都政を厳しい目でチェックするのは、都議会の職務である。その職責を果たすかどうか、有権者が目を凝らしている。

 東京都の舛添要一知事による政治資金の私的流用などの疑惑は依然、解明されていない。今月始まった都議会は、政治とカネの問題にどう真剣に向き合うかが焦点になっている。

 数々の疑惑について、知事は詳細な説明をほとんどしていない。弁護士に委ねたという調査の結果も、1日の議会開会には間に合わず、知事は所信表明で「ご迷惑をおかけしている」ことをわびたのみだ。

 約25分の演説のうち、釈明に充てたのは3分ほど。これで都民が納得できるはずがない。

 7、8日には代表質問と一般質問がある。都議会は1300万都民の代表として知事にしっかりと説明を求めてほしい。

 この数週間で浮かび上がった知事の「公私混同」ぶりの指摘は、多岐にわたる。

 神奈川県湯河原町の別荘近くで政治資金で下着を買った疑いもあれば、事務所の家賃をファミリー企業に還流させているとの疑惑もある。法的な問題もあれば、道義的な疑問もある。都政トップとしての舛添氏の資質を問う声も高まっている。

 本会議は事前の質問に答える形なので、なかなか丁々発止とはいかない。疑問を残らず解明しようとすれば時間もかかり、東京五輪や待機児童問題など都政本来の課題の議論がその分、おろそかになってしまう。

 猪瀬直樹前知事が選挙資金疑惑に問われた時と同様に、総務委員会への知事の出席を求め、そこでの集中審議が必要だ。それでも解明できなければ、強い調査権限をもつ「百条委員会」の設置も検討すべきだろう。

 そうした審議手続きを進めるうえで、かぎを握るのは、最大会派の自民と公明だ。両党は都知事選で舛添氏を支援し、知事の座に押し上げた。その経緯をふまえ、疑惑解明の責任を率先して果たすべきだ。

 都議の報酬は月100万円を超え、1人あたりの政務活動費は全国最高の月60万円にのぼる。その厚遇にもかかわらず、チェック機能を果たせないとなれば、都議の存在意義が問われることになるだろう。

 もう一つ注文がある。政務活動費で支払う人件費について、都議会は金額も支出先も公開していない。こんな仕組みにしているのは、全国で東京だけだ。

 これでは身内にお手盛りで金銭が支払われても分からない。李下(りか)に冠を正さず。都議会は自らの姿勢も改める必要がある。