10%への消費増税は延期する。しかし、子育て支援や介護離職ゼロへの取り組みは着実に進める。一方で、財政健全化目標は堅持する――。

 安倍首相は強調する。この複雑な連立方程式の解をどう見いだすか。首相がもくろむのがアベノミクスの「果実」の活用、すなわち税収の増加分を社会保障の財源に充てる案だ。

 第2次安倍政権が発足してからの3年半で、国と地方の税収は21兆円増えた。首相が演説で盛んに語るデータである。

 直近の16年度当初予算と、政権発足前に民主党が決めた12年度当初予算を比べると、確かにそうだ。ただ、21兆円には14年度からの3%の消費増税の効果が含まれており、それを除くと13兆円、国に絞れば9兆円だ。

 首相が政権に就いたのは12年度の終盤で、丸々9兆円という計算にはならないが、税収を大きく増やしたのは間違いない。

 一方、財源不足を埋める新規国債の発行は、年に40兆円台という水準から16年度予算で34兆円余に減らした。税収増が財政改善の原動力となってきた構図だが、なお34兆円でもある。

 保育・介護という今を生きる世代向けの施策と、国債発行減らしという将来世代を見すえた対応と。税収の増加分をどう配分するか、今の世代向けをもっと増やそうというのが首相のメッセージだろう。ただ、それは将来世代へのつけ回しに頼り続ける危うさにもつながる。

 首相は「アベノミクスのエンジンを最大にふかす」として、秋に大型の補正予算を編成する方針を表明した。景気を刺激し、税収を増やせば両方に目配りできる、ということか。

 だが、税収はその時々の経済状況に応じて変動する。最も景気に左右されにくい消費税の増税を封印しただけに、不安定さは高まる。甘い見通しに基づいて予算を増やせば、国債発行が膨らむ恐れも大きくなる。

 財政再建には、まずは予算のむだや配分を不断に見直して「出」を抑制する。そして構造改革などで経済の地力を高め、税制改革も進めて「入り」を増やす。そうした取り組みを続けていくしか解はない。

 「財政再建の旗は降ろさない。国際的な信認を確保し、社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たす」。消費増税の延期を表明した記者会見で、首相はそう強調した。

 その言葉をしっかりとかみしめ、政策運営にあたってほしい。次世代に引き渡されるのは借金の山、ということにならないように。