津雲むつみ先生の漫画「聞かせてよ 愛の言葉を」は、急な交通事故で夫を失い、未亡人になった妻が心の隙間を埋めてくれる存在を求めるように、葬儀で出会った後藤に惹かれていく。
そして愛し合っていたはずの夫が不貞を働いていたと知って・・・複雑に絡みあう夫婦関係と新たな愛を描くロマンス漫画です。
「聞かせてよ 愛の言葉を」のネタバレ
佐野千尋と夫・康宏との間柄は、新婚当時のような熱はなかったものの、それなりに穏やかな夫婦生活を送っていました。さびしいのは、二人の間に子供が生まれなかったことで、代わりに飼い犬のアンディをかわいがっていました。
その朝も、いつもと変わらない朝でした。夫は新聞を読みながら朝食を口にし、出勤しにいきます。「今夜話したいことがあるんだ」と思わせぶりなことを言って会社に行った康宏は、その日の帰りに居眠り運転のトラックにはねられて、病院へ運ばれたあとに死亡したのです。
今日は早く帰るから、と言っていた康宏のために買い物をして好物を作ろうと思っていた千尋は、その悲劇を前に呆然とします。表面上は落ち着いてふるまってはいても、目の前で起こっている事実を受け止める心の余裕がなかったのです。話したいこと・・・一体なんだったのだろう。夫の最後の言葉を思い出す千尋でしたが、葬儀で考える暇もありませんでした。
仲のいい夫婦ではなかった?
康宏が亡くなったという知らせを聞いて、妹の万里が飛んできて大泣きします。振り返ってみると、父親が亡くなったのはまだ千尋が12歳のときで、その後スーパーで一生懸命に働いて育ててくれた母親も22歳のときに亡くなりました。
その時に慰めてくれたのが、夫となる康宏で、大学生のときから妹の万里をかわいがってくれて、妹もなついていました。康宏の葬儀では、万里は誰よりもなき通しで、葬儀でも涙を見せもしない千尋を見て、「おねえちゃんは冷たい!泣きもしないで。いくらうまくいってなかったからって」という爆弾発言をします。
千尋と康宏はいい夫婦関係を築いていると親戚も考えていましたから、その発言で葬儀場が騒然となります。
後藤との運命の出会い
葬儀には、怪我をして包帯だらけになった男性が病院から無理をしてきていました。康宏を死なせたのはトラック運転手でしたが、後藤は康宏を乗せた車を運転していました。トラックをうまく避けられずに事故に巻き込まれた後藤克己は、事故の原因の責任は自分にもある、と罪悪感をもってきていたのです。
申し訳ありません、と遺影に頭を下げる後藤を千尋は見ていました。そして後藤もまた、美しく悲しみに暮れる未亡人である千尋の姿に心を動かされます。これは二人の運命の出会いだったのです。
衝撃!夫は不貞をしていた
生前の康宏が最後に残した言葉『話したいこと』は、彼の浮気のことでした。浮気相手はしかも妹の万里。万里は千尋が康宏と結婚する前からずっと、康宏のことが好きだったのです。
初恋の男性だった、という万里にはすでに夫がいて娘もおり、お腹に子供がいます。では、お腹の子供もひょっとして・・・
千尋は夫と妹がそんな関係になってしまっていたことを知り、万里を「絶対に許せない!」と二度と会いたくないほど憎みます。そして傷ついた心に寄り添うように、後藤が千尋に思いを寄せるようになり、二人は次第に惹かれていくのです。
かなりドロドロの結末
夫が亡くなったときの千尋はとても気丈な女性に見えましたが、実際はとても流されやすい女性なのかもしれません。状況に合わせて夫がいなくなった心の隙間を埋めてくれる恋人を取り替え、後藤が寄ってくれば支えてもらうし、離れていけば追いかけもしない。
後藤は後藤でつきあっていた美佳と別れて千尋に告白しますが、結局思いを断ち切るために美佳と結婚し、結婚したあともやはり千尋と会うようになったりとすごくドロドロの関係にハマっていきます。そして最後に二人が選んだ道は・・・ぜひあなた自身で最後まで読んでみてください。