[東京 1日 ロイター] - 衆院選の公示を翌日に控えた1日、主要政党の党首が日本記者クラブで党首討論を行い、安倍晋三首相(自民党総裁)は自らの経済政策について「この道しかない」と訴え、アベノミクスを継続すれば17年まで賃金が上がり続け、消費増税分を上回る実質賃金の上昇が実現するとの見方を示した。これに対し、野党側は「このまま続けば円安による物価高と格差拡大」(海江田万里民主党代表)がもたらされるなどと応戦した。
<低年金者への給付は先送り>
安倍首相はアベノミクスによってデフレから脱却できるチャンスを得たと指摘。すでに日銀が掲げる物価安定目標の2%分の賃上げは実現しており、消費増税分にも賃金は追いついていくとの考えを示した。さらに消費増税を予定されていた15年10月から17年4月まで先送りしたことについて、「今年1─9月の経済は成長している。アベノミクスで雇用が改善し、賃金が増え、消費が増えていく状況が続き、間違いなく(17年4月には消費税を)引き上げる環境を作ることができる」と語った。
一方、安倍首相は消費増税延期の結果、財源が得られないことで、予定していた月5000円の低年金者への給付は「17年4月に先延ばさせていただきたい」とし、一部の社会保障施策は見送らざるを得ないとの認識を示した。
また安倍首相は今回の解散の大義に関して「18カ月消費税引き上げを延期することは、かなりエネルギーを必要とする。国民の声がないと変更できない」と指摘。「税における重大な変更は民主主義の基本だ。代表なくして課税なし、その考え方にのっとって行った」と説明した。
衆院選挙での勝敗ラインについては、あらためて与党で過半数を目指すと表明。「慢心した方が負ける。目標はそこに設定しないとおごりが出る」と述べた。
<日銀は2%物価目標達成を>
金融政策に関しては「財政ファイナンスではない」と明言。「日銀の金融政策は物価安定目標2%を実現するために行っている。金融政策の中身は黒田東彦日銀総裁に任せるべきであるのは当然だが、2%目標は達成してくださいということだ」と述べた。
財政健全化目標に関しては17年4月からの増税を前提に、来年夏までに2020年度黒字化に向けた具体的な道筋を策定していく考えを示した。
17年4月の消費増税については景気条項を設けないこととしたが、安倍首相は「リーマン・ショッククラスの経済の収縮が起きれば対応するのが常識だ」と述べ、大きな経済ショックが起きた場合には再増税を見送る可能性があることを指摘した。
一方で、2四半期期連続でマイナス成長となった場合でも「今回のような形での景気判断はしない」と語った。
また、平沼赳夫次世代の党党首に憲法改正について聞かれ、首相は「国民の中で機運が盛り上がっている状況ではない。まずは党で国民運動を展開していきたい」との考えを示した。
<海江田民主党代表「このままでは物価高と格差拡大」>
海江田民主党代表は「安倍政権の経済政策がこのまま続けば円安による物価高と格差拡大になる。民主党は人への投資を厚くする。雇用安定、子育て世代の支援、老後の安心、この3つを軸に消費拡大を通じて景気を好転させる」と主張。日銀の金融政策について、「戦力の逐次投入は行わないとしていた日銀が再び緩和をした。前回がなぜ効き目がなかったか考えてもらわないといけない。円安で企業の生産が回復する状況になっていない」と指摘した。
江田憲司維新の党共同代表は「どの党が信用できるのか。われわれは身を切る。国会議員定数3割カット、給与3割カット、国家公務員、地方公務員25兆円の人件費2割カットで5兆円を出す」とした。
公明党の山口那津男代表は「与党で経済再生を進めたがまだ道半ばだ。大事なことは景気回復を実感していただくことだ」としたうえで「消費税率を10%に上げる際には軽減税率の導入をめざす」と語った。
(石田仁志、吉川裕子)
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