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レイテ沖海底ニテ嫁ト沈ム
少し齧っただけの知識なので間違ってるところや矛盾したところがあると思いますがよろしくお願いします。文章も読み難いと思いますが、目をつむってもらえると幸いです
「...長......か...長......」
微睡みの中で誰かの呼ぶ声が聞こえる。
「...艦......阪本艦長!」
阪本......俺の名前?
ボヤけた思考で考えるが、直ぐさまドデカイ目覚ましで叩き起こされる事となる。
ひゅー、と風を切る音が聞こえたと思ったら瞬間、
腹の底から響く様な鼓膜をつん裂く爆音がモーニングコールとなった。
ドドドドガァアアーーン‼︎
市販の爆竹を何千何万倍にもしたような爆音が連続して起こったと思ったら、数瞬後に比べものにならない爆音が響いた。
「っ!うぇ⁈な、何事⁉︎」
机に突っ伏し寝ている時に椅子を引かれて息が詰まるようにして起きる感じ。不意打ち同然に聞こえた爆音によって息が詰まるようにして飛び起きる。
「阪本艦長!こんな非常事態の時までボーッとしないで下さい!...オホン、続けます...って、艦長。まさかボーッとしていて聞いてなかった何て言わないで下さ...「コッ.コク」はぁ、始めから説明しましょう。
我々はエンガノ岬を北上中、敵機に発見されるも囮任務を実行。8時15分、第一次攻撃隊180機飛来。
これにより千歳、秋月が被爆沈没、我々の乗る瑞鳳にも至近弾多数、被害軽微。多摩、瑞鶴が披雷し速度低下、また瑞鶴の通信機が損傷、囮作戦成功の電文が打てず。更に第二次攻撃隊約36機が飛来!
兎に角滅茶苦茶ヤバイ状況なんです‼︎
これで少しは危機感覚えて頂けましたか?」
名も知らぬ男はニッコリと額に血管を浮かべながらそう締めくくる。
(えーと、囮作戦?エンガノ岬?......もしかして、
レイテ沖海戦?...マジで?)
......兎に角マジでヤバイって事だけはバカでも分かったよ、うん。
(もう頭の中が疑問だらけでオーバーヒート寸前なんだけど!何なの?夢なの?こいつ誰?てか俺艦長?俺偉いのに口の利き方おかしくね?じゃなくて!これが本当にレイテ沖海戦だとしたら...)
「瑞鳳が、沈む?俺も、死ぬ?......ヤバイじゃん!」
「はぁ、やっと理解なさりましたか...」
こうしてお喋りをして居る間にも爆音が鳴り響き船体を強く軋ませる。
しかし又も思考を遮る程の轟音が鳴り響き、
俺の混乱が最高長に達しようというとき、ドアが開け放たれ、
「伝令!敵爆撃機により千代田被爆!大破炎上、航行不能と思われます‼︎」
軽空母千代田の大破報告が届く。
「クソッ!......これまでか...」
知らない男が諦め発言をするが耳に入ってこない
(嘘だろ?千代千歳ー‼︎お気に入りだったのに......
このままいったら瑞鳳まで轟沈...)
史実を知っているからわかるのだ。
このまま行けば瑞鳳は沈没、この海戦を最後に航空戦力を失い日本は負けるのだ
(...日本が負ける事はもう此処まで来てる時点で決まってる。ならせめて瑞鳳だけは沈めないよう頑張るか。もう二度と沈むところなんて見たくない。)
そう決意するがそんなものが意味あるわけなくアメリカは攻撃の手を緩めない。
「伝令!伝令‼︎敵第三次攻撃隊約200機襲来、迎撃中!しかし戦力が少なすぎます!」
「......艦長は遺書、書きましたか?私は書きましたよ。」
「......紙と鉛筆、ある?」
そんなバカなやり取りをしていると
瑞鳳が大きく揺れ、至近弾とは比べものにならない程の爆音立て続けに三回体の芯を貫く。
とてつもない衝撃が体を吹っ飛ばし、どこかで頭を打ったのか血が流れていた。
「ぐっ⁉︎....いっつぁあ............被害......状況、は?」
掠れた声に応える人は居ない。
ただ火薬と鉄の匂いがするばかりだ。
ボヤける視界で部屋を見渡し、
「おい...大丈夫か?お......おい嘘だろ!しっかりしろよ!おい!」
伝令は頭を、知らない男は胸からおびただしい量の血を流していた。
飛んできた破片が刺さったのだろう。
「クソッ!止まれ!止まれよ‼︎」
震える手で傷口を押さえるが血は止まらない。そんな事で止まるわけがない。
男の手の中で流れていく血は熱いのに対し、男の顔は青白く冷たくなっていく。
男の血と共に命まで流れていく事が分かった。
会って数時間の筈なのにこの男とは何年もつるみあった様な不思議な感じがしていたのだ。
この男は死なせたくない。しかし胸に刺さったの破片はおそらく心臓付近に刺さっている。どうしようもない。
分かってはいるが何もせずにはいられないのだ。
ゴォォオオーーン.........ギギギギギギ‼︎
艦が耐えきれずに、どんどん横に傾き沈み始める。
男は急な傾斜に体を支えきれず部屋の端まで転がる。
「うっ⁈.........
......また、沈ませちゃうのか......沈ませないとかいってこれかよ......」
ゲームでの瑞鳳の悲しそうなボイスが頭の中で再生される。
たかがゲーム、されどゲーム。愛情を注いで育てた子供やペットが死ぬと悲しい様に、愛情をかけて育てたキャラが死ぬのは悲しいのだ。
男の色々な感情がごちゃまぜになり涙が溢れる。
「ごめん......本当にごめんなぁ。絶対に沈ませないって言ったのに......」
時間がなかったとか状況がどうだのと言い訳をするつもりはない。沈ませてしまう事実は変わらないのだから。
「......せめて一緒に。寂しくない様に、一緒に沈もう......」
艦には大量に海水が入り、ほとんど横を向いている様な状態だ。ここまで浸水するのに時間はかからないだろう。
暫く瑞鳳との思い出を思い返しながら感傷に浸っていると部屋まで浸ってきた。海水が。
「今いくよ、瑞鳳......」
外は騒がしいはずなのにこの部屋だけは静かで落ち着いたような感じかする...
仰向けに倒れた体が海水に浸り、
顔まで浸かるといったところで男の意識は途絶えた.........
......20分後、軽空母瑞鳳は沈没した。
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