気で対応するような者も多い。スウラも、その例に漏れなかった。
それを聞いて意識したのか、ふとエルクの目が、あらためて、スウラの体に行く。
まだ薄暗い中ではあるものの、そこに浮かぶスウラの体は、女であるエルクの目から見ても、魅力的なものに見えた。
胸も大きく、腰のあたりにはくびれもはっきりある。女として理想的な体型。
覗いてでも見たい、と男共が思うのも、無理がない気がしていた。
「しかし先ほどの、ミナト殿だけが気付いていた『何か』は、本当に何かがいたのなら、見事としかいい用がないほどの手並みだ、全くわからなかった。あの2人とは思えんし、私の部下の誰かなら、それはそれで喜ばしくはあるが……」
「や、私が喜ばしくないんだけど」
そんな会話を、女性2人が交わしている頃、
その『何か』を確認しに行ったミナトは、木の上に上って……先ほどまでとは一味違う、真剣な表情で周囲を警戒していた。
どうも、さっきの『何か』は……スウラが考えているようなものとは違うかもしれない、と直感的に悟っていたために。
隠れている相手は、実に巧妙にその姿を隠している。
目を凝らしても、どこにも不振な影は見えない。匂いで感知できるミナトの鼻が無ければ、そうそう見つかりなどしないであろう、ほぼ完璧な隠遁だった。
その匂いすらもあいまいになっている『何か』に対し、ミナトは独り言の体でつぶやいた。
「……まあ、敵意は感じないし、つっついてもいいこと無さそうだから、今日は僕はこのまま帰るよ。だから、あんたもさっさと帰れ」
そして、木の枝の上でだが、踵を返す。
そのまま立ち去るかと思われたが、
「何が目的だったか知らないけど、仲いい奴の入浴シーン除かれていい気はしないんだ。だから、今度同じようなことしたり、それか今以上に何か突っ込んでくるようなら……」
一拍、
「……さすがに、手ェ出るぞ」
そういい残して、跳び去った。
その数秒後、
そこから少し離れた木の影から、1人の男が姿を現した。
昼間と変わらない、軽そうな笑みで笑いながら、
「……気配だけじゃなくて、位置まで完璧に気付かれてたなあ、アレ……。かくれんぼには、けっこう自信あったんだけど、ホント何者かな、彼」
もう少しすれば出番を終えそうな月の明かりに、特徴的なオレンジ色の髪の毛を照らされながら、緊張感を感じさせない声で独り言をつぶやいていた。
「触らぬ神に祟りなし、ってやつか……危険は慣れてるけど、わかってて藪をつついて毒蛇を出すのもばかげてるし、大人しく引っ込んどこうか。興味深いのはそうだけど……彼らは、どうやら関係なさそうだし」
誰にとも無くそういい残すと、その男……ザリーは、最後までその笑みを崩すことなく、大人しくその場から立ち去った。
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