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世界に誓う。全てを貴方に捧げます
ザァー.........ザァー......
波が引いては寄る心地よい音が耳をくすぐり、メェー、メェーと鳥が鳴く。
足に波がかかり、右上半身には何やら心地よい重さと柔らかさが。
息を吸えば柑橘系の甘い様な爽やかないつまでも飽きずに嗅いでいられそうな良い匂いがする。
「んーっ.........くわぁ〜」
自由の利く左腕を使い伸びを一つ、欠伸を一つ。
しばらくぽけ〜っとした後頭がスッキリし、回転を始める。
とりあえず右半身の重みの正体を確かめようと頭をむけ息を呑む。
整った可愛らしくも綺麗な顔。
髪の毛は明るく色素の薄い灰色がかった茶色とでも言えばいいのか?
長い睫毛にスッと揃った鼻立ちに右目の泣き黒子がエロい。
くすみ一つない白玉のような陶器の様な滑らかでいてもっちりしていそうな肌。
下に視線を向ければ少しばかり薄い胸部装甲、しかしハッキリとした存在感と柔らかさを兼ね備えている。
キュッと締まった腰に小ぶりなお尻、細いがしっかりと肉のついた太ももにすらっとした脚。
全てのパーツが完璧に揃っており、綺麗な曲線を描く。
体を隠す服がないため全てみえてしまっている。
......間違いない。この娘は間違いなく俺の初恋の人にして最愛の嫁、瑞鳳だ......
理解した瞬間俺は大きく目を見開き、いつの間にか
ぽろぽろと涙がこぼれていた。
「え...?な、なん...で?う、嘘だろ...?これって夢...」
夢なのか?と言おうとし、口を閉じる。
夢なわけない、リアルすぎる。浅く上下する胸に息遣い、しっかりと感じる重みに髪の毛の一本一本まで確かに存在している。
夢なのか?と言いかけ口を閉じたのは確かにリアルだということもあるが、やっぱりまだ信じられなかったからだ。夢なのか?といって泡の様に消えてしまいそうで恐かったのだ。
男が今だに信じられずにいると彼女の睫毛がふるふると震え、瞼が開く。
瞳の色は髪の毛と同じ明るく薄い灰がかった茶。
彼女の瞳はまるで宝石をそのままはめ込まれたかの様で、どこまでも吸い込まれてしまいそうなほど美しかった。
「てー......とく?」
まだ寝ぼけているのか目はトロンとしており、舌ったらずに言葉を紡ぐ。
聞こえた声はpcの画面越しに聞くよりもずっと綺麗で澄んで聞こえた。
奥歯を食いしばり溢れる涙を抑えようとするが止まらない。
「ぇ......ぁ、ぁあ...!瑞鳳...!」
掠れた声で名前を呼ぶ。
届いたか心配だったが確かに彼女には届いたらしい。涙でボヤけ、滲む視界の中で確かに彼女は笑い、
「どうしたんですか?てーとく?」
小首を傾げそう言う彼女を俺は抱きすくめ、
「ごめん...本当に、ごめん...っ!もう二度沈めないって言ったのに......俺は口先だけで何も出来ない小さい男だっ......!」
「......てーとく?てーとくは口先だけの小さい男なんかじゃないですよ?」
そう言う彼女は俺の首もとに抱きつき、
「てーとくは口先だけの男じゃない。だってちゃんと約束守ってけれたじゃないですか!最高の女にしてやるって言って大量の資材を使って開発した高い装備沢山くれたしその、浮気なんてしない、嫁は瑞鳳だけだ!って言って指輪くれたし浮気もしなかったもん!」
確かに大量の資材を消費して出来たレアな装備は瑞鳳に装備させてたな。結婚(仮)も瑞鳳としかしていない
「てーとくは小さい男なんかじゃない。建造とか開発に大量に資材消費してハズレばかりでもめげなかったし、出撃何十回もして目当てのレアドロップが出なくても頑張ってた!
.........それに、本当に小さい男なんかには、ううん。
大きな男にだって好きな女のために溺死なんてできっこないよ。」
俺は平凡な男だけど運だけはまぁご覧のとうり低いらしく、建造開発のために消費した資材は真っ白に燃え尽きるレベルだった。
はぁ...
......小さい男にも大きい男にもできっこない、ね
「...なぁ、瑞鳳。俺ってカッコよかった?」
こんな事言ったらまず女には引かれるな...
「うん!てーとくはいつでもカッコよかったけどあの時のてーとくはもっとカッコよかったよ。だからもっと自信もって?」
そう言ってにっこりと笑う彼女はとても眩しくどんな宝石よりも輝いて見えた
「......うん。ありがとう、おかげで自信がついたよ」
「ふふ!、もっと褒めてもいいんだよ?」
「あはは、瑞鳳は本当に可愛いなぁ。本当にいい女だよ。」
「えへへ、やっぱりちょっと恥ずかしいかも......
や、やっぱり褒めるんじゃなくてご褒美が欲しいなぁ...」
彼女と視線が合うが、位置的に自然と彼女は上目遣いとなるから半端なく可愛く見える
「う、うん。俺に出来ることならなんでもいって?」
「本当?やった!ありがと!えと、じゃあ、私に新しい名前をてーとくにつけて欲しいなぁ?」
「名前?瑞鳳って名前があるのに?」
「それは前の世界での名前でしょ?私達はこれから新しい世界で暮らしていくんだから新しい名前にしなきゃ!だからどうせつけるならてーとくにつけて欲しいなぁ、って」
そういうことか......
あと今更だけどやっぱりここは異世界なんだな。そうだろうとは思ったけど。
「そっか。じゃあ...............イベリス。
花言葉は心惹きつける、甘い誘惑、それと...」
初恋......、と小声でつぶやく。
なんだか少し恥ずかしかったから、ボカして言う。
「どう......かな?」
まぁまぁましな感じだとは思うけど...
「イベリス......イベリス......うん!ありがとう、すごくいい名前...」
どうやら気に入ってもらえたようで良かった...
「じゃあ今度は私がてーとくの新しい名前、つけてあげる!」
「じゃあいい名前を頼むよ」
「んー.........これなんかどうかな?シオン、とか?」
シオン......花言葉は「追憶」「忍耐」「君を忘れない」だったかな?
「うん、凄くいい。素敵な名前ありがとね」
「えへへ、お返しだから気にしないで!」
「ううん。こんな素敵な名前をくれたんだからちゃんと対価を払わなきゃ」
俺はこの世界で生きて行く為の誓いと目標を立てる事にした。
どんな事をしてでも必ずイベリスを守る。
何かを守る為には力がいる。
.......力が要るんだ。もう口先だけの男にはなりたくない。
『君が死ねと言うのなら僕は死のう。世界中が君の敵になるのなら僕も世界中を敵に回そう。僕...シオンはこの命、この魂を、全てを貴方に捧げます。』
いい終わり彼女を見るとポカンとしていた。......そりゃそうだよね。いきなりこんな痛いこと聞かされたらね......
「ちょっと痛かったかな?」
しばらくして彼女は再起動し、ガバッと顔を上げ、
「〜っ⁉︎な、なんでそんな大事な盟約を!普通は私がてーとくを守る方なのに逆でしょ!」
彼女はなぜかかなり慌てて、あわあわしている。
「なにそんなに慌ててるんだ?」
「あれは!盟約魔法と言って世界に誓いを立てるときに使う魔法なんですよ!やり直しきかないんです!本当は私が誓いを立てて、てーとくっ、じゃない!シオンを守るはずだったのに‼︎」
......世界に誓い立てちゃったみたいです...
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