「なんでだろう~」で一世を風靡したお笑いコンビ、テツandトモ。
赤いジャージを着たテツが舞台狭しと動き回る。それに合わせて、青いジャージのトモがアコースティックギターをかき鳴らす。日常のふとした疑問を並べたて、最後は2人そろって「なんでだろう~」と歌い踊る。
1998年にコンビを結成したテツandトモは、NHKの「爆笑オンエアバトル」などで人気を獲得していきます。そして「なんでだろう~」が流行語となり、大ブレイク。2002年の「M-1グランプリ」決勝進出をはじめ、2003年には「NHK紅白歌合戦」への出場も果たし、さらに「なんでだろう~」が2003年の「新語・流行語大賞」に選ばれました。まさに時の人となったテツandトモ。
しかしブームは永遠に続きません。2005年ごろから徐々にメディアへの露出が減っていきます。普通の状態に戻っただけなのに、これがブレイクした芸人の宿命なのでしょうか、「消えた一発屋芸人」というレッテルを貼られてしまいます。
それでもテツandトモは、やり方を変えませんでした。どん底に突き落とされたにもかかわらず、「なんでだろう~」と歌い続けたのです。なぜこのとき、心が折れずに自分たちの信念を貫くことができたのか。その理由を彼らはこう説明します。「立川談志の言葉が心の支えになっていた」。
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「M-1グランプリ」で立川談志がテツandトモに「もう出なくていいよ」
2016年1月5日放送のBS朝日「極上空間」。
ゲストはテツandトモ、はいだしょうこ。
スズキ(自動車メーカー)一社提供の旅番組です。ゲストはスズキの車を運転しながら観光スポットを巡ります。ただし、あくまでもメインはドライブシーンにあるので、車内で繰り広げられる会話がかなり放送されるのです。「極上空間」をトーク番組として紹介しても決して間違いではないでしょう。しかも関係性が深い2組が毎回ゲストで登場するため、初めて知るエピソードも少なくありません。
今回のゲストも、プライベートでカラオケに行ったりする仲良し3人組。
曇天のなか、赤ジャージ姿のテツさんが運転するESCUDO(エスクード)は、静岡県の牧場を目指して走行しています。右に山中湖が見えてきたときに、助手席に座るはいださんが2人に尋ねました。
はいだ「2人は、なんかこう、この方に助けられた、みたいな方はいるの?」
トモ「やっぱり談志師匠だよね、俺たちは」
テツ「そうだね」
トモ「事務所(ニチエンプロダクション)にお笑いの先輩もいなかったから、なんかよく分かんなかったんだけど」
はいだ「あ~、そうなんだ」
トモ「本当、コンビ組んですぐ談志師匠と出会って」
テツ「怒られたこともあったもんね」
トモ「怒鳴られたり、いろいろありましたけど……いろいろ教えていただきましたね」
後部座席の中央で、ギターを抱えながら前方を見つめる青ジャージ姿のトモさん。
はいだ「でも、出会いっていうか、なんだったの?」
トモ「多分、決定的だったのは、2002年の『M-1グランプリ』に出させてもらったんだけど、そんときに決勝に残らせていただいて、談志師匠が審査員でいらしてたの」
はいだ「うん」
トモ「で、僕らネタ終わったあと、審査員が皆、点数を出すんだけど、談志師匠が70点を出して、『お前らもう出なくていいよ、こんなとこ来なくていいよ、以上』みたいな感じで」
はいだ「うん」
トモ「なんかすごい雰囲気、っていうか空気に……自分たちのなかではね、まあ凍ったように感じて」
テツ「そう」
トモ「生放送終わったあと、すぐ談志師匠の楽屋にご挨拶に行って、『ありがとうございました』って言ったら、『俺の言いたいこと分かってんのか?』って言われて、よく分かんなかったんだけど、『ハイ』って言ったら、『じゃあいいよ、帰れ』って」
はいだ「うん」
トモ「そのあと、談志師匠の独演会とかに、すっごいゲストで呼んでもらったの」
はいだ「へぇ~」
その独演会でのこと。テツandトモは、談志さんを怒らせてしまいます。礼儀の面で。
独演会で立川談志がテツandトモに「人の舞台に立って挨拶もねえのか!」
トモ「自分たちのネタが終わって、そのまま(舞台)袖に残って、次の人のを見てたら、『家元がお呼びです』つって、お弟子さんに言われて」
はいだ「うん」
トモ「『なんだろうね?』つって、2人で行ったら、『人の舞台に立って、終わったあと挨拶もねえのか! テメエ、コノヤロー!』つって」
はいだ「うん」
トモ「散々怒鳴られて、『何考えてんだ、テメエら!』っていう感じだったのよ、うわぁ……ってなって、一番最後に、『って言うヤツがいるかもしれないから気をつけなさい』って」
はいだ「え~!」
トモ「ちょっとシャレにしてくれたの」
テツ「シャレな感じで、師匠なりの優しさというか」
トモ「なんか涙が出そうになったよ」
2005年ごろから人気が下降していき、「消えた一発屋芸人」とまで書かれてしまう状況に陥ったテツandトモ。そうやって周囲の人間が手のひらを返していくなか、談志さんは変わらずに接してくれたと言います。
立川談志「俺がいいと思ってんだから、それだけでいいんじゃねえのか」
トモ「『消えた一発屋芸人』って、まあ週刊誌とかに散々書かれて、『うーん、まあそうだよなぁ……』なんて思ってるときに、談志師匠が、また呼んで下さって」
はいだ「うん」
トモ「自分で言うのもなんですけど……あの、『俺がいいと思ってんだから、それだけでいいんじゃねえのか』って一言、言ってくれて」
はいだ「おお~」
トモ「すごい心の支えになった」
テツ「すっごい嬉しかったよ!」
はいだ「すご~い」
トモ「やっぱりそれで、『よしっ、また頑張ろう!』っていう気になったよね」
はいだ「へぇ~、すごいね~」
その談志さんの言葉にどれだけ救われたか、ハンドルを握るテツさんも語らずにはいられません。
テツ「だからね、それでまた俺たちも……そうやって世間からいろいろ言われることもあるけども、師匠が認めて下さったりとか、こうやって温かい言葉をかけて下さってるんだから、絶対辞めるわけにはいかない、頑張らなきゃいけない、『なんでだろう~』も続けなきゃいけない! っていうのはすごくある」
はいだ「うん」
テツ「やっぱりそれはもう……2人のなかではすごい力にもなってるし、これから多分続けていくなかでも、やっぱその師匠の言葉っていうのは、おっきいね、うん」
そして2008年。テツandトモは、コンビ結成10周年を記念して単独ライブを行います。もちろん談志さんを招待すべく声を掛けました。
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テツandトモ10周年記念ライブに「行くよ」と立川談志
「トモ(テツandトモ) 公式ブログ/立川談志師匠。 - GREE」から。
コンビ結成10周年ライブをやるんです!と、報告しに行った時、
師匠が、
「行くよ。」と言ってくださり
僕達が
「席を用意しておきます。」と言ったら
「いや、出るよ。」と。
ライブ当日。舞台に登場した談志さんは、テツandトモと一緒に「なんでだろう~」を踊ったそうです。