フィットネス愛好家の中でもジョギングのファンは群を抜いて多いのではないかと思う。ジムの中でもレジスタンストレーニングエリアより、カーディオエリアの方が人は多いし、トレッドミル(ランニングマシーン)はジム内でも人気No.1のマシーンだ。
なぜこんなにもジョギングは人気なのだろうか?それは手軽に行えるからだろう。バーベルトレーニングのように大掛かりな道具も必要ないし、走る意志だけあれば玄関を開けていつだって始める事が出来る。
しかし手軽な反面、間違った知識が広まっているようにも見える。一見、ウエイトトレーニングや激しいスポーツに比べて、手軽で身体への負荷が少ないように思えるジョギングだが、間違った知識で行えば不健康な運動になってしまう。
今回はそんなジョギングをするなら知っておきたい基礎的な知識からジョギングを快適にするアイテム・アプリなどをまとめる。
ジョギングをするなら知っておきたい知識
ジョギングを始める前に知っておくと何かと得をする知識を紹介。
”脂肪燃焼”のウソとホント
ジョギングに限らず、有酸素運動はゆっくりとしたペースで30分以上続けないと体脂肪が燃焼しない!と聞いた事は無いだろうか?結論から言えば、これはホントであり、ウソでもある。
ジョギングを行うときのエネルギーにはまず糖質が使われる。人間の持つ糖質と言うエネルギーの貯蔵庫は非常に小さく、食事をすることですぐに満タンになる。
その貯蔵量は肝臓に100g程度、筋肉内に100g~400g程度、血中に至っては15g程度で多くて2000kcal程度しか無い事になる。(糖質は1gで4kcal)ちなみに筋肉内のグリコーゲンは血糖の維持には使われない。
2000kcalと言うと1日で消費されてしまい、絶食すれば空っぽになるということになる。人間の脳は糖質をエネルギーにしている事は広く知られているが、これでは脳への糖質の供給が止まってしまう。(実際は安静時の代謝は糖質1:脂質1な)
そこで人の体は筋肉などからアミノ酸を取り出し、糖を作る(糖新生)ことや、脂質からケトン体を生成し糖の代替として脳のエネルギーとして利用する(脳の8割の機能はケトン体で代替可能で2割は糖新生に依存)
糖質制限ダイエットは簡単に言うと、糖質を制限することで枯渇させ、その代替として脂肪→ケトン体がエネルギーとして使われる状態を強制的に作ることで、効率良く体脂肪を燃焼しようということだ。
ちなみに糖質→体脂肪の変換率は非常に低く、糖質をたくさん摂るとそれ自体が体脂肪になるというより、摂取した脂質が直接体脂肪になりやすくなるのが本当のところ。
少し話がそれてしまったが、通常の食事を摂っていて糖質の貯蔵があれば運動を行う時に糖質を優先的に利用する事を理解して欲しい。
つまり運動を開始してしばらくは糖質が優先的にエネルギーとして利用されるので、運動してある程度、時間が経過しないと脂質がエネルギーとして効率的に使われない≒脂肪が燃焼しない(しづらい)は正解と言える。
反対に脂質は巨大なエネルギー貯蔵庫だ。しかも容量が可変する(太ったり痩せたりする)しかし糖質と違ってすぐに使うことの出来ないエネルギー源でもある。人間の体脂肪は”トリアシルグリセロール”という3分子の脂肪酸と1分子のグリセリンが結合した単純脂質が主だが、この状態ではエネルギーとして利用できない。
しかし運動を続けて血糖が消費されると、成長ホルモンやアドレナリンなどが分泌され、これらがグリセリンと脂肪酸の結合を切ってくれる。グリセリンは糖新生へ回され、脂肪酸は遊離脂肪酸となり血中へ流れエネルギーとして利用される。
また運動の強度が高いと身体は糖質を優先的にエネルギーとして使う。(全力の運動になるとまた別のエネルギーを利用するがここでは割愛)
少し長くなったのでここで1度まとめる
- 糖質は小さなエネルギー貯蔵庫で、すぐにエネルギーとして利用される
- 脂質は大きなエネルギー貯蔵庫で、エネルギーとして利用されるまで時間がかかる
- 運動の強度が高いと糖質が優先的にエネルギーとして利用される
覚えておくのはこれだけで十分。以上の事からジョギングは一般に言われるように、話ができる位の低い強度で一定時間以上行うことで脂肪の燃焼が促進されると言えそうだ。
しかし、多くの人が”脂肪燃焼”というフレーズを針小棒大に捉え、まるで30分(20分でも)以上、走らないとダイエット効果が無いように説明している人もいる。それは間違いだ。
別に運動中に脂肪が燃焼されているかは問題ではない。大事なのは”エネルギーを消費した”という事実であって、それが糖質からなのか、脂質からなのは大した問題ではない。
上で説明した通り、糖質と言うエネルギー貯蔵庫に在庫があれば体はそれを優先的に使う。例えば10分程度でジョギングを切り上げたら、主に消費されたエネルギー源は糖質という事になる。しかし、糖質の在庫量は減っているのでその後の身体活動のエネルギー源として脂質が優先的に利用され、食事によって糖質が補充されるとまた糖質が優先的に利用される。
つまりジョギング中に脂質がエネルギーとして利用(燃焼)されなくても、エネルギー収支がマイナスなら体脂肪は減少するという事だ。脂肪燃焼と言うワードはフィットネス界で最も勘違いを生んでいる原因となっている言葉の1つではないだろうか?
30分(20分)以上にこだわらない
上で説明した通り、無理をして長時間ジョギングを続ける必要は無い。自分のペースで休憩を入れながら行うのが一番いい。そもそも運動で最も重要なのは”継続”なので無理をして続かないより、1日5分でも継続することが重要。
ジョギングの消費カロリー
これは体重×距離(㎞)で大体、計算することが出来る。つまり走る速度が早ければ短い時間で消費カロリーは多くなる。運動強度(速度)も自分が最も継続できるスピードで行えば良い。
ジョギングだけの運動習慣は危険
この記事で最も強く伝えたいことはこれだ。ジョギングのみの運動習慣は故障しやすい身体になる。その理由として
- 狭い可動域で運動を繰り返すことによる柔軟性の低下
- 運動強度の低さによる筋力の低下
- 何千、何万回と地面からの衝撃を受けることによる膝、腰などの怪我
- 発汗、足裏のインパクトによるヘモグロビンの破壊で起こる貧血
などがあげられる。4番については健康であれば問題は無いと思うが、女性や貧血気味の人は注意が必要となる。場合によっては食事やサプリメントから鉄分を意識的に摂る。
3番については実際に痛みを感じている人も多いのではないだろうか?ジョギングは体に負担の少ない運動だと思われがちだが、故障リスクの高い運動だ。
Running injuries. A review of the epidemiological literature. - PubMed - NCBI
更に1番、2番の要因によって故障しやすい身体になっていく。その為にもジョギングだけの運動習慣に大きな可動域を使った筋トレを取り入れて筋力と柔軟性を鍛えて欲しい。筋トレとジョギングを組み合わせることでジョギングの問題点の多くを予防することが出来る。
ジョギングを快適にするオススメアイテム&アプリ
ジョギングを続ける為に用意しておくと何かと便利なアイテムやスマホアプリを紹介。
ランニングシューズ
ジョギングするときの格好は基本的に動きやすければ何でも良いと思うが、靴に関しては怪我を予防する為にも気を使いたい。ぼく個人としてはアシックスとアディダスをオススメしたい。アシックスはもちろんだが、アディダスも日本人向けのモデルが多く、値段も手頃だ。ミズノはソールが固すぎて個人的には合わなかった。
ランニングシューズ選びで注意したいのは、レース用のソールが薄く軽量化されたシューズは避けること。耐久性が低いし、衝撃吸収性能も劣る。
イヤホン
ジョギング中にテンションを上げる為に音楽を聞く人も多い。ジョギング中のイヤホンで優先したいのは音質より、外の音が聞こえること(自己防止)。フィット感を優先して選ぶ。
ポーチ
何かとあると便利。水分補給や怪我などがあった場合にタクシーで帰れる程度のお金や、携帯電話を入れておける。
オススメのアプリ
GPSを利用して走行距離やペースなどを確認、管理出来る便利なアプリをいくつか紹介。どれも似たようなものなので好みで選んで良いと思う。
SNS的な機能もあり、競い合うことでモチベーションを高めるような使い方もアリかもしれない。
Runtastic
Endomondo
SNS機能が優れていて挑戦状などの機能が面白い。
Runkeeper
ぼくはこれを利用している。
Nike+Running
adidas Train & Run
継続が大事
最後にもう一度。ジョギングに限らずトレーニングやダイエットは継続出来なければ何の意味も無いという事を忘れずに。運動の種類や効率などを気にするより、自分が継続出来る方法で行うのがベストだ。
そして、楽をして身体を変えると言った聞こえのいい言葉に惑わされずに、堅実な方法でダイエットに励んで欲しい。地道ではあるが継続が結果を出す唯一の方法だ。
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