自動車は今でも世界の花形産業だ。それが今後も続くという見方に異論がある人はいても、現時点で自動車が花形産業であることを否定することは難しいと思う。
その自動車のこれからを自動車産業自身が指し示すイベントと言えば「モーターショー」だ。グローバルで見れば、「ジュネーブ」、「デトロイト」、「上海」の3つがリードしており、一応国際格ではあるもののフランクフルトとパリ、東京はかなり遅れを取り始めている。ちなみに世界5大モーターショーは、ジュネーブ、フランクフルト、パリ、デトロイト、東京ということになっているが、それは20世紀の話だ。上海が入っていない時点で現状を反映しているとは言えない。
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ジュネーブショーの成功事例
かつて、欧州では各国のショーが拮抗していた時代があったが、ジュネーブはその団子状態を抜け出すために戦略的にショーのあり方をリデザインして他を突き放した。自動車産業は国の基幹産業なので、ショーのコマ割りは各国のエゴが錯綜する。フランクフルトならドイツメーカーが会場の一等地を占領するし、パリならフランス車が同様になる。そういう状況を見越した上で、スイスはマスプロダクションの自動車メーカーを国内に持たないことを武器に、公平性を主軸に打ち出した。
あわせて多言語の対応や充実したプレス対応、乳幼児施設や飲食、休憩所の充実までを含めた入場者サポートを徹底的に行った結果、欧州のメインショーの地位を獲得したのだ。
すでに勝負にならない「東京」対「上海」
視線を転じてわが国の東京ショーを見てみると、もはや国際格のショーの地位からほぼ転落してしまったと言える。これは一般社団法人日本自動車工業会(自工会)の無策が原因である。ジュネーブの成功例を黙って見ていればそういう結果になるのは当然だ。自工会のサイトに行って役員名簿を眺めてみると、自動車メーカー各社の会長・社長・役員がずらりと並んでいる。多忙を極めるこの人たちに東京モーターショーを積極的に運営していくだけのリソースがあるとは思えない。要するに自分の会社と同じ真剣さでは運営していないのだ。
アジア圏最大の自動車ショーの地位はすでに上海が完全に制圧してしまった。自動車ショーの重要度を測るひとつの目安は、新型車の初お披露目(ワールドプレミア)が何台あるかだが、前回2015年の東京ショーは主催者発表で75台。上海はと言えば109台。ワールドプレミアに限らず総展示台数で見れば会場規模の問題があるとは言え、なんと3倍以上の開きが出ている。
そもそも日中の自動車販売台数を比較すれば中国が2500万台に迫る勢いなのに対して、日本は500万台を割り込むことが確実視されている状況だ。人口も14億人に対して1億3000万人。日本人としては極めて残念なことだが、現在の販売台数でも大差がついている上、今後の推移予想ではもはや勝負にならない。東京対上海というアジアNo.1 ナショナルショーの覇権争いはもう諦めるより他にない。