【ダブリン=原克彦】国際サッカー連盟(FIFA)は3日、ブラッター前会長ら幹部3人が報酬や特別ボーナスなどで過去5年に7900万スイスフラン(約86億9千万円)を得ていたとの内部調査結果を発表した。違法な契約内容が含まれる可能性を指摘し、証拠をスイスや米国の捜査当局に渡すとしている。一連のFIFA汚職事件でトップの関与を示す決定打になる可能性がある。
発表によるとブラッター前会長に加え、バルク元事務局長と、最高財務責任者でもあったカットナー元事務局長代行の3人が不透明な手法で報酬を引き上げていた。雇用契約に複数の付則を盛り込んで、特別報酬の支払いを可能にしていたという。調査はFIFAの弁護士が手がけた。
一例として2011年のFIFA会長選挙の前にブラッター氏がバルク氏とカットナー氏との契約を19年まで延長し、報酬を大幅に引き上げた点を挙げた。ブラッター氏が当選しなければ別の会長が両者との契約を解除する可能性もあったが、正当な理由で解雇されても巨額の退職金が払われる内容だった。
また、11年にはバルク氏とカットナー氏に対し、14年のブラジルワールドカップ(W杯)に対するボーナスが払われた。14年には18年のロシアW杯に関連したボーナスの支払いを決めた。
FIFAはこうした報酬の支払いを認めた報酬委員会の監督機能にも懸念があると指摘。「さらなる調査が必要であることを証明するものだ」とし、内部調査を継続する方針を示した。
一方、スイスのメディアは3日、スイスの検察当局がチューリヒにあるFIFA本部を捜索したと報じた。FIFAの調査内容を踏まえたものとみられる。
放映権やW杯の招致などを巡り巨額の資金がやりとりされるFIFAでは汚職が絶えず、15年5月には米司法省が当時の副会長を含む関係者14人を贈収賄などの罪で起訴。スポーツ界で過去最大級のスキャンダルとして世界の注目を集めた。スイス当局は15年9月にブラッター氏の捜査に乗り出したが、逮捕には至っていない。
ブラッター氏は過去に欧州サッカー連盟(UEFA)会長だったプラティニ氏に不透明な報酬を払っていたことが発覚し、会長退任を前にFIFA倫理委員会から8年の活動禁止処分(後に6年に軽減)を受けた。UEFA事務局長から今年2月にFIFA会長に選出されたインファンティノ氏は信頼回復に向けた改革に取り組む姿勢を示している。