もんじゅ 廃炉の決断こそ必要だ
高速増殖原型炉「もんじゅ」のあり方を議論してきた文部科学省の有識者検討会が、報告書をまとめた。
もんじゅでは多数の点検漏れなど不祥事が相次ぎ、原子力規制委員会が昨年11月、運営主体である日本原子力研究開発機構の「退場」を文科相に勧告したことを受けたものだ。
ただし、検討会での議論はもんじゅの存続を前提とした運営手法に限られた。このままでは、勧告時に規制委が認められないとした「看板の掛け替え」に終わりかねない。
エネルギー政策上の位置づけは妥当か。運転には今後、どれだけ費用がかかるのか。こうした本質的な問いに関する議論を欠いたまま、政府がいたずらに、もんじゅの存続を図ることがあってはならない。
報告書が示したのは、産業界や法曹界から外部専門家の経営参画を求めるなど新たな運営主体の要件だ。文科省が今夏までに新組織を決定し、規制委に回答するという。
報告書は、他の発電施設の経験者を指導的ポストに登用することや、保守管理体制を強化することも、新たな運営主体の要件にあげた。
しかし、電気事業連合会はもんじゅの運営を引き受けるつもりはないとしている。高速炉は商業原発とは異なり、取り扱いの難しいナトリウムを冷却材に使う。報告書は、国内でナトリウム取り扱い技術を持つ組織は原子力機構しかないことを認めた上で、運営主体は特殊法人や認可法人が考えられるとした。
これらを踏まえれば、新たな運営主体は、経営陣に原子力関係以外の外部専門家が加わるものの、現場作業は、もんじゅのスタッフが引き続き担う形態が浮かぶ。
外部からの人材登用などは、過去の原子力機構改革でも繰り返し言われてきたことで、新味はない。
政府は、原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、燃料として燃やす核燃料サイクル政策の推進を掲げる。プルトニウムを燃やす高速増殖炉はその要の施設だ。
しかし、もんじゅは試運転中の1995年にナトリウム漏れ事故を起こして以来、ほとんど稼働していない。1兆円超の国費が投入され、今も維持管理などで毎年約200億円が費やされている。技術面やコスト面の課題で、多くの先進国は高速増殖炉開発から撤退した。核燃料サイクル政策は事実上破綻している。
政府は2年前に閣議決定したエネルギー基本計画で、「核のごみ」を減らす研究開発をもんじゅの目的として前面に打ち出した。こうした研究開発は他の施設でも可能であり、もんじゅの延命策に過ぎまい。
政府がいま決断すべきは、もんじゅの存続ではなく廃炉なのだ。