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不幸な男
瑞鳳、大鳳、第六駆逐隊は俺の嫁。異論は認めん。
ついでにISも。
カチ...カチカチ...
暗い部屋にクリック音が響く
「あと少し...」
普通の男がゲームをしている。
某艦隊ゲームを。
平均的な顔、平均的な背、平均的な成績。
凡人だ、何処にでもいる。
ゲームの状況は自分陣営の一隻が大破、敵側は戦艦フラグシップを除いて全て撃沈している。
男は悩む。あと一隻沈ませればこの海域はクリア出来るし、レアドロップもするかも知れない。
しかし、自分陣営の内一隻が大破している。
このまま行けば轟沈するかも知れない可能性がある。
しかし男は長時間ゲームを続けていた為、酷い睡魔に襲われていた。
(さっさとゲーム終わらせてそろそろ寝なきゃ......
でも、どうしよ。嫁が轟沈するかもしれないし......
いいや、めんどくさい。相手は一隻、そうそう当たらんだろ...)
男は早く眠りたくて、夜戦に突入させる。
どうせ当たらないと高をくくって。
味方二隻が攻撃を終えた時、それは来た。
シャッ、シシャッ!
敵フラグシップのカットインが入り、その狙いのさきは......嫁の瑞鳳だった。改造をし、レベルもmaxにし、改修も最大限までした。結婚(仮)も終えていた。
ドガン、ドガン!
と、砲撃音が鳴り響き、瑞鳳のhpがゼロになる。
手塩にかけて育てた嫁をたった一戦で、少しの油断、眠たいからと、轟沈させてしまった。
男の眠気は吹っ飛んだが、意識は吹っ飛んだまま帰って来ない。
呆然としていた。
そうこうしている内に轟沈した時のボイスが流れる。
『総員...退艦...っ!...また、沈むのね......翔鶴...また、会えるかなぁ......?』
男は呆然とし、腰を浮き上がらせていたが、ストンと腰を落とし、力を失ったようにガクッとうなだれ、キーボードに顔面から突っ込む。
目から溢れる涙がキーボードに入り込んでいく。
「嘘...だろ?おい......マジかよ。あぁ〜ー、くそっ!
......なんでこんな事になった?」
男はいつもならこんなに涙脆くはない。感動ものの映画や小説を見てもなかないし、大好きだったおじいちゃんの葬式でも泣かなかった。
ただ、男にはここ最近不幸な事が連続して起きていた。新しい仕事場では短期で直ぐに怒鳴り散らす上司、家に帰ろうとすると、靴裏にガムがへばりついており、肩にカラスの糞がポトリ。
見事な急降下爆撃だよコンチクショウと最悪な気分で家に帰るが、家に着くなりピロリンと着信音が鳴り、
嫌な予感をさせつつ、見てみるとそこには上司とやっている彼女の姿。
寝取られたのだ。糞エロリーマンの上司に。
そして何もかもが嫌になり現実逃避をして今に戻る。
男の口からは謝罪の声しか聞こえない。
「ごめん...ごめん、瑞鳳......こんな、こんなはずじゃあ無かったのに......くそっ...... あ、あれ?おかしいな...」
覚めたはずの睡魔が再び猛烈な勢いをもって襲ってきたのだ。
男の精神状態は悪く、とても抗えるはずがなかった。
(......ごめん...愛してるよ.........)
こうして男の意識は暗闇に吸い込まれていったが、直ぐさま叩き起こされる事となった。
砲撃音で。
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