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2015.05.25 議員活動

【オピニオン】基礎自治体議員の責任を考える~子宮頸がんワクチン接種被害を通して~

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自治体の事業で起こる被害は、議員として見逃せない

 私がこれまで取り組んできた子宮頸がんワクチン被害について説明したい。子宮頸がんワクチンの定期接種化が国会で議論されたとき、当時の厚生労働省が発表していた副反応状況報告には、接種後の重篤症例が数えきれないほど掲載され、その後の回復についても多くが「不明・未回復」となっていた。にもかかわらず、2013年3月28日、国会で定期接種が決まった。それどころか、男子にも接種を説く国会議員の発言すらあったのである。
 もともとこの子宮頸がんワクチンの接種事業は、2010年度に厚労省が「ワクチン接種緊急促進事業」として推奨し、自治体が任意で実施するものだった。だが、助成制度によって無料となったため、中高生を中心に瞬く間に接種が進んだ。合計3回で4~5万円かかる接種が無料になったこと、「がんを予防できる唯一のワクチン」という推奨派の医師やマスコミの情報の渦もあり、当時、ほとんどの自治体が疑問なく接種を実施した。
 だが、本来、任意接種は自治事務であり、その自治体の事業によって恐るべき数の被害が報告されているのは、市議会議員として見逃せない事実だった
 ところで、2009年9月議会で、私は新型インフルエンザのパンデミックに関して「ワクチン接種を推進すべきではないか」と執行部を質(ただ)した。だが、そのわずか4か月後の2010年1月、「新型インフル輸入ワクチン1126億円無駄に?」という新聞記事を見つけた。
 驚いた。半端ではない額であり、主婦感覚では信じ難い。調べると、この新型インフルエンザワクチンが危険で欧州ではほとんど使われていないということや、厚労省は危険性を察知して現地に職員まで派遣していたにもかかわらず、そのワクチンを買い込んだこと、しかも、その頃はすでに新型インフルエンザは終息しつつあり、接種希望者が少ないだろうと厚労省は予測していたのではないかということも分かった。
 同時期にバトンタッチされるごとく、新型インフルエンザワクチンを発売していた製薬会社から導入されたのが子宮頸がんワクチンだった。この頃の国の議事録を見ると、この子宮頸がんワクチンは調べるほどに異例の措置がとられていたことが分かる。

(2009年8月31日厚労省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会議事録)
 「本剤は、2009年8月時点で、欧州など96か国で承認を取得しております。現時点において、本邦で既承認の類薬はなく、子宮頸癌予防対策の一つとしてHPV〔編集部注:発がん性ヒトパピローマウイルス〕ワクチンの臨床使用を求める医療上の要望及び社会的関心が高まっております。このような背景を踏まえ、厚生労働省の指導により、国内臨床試験の終了を待たずに平成19年9月26日に本剤の製造販売承認申請がなされております。」(医薬品医療機器総合機構答弁、下線・筆者)

 つまり、接種する子どもたちの安全・安心そっちのけで、国内臨床試験の終了を待たず、政治家や医療関係者等の推奨派が推進していたのだ。
 それだけではない。費用対効果に言及した記述もある。

(2010年12月16日厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会 第3回ワクチン評価に関する小委員会資料)
 「検診に関する留意点として、HPVワクチンを接種した集団において子宮頸がんが減少するという効果が期待されるものの、実際に達成されたという証拠は未だないことから、現時点では、罹患率・死亡率の減少効果が確認されている細胞診による子宮頸がん検診を適正な体制で行うべきである。」「医療経済的な評価については、13歳女子に接種したワクチンが生涯有効であると仮定したとき、わが国において支払者の視点(保険医療費のみを考慮)で費用効果分析を行った場合、〔中略〕費用対効果は高いと判断された。」(資料6-3、下線・筆者)

 こちらも、「効果がある」のではなく「効果が期待される」のであり、「達成された証拠は未だない」といっているのだ。しかも、当時日野市で配布された資料によれば、効果の有効期間は6.4年とされていた。
 そもそも子宮頸がんはワクチンだけで予防できるわけではない。HPV感染は、もし感染したとしても9割が自然排出され、たとえ軽度異形成になっても9割は自然治癒するといわれている。HPV感染予防のワクチンの型は最初に発売されたのがグラクソ・スミスクライン(GSK)社の16・18型の2価、次がメルク・アンド・カンパニー(MSD)社の6・11・16・18型の4価、すでに米国では9価の感染予防ワクチンも承認されている。しかも日本では全てのHPVを予防するワクチンが治験の段階まで来ている。短期間でこれだけの商品が開発されている現状を鑑みれば、いかにサーバリックスやガーダシルの導入が拙速であったかが理解できる。

厚労省作成のリーフレット(2013年6月版)にも「子宮頸がん予防ワクチンは新しいワクチンのため、子宮頸がんそのものを予防する効果はまだ証明されていません。」との記述がある。厚労省作成のリーフレット(2013年6月版)にも「子宮頸がん予防ワクチンは新しいワクチンのため、子宮頸がんそのものを予防する効果はまだ証明されていません。」との記述がある。

図1 子宮頸がんの悪性新生物による年代別死亡者数図1 子宮頸がんの悪性新生物による年代別死亡者数

図2 子宮の悪性新生物による年度別死亡率図2 子宮の悪性新生物による年度別死亡率

池田 利恵

この記事の著者

池田 利恵

日野市議会議員(現在4期目)、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会事務局長。1958年7月1日、山梨県都留市生まれ。副議長・監査委員など歴任。子ども3人を育て、夫の両親とともに3世代で日野市に住む。

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