岩波精
2016年6月4日09時51分
自然災害前からのローンに加え、生活再建や事業に向けた新たな借金も背負う「二重ローン問題」。被災者の重い負担を防ぐため、すでに抱えているローンを金融機関が減免する新たな制度が熊本地震で動き出した。金融機関には被災者の相談が寄せられている。
2011年の東日本大震災の被災者を対象につくった制度を他の災害に広げるため、全国銀行協会(全銀協)などが昨年12月にガイドラインをまとめ、4月から制度をスタートさせた。対象は災害救助法の適用を受けた地域で住宅や事業などのローンを払えなくなった被災者。熊本地震の場合は同法が適用された熊本県だけでなく、大分県などでも被災者の事情に応じて金融機関が対応する。
減免が認められれば、生活再建に必要な現金や預金(上限500万円)を手元に残し、残りでローンの一部を返済し、返しきれない分は減免される仕組みだ。自己破産と異なり、ローンを払えなかった記録が残らず、新規ローンやクレジットカードの契約もできる。
全銀協は5月、福岡市と熊本市で金融機関向けの説明会を開いた。「義援金で返済条件を変更した場合はどう扱えばいいのか」などの質問が出た。説明会には大分県の銀行も出席。自宅が壊れた県内の被災者から住宅ローン減免の相談を受けているという。全銀協の担当者は「新しい制度なので金融機関も手探りで動き出している」と話す。
二重ローンは東日本大震災でも問題になった。自宅が再建できずローンだけが残ったり、自己破産に追い込まれたりするケースもあった。11年8月には東日本大震災の被災者を対象に減免制度が始まったが、利用は約1300件にとどまった。
4月下旬には仙台弁護士会のメンバーが熊本を訪れ、地元の弁護士らに制度を説明した。説明にあたった小向俊和弁護士は「東日本大震災では周知が不十分で多くの人に使ってもらえなかった。一番大事なのは一日も早く周知すること。金融機関も利用を促してほしい」と話している。
■減免手続きの流れ
ガイドラインによると、個人の被災者は最も多額のローンを借りている金融機関に減免手続きを申し出る。その際、①災害の影響で元の借金を返せない②財産状況を借入先に適正に開示している②破産手続きなどと同等額以上の回収見込みがあるなど借入先にもメリットがある、などの各要件を満たす必要がある。
被災者はその後、弁護士などが務める登録支援専門家の無料支援を受けながら財産目録などの必要書類を全ての借入先に提出。免除額などの計画を立てて協議する。全ての借入先の同意を得たら簡易裁判所に特定調停を申し立て、手続きの内容を確定させる。
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